6-12 sideレイズ(マユ)
クラリア・レイナードという一学年上の女子から、いきなり”家同士で決めた婚約者だ”と言われて、私は本当に腹が立った。
なので、早速父であるマッコール公爵に手紙を書いて送ることにした。
「僕には学園で知り合い、将来を誓った女性がいます。なので家同士の話し合いだけで勝手に婚約者内定の運びとなったと知って、たいそう困惑しています」
てな感じのことを書いて、メッセンジャーに届けさせた。
数日ののちに父であるマッコール公爵から返事が届いた。
「お前が学園で知り合い、将来を誓ったというのは一体誰なのか。家柄やその女性のことについて、私にこと細かく報告せよ」
というものだった。
当然だろう。
貴族…それも上位貴族の家同士で取り決めた縁談を否定するなんて、とんでもないことだからだ。
貴族ってホントにクソだな…と思いつつも、私は父との面談を打診する手紙を送った。
また数日後、学園が休みの連休に、私はマッコール公爵家に呼び出された。
学園で知り合った女生徒とどのような流れで愛し合い、将来を誓い合ったのかを説明しなければならない。
私は腹を決めた。
アンリエッタ…リオとの幸せな将来のために…二人で色んな腐妄想を語り合いつつ、子供を作ることもなく仲良く生きていくために、父…マッコール公爵を説得しなければならない。
私は実家に…マッコール公爵家に向かった。
今世での私の父であるマッコール公爵は、母であるマッコール公爵夫人とはお見合いで結婚したと聞いていた。
それはルイスの母である王妃殿下の妹とのお見合いだったため、断ることができなかったからだとも聞いている。
それでも両親は…出会いはお見合いだったけれど、その後ちゃんと恋愛をして結婚に至ったとのことだった。
なので私は、心を尽くして父に話せば何とかなる…とそう思っていた。
だが、現実はそう甘くはなかったのだ。
「お前は学内で知り合った庶民の女生徒と恋仲になった…とそう言ったな?」
マッコール公爵…父はそう問うた。
「はい、庶民ではありますが、国立クロス学園に入学できるほどには裕福な商家の娘です」
私がそう答えると、
「その婚姻によるメリットはあるのか?」
と父はそう言った。
なので私は正直に
「…相手の家には大きなメリットがあると思います」
そう答えた。
すると父は
「レイナード伯爵家との婚姻以上にメリットはあるのか?」
と言った。
そこで私はキレた。
「メリットがなければ結婚する価値はないのですか?!僕とアンリエッタはお互いに愛し合っていて、将来を誓っています。メリットは…僕たちの心の安寧です!」
とまくし立てると
「それはお前たちだけのメリットだろう?家同士のメリットは?当家にはメリットはないのか?」
とマッコール公爵はつらつらとそう言った。
本格的に頭にきた私は、
「ならば勘当して下さってもかまいません。僕は平民になり、アンリエッタの家の婿養子になります!」
と、そう言い切った。
ゲームのレイズルートとはだいぶ違うが、こうなったらもうなりふり構ってはいられない。
「お前は…っ、貴族同士のつながりをどう思っているのだ?!」
マッコール公爵は激昂した。
そこに侍従頭が
「失礼いたします…火急のお知らせがございまして…」
と、しどろもどろに告げた。
「なんだ?!今は取り込み中だぞ?!」
マッコール公爵が怒鳴ると、
「いえ…あの…ルイス王太子殿下がお越しで…」
と侍従頭はおどおどと答えた。
えっマジ?!
ルイスが助けに来てくれたの?!
私は思わぬ援軍に心底安心した。
メリットを利点もしくは利益と書くべきか悩みましたが、結局メリットにしました。




