7-3 sideアンリエッタ(リオ)
国立クロス学園には、一~二年生の女子合同の授業がひとつだけある。
それは、お裁縫の授業だ。
一年はお裁縫の基礎で、二年は応用だけど、どちらも刺繍だ。
貴族令嬢はみんな教養の一環として刺繍を習ってきているが、習う先生によって刺繍の題材などが異なるため、学園では同じ題材の刺繍をして苦手をなくそうということのようだ。
私も一応裕福な商家の娘なので、貴族令嬢と同じく刺繍は習ってきた。
でもお菓子作りほどは得意じゃないので、お裁縫の授業はけっこう必死でやらなければついて行けない。
今日はちょっと久しぶりのお裁縫の授業なのだが、二年生と合同ということなので、例のクラリアと一緒だ。
また何か仕掛けてくるんじゃ…と、私は憂鬱だった。
お裁縫の授業はお裁縫用の部屋で好きな席に座って受けることができるので、私はできるだけ目立たないよう、教室の後ろの隅っこに座ろうとした。
するとすぐにハリエットが寄ってきて
「お隣に座ってもよろしくて?」
とにっこり笑った。
「ええ、もちろんですわ」
私も笑って応じた。
どうやらクラリアから私を守るようにとルイスから頼まれたらしい。
二人とも優しいなぁと思っていると、案の定クラリアが私の前の席に座った。
また何か言ってくるかな?と思ったけど、特に何も言ってこなかったので、とりあえず私はひと安心した。
先生が教室に入ってきて、少し難しいステッチと題材の説明を始めた。
「さあ、それでは皆様、刺繍をしてみてください。私が見て回りますので、わからないことなどがあれば遠慮なくお尋ねください」
先生がそう言って、私たちはそれぞれ刺繍に取り組み始めた。
私の隣ではハリエットがすいすいと刺繍をし始めていた。
学祭の出品物も見事なものだったから、ハリエットは相当刺繍のお稽古をしっかり重ねてきたんだろう。
それに対して私はもたもたしていて、一刺し一刺しも不揃いで不格好だ。
ハリエットがそれに気づいて、
「わからないことがあれば、私にもお尋ねくださいね」
とにっこり笑った。
ハリエット、いい子。
この淑女っぷりで中身ユウヤとかマジ?と私は思った。
と、そこに
「あっ…あらぁ、しし商家のご令嬢はしし刺繍も習っていら…いらっしゃいませんの?」
と底意地の悪そうな声だけど、めっちゃカミカミのセリフが聞こえてきた。
例のクラリアだ。
なので私は
「一応習ってはおりますが、貴族のご令嬢ほどはお稽古できておりませんので、学園でしっかりお教え頂けて幸いですわ」
と笑って返した。
するとクラリアは
「ま…まあそうですの。ででですがその腕前では、がっ学園で習っても、さささして上達しそうにありませんわね」
とさげすむように笑ったが、やっぱりめっちゃ噛んでる。
はいはいイヤミスルーは慣れてますよーっと私が無視していると、
「ちょっちょっと、わわ私を無視なさるの?!」
とクラリアが噛みまくりながら声を上げた。
その時、隣のハリエットが低い声で言った。
「…うるさいですわよ…」
クラリアも凍ったが、私も凍った。
ハリエットらしからぬすごい低い冷たい声だ。
「お裁縫の授業中に、人様に対して大声でああだこうだと仰るあなたはいったい何様ですの?」
ハリエットはクラリアをにらみつけながら言った。
「いいいえ…あのあのっ…」
しどろもどろに言うクラリアに、ハリエットはさらにたたみかけた。
「この学園では身分の差などで差別してはならない決まりだと、私はそううかがっておりますわ。なのにあなたはなんですの?アンリエッタ様をさげすむような物言いをするあなたは、いったいぜんたい何様ですの?!」
じょじょに声を大きくするハリエットに、私も驚いた。
「わっ…わわわ私は…っ」
と何か言おうとするクラリアに、ハリエットはびしっと言った。
「アンリエッタ様は私の大切な大切なお友達ですわ!そのアンリエッタ様を馬鹿にするということは、ひいては私をも…我が国をも馬鹿にするということですわ!」
ハリエットの言葉に、なぜか先生も他の女子たちも拍手をした。
ハリエットが男前すぎる…!!
さすが、前世ユウヤ!!
クラリアのカミカミは入力しづらいですw




