6-13 sideレイズ(マユ)
侍従頭からルイス来訪の知らせを受けて、父は驚きつつも
「サロンにお通しし、少々お待ちいただくようお願いしておもてなしせよ」
と侍従頭に命じた。
が、侍従頭は
「殿下は、旦那様とレイズ様のお話し合いの場に立ち会いたいと仰せでございます」
と言った。
父は
「それはっ…」
と言葉に詰まったが、
「…王太子殿下をこちらにお通しせよ」
と、侍従頭に命じた。
ほどなくして、ルイスが私たちのいる父の執務室に入ってきた。
「久しいな、マッコール公」
ルイスが言うと、父は
「はっ…お久しゅうございます」
と礼をした。
「先触れもなくいきなり来てしまったことには詫びを言う。すまないな」
ルイスがそう言ったので、
「お詫びなど…そのような…」
と父は慌てた。
「本日マッコール家を訪れたのは、レイズの婚約内定について物申すためである」
ルイスはいかにも王太子らしい威厳のある言い方をした。
父はルイスの言葉に
「それは…一体どのようなお話でございますか?」
と、ちょっとびくびくしているようだった。
「その話、白紙に戻してもらう」
ルイスがそう言ったので、父はぎょっとしていた。
やったー!!ルイス、たまにはかっこいいー!!
驚いていた父は表情を引き締めると
「レイズとレイナード伯爵令嬢との縁談は、当家とレイナード家との取り決めでございますれば、王太子殿下とはいえ…」
とルイスに向かってそう言いかけた。
するとルイスは
「ほお?王家には何の関係もないと申すか?」
と父をにらみつけた。
父はびくついて、ちょっと飛び上がって
「そ、そのようなことは…」
しどろもどろになりつつ言った。
「私にとって公は血のつながりは遠く、叔父などではないが、公の夫人は私の母の妹であり、私にとっては叔母である」
ルイスはそこで言葉をいったん切って、私の方を見た。
そしてルイスは続けてこう言った。
「レイズは私と同じ歳にして、幼少のみぎりより親交を深めてきた幼馴染であり、従兄弟であり、親友でもある」
私はルイスをじっと見つめた。
「レイズがかの女生徒と恋仲になっていることは、私は昨年より認識しており、ずっと二人を見守ってきたのだ」
父がすごく驚いた顔をしたので、これはいける!と私は思った。
「そのレイズの一途な思いを、公たちが己勝手な都合で一方的に断ち切ろうとしていると知り、私は母…王妃殿下にお知らせしたのだ」
ルイスの言葉に、父はごくりと喉を鳴らしてつばを飲み込んだ。
そして
「…王妃殿下はどのように仰られましたか…?」
と弱々しい声でルイスに尋ねた。
「王妃殿下はすぐに父…国王陛下にお伝えし、国王陛下はマッコール公爵家とレイナード伯爵家の婚約は破棄させると仰った」
ルイスがそう答えると、
「さ…さようでございますか…」
父は放心状態でそう言った。
うわー!ルイス、マジでナイス!!
心の中で私はバンザイしまくった。
王家、強い。もうなんでも王家で片付くのでは?w




