7-7 sideレイズ(マユ)
アンリエッタをかばった私の鼻先を、何かが通った。
ルイスの足だ。
クラリアのナイフが私たちに届く前に、ルイスの足がクラリアのナイフをクラリアの手から吹っ飛ばしたんだ。
ハリエットが
「殿下、お見事ですわ!」
と手を合わせてほうっとため息をついた。
ルイスは私たちを振り返って
「みんな、けがはないな?」
と言った。
私たちがうなずくと、ルイスはクラリアに近寄っていった。
ナイフは遠くに飛んで行ったから、もう大丈夫だ。
クラリアは地面に膝をついて放心状態だった。
ルイスはクラリアを見下ろして、冷たい声で言った。
「お前は今、自分が何をしたのか分かっているのか?」
クラリアは何も言えず、呆然としていた。
「お前は今…俺に、この国の王太子に刃を向けたのだぞ」
ルイスの言葉にクラリアははっとした顔をした。
「ちがっ…ちが…」
かぶりを振って必死で否定するクラリアに、
「お前が狙ったのがアンリエッタだとしても、それをかばった俺にも刃を向けたことになる」
ルイスはさらに厳しい声でそう言った。
「あっ…」
何かに気づいたように、クラリアは小さく声を上げた。
当然だ。
アンリエッタを狙ったのだとしても、それをかばってアンリエッタの前に出たルイスは見えていたはず。
それでも委細構わず突進したんだから、ルイスに刃を向けたも同然だろう。
「この件については俺の一存ではいかなる罰を与えるのか決めかねる。とりあえず、お前は寮に戻って自室から出るな。謹慎だ」
クラリアは真っ青になってがくがくと震えはじめた。
「お前への処罰は父と相談して決定し、しかる後に沙汰する」
ルイスは冷たい声と顔でそう言い放った。
「殿下っ…お待ちくださいませ!」
アンリエッタがルイスに駆け寄ってそう言った。
「クラリア様は、殿下を狙ったわけではございません!殿下は私をかばって下さいましたが、クラリア様の目には私しか見えていなかったと存じます!」
アンリエッタは珍しく、ちょっと必死な感じでルイスに訴えかけた。
「…この国では、貴族が平民を傷つけてもたいした罪にはならない…と聞いております…」
アンリエッタはちょっと辛そうな顔でそう続けた。
アンリエッタの言葉にルイスは
「ん?それは情報が遅いな」
と言った。
「我が国では貴族と平民の差を小さくするため、貴族が平民を傷つけた場合も、貴族が貴族を傷つけた場合も罰は同じにする…と近年法律が変わったのだ。ただし王族は別だ。王族を傷つけた者は皆死罪というのは変わらん」
ルイスの言葉に、クラリアはへなへなとへたりこんだ。
「まあ、俺は毛筋ひとつ傷ついてないがな」
ルイスがしれっと言うので、私たちの緊張は一気に解けた。
「クラリア嬢」
とルイスが声をかけると、クラリアは
「は…はい…」
と平伏して答えた。
「先ほどは厳しい物言いをしたが、それは君が犯した罪がどれほど重いのかを分からせるためだ」
クラリアは黙っていたが、体の震えはおさまったようだ。
「俺たちには傷ひとつついていないし、何よりアンリエッタが君をかばったのだから、おおごとにするわけにもいかないだろう」
ルイスがそう言うと、アンリエッタもほっとした顔をした。
するとハリエットがクラリアの近くにとととっと歩いて行って、
「よかったですわね、殿下がお許し下さって」
にっこり笑ってクラリアにそう言ったのだが、
「万が一にも殿下に傷のひとつもつけていたら…こうですわよ」
ハリエットは首に手を当てて、首切りのポーズをして冷たく笑った。
クラリアだけでなく、私たちも全員”ひぃっ!”と縮み上がった。
ハリエットがマジで怖いですねwでも、こんなハリエットを書くのも楽しいですw




