6-11 sideレイズ(マユ)
その子…クラリアの言葉に私たちは凍りついた。
「えっ…?それって君んちと僕んちの間で決まったの…?」
私がおそるおそる尋ねると、
「さようでございます。マッコール公爵家と、我がレイナード伯爵家との間で進んでいる、婚約内定のお話でございます」
と、その子…クラリアはそう言った。
「でも僕は、君がどの学年の誰なのかも知らないんだけど…」
私がそう言うと
「私は二学年1クラスのクラリア・レイナードでございます」
と、その子は礼をしてそう言った。
「えぇー?僕は全然聞いてないんだけどー?」
私が言うと
「私も先達ての学園祭の最中に、招待客として学園に参った母から聞いたばかりでございます」
クラリアはそう答えた。
当人たちが知らない間に話進めるって…
貴族ってマジでクソだな!と私は思った。
「僕は全然了承する気はないんだけど、君はどうなの?」
と私が言うと
「私は父と母の言いつけには背けませんので…」
とクラリアはこともなげにそう言った。
なるほど、この世界の貴族はそーゆーのが当たり前なんだ。
ルイスとハリエットの婚約と同じで、家同士とかで勝手に決めちゃって、当人もそれに従うしかないんだ。
私は腹が立ってきて
「僕は了承してないよ。うちからも全然聞いてないしね」
と、イヤそうな顔を作ってクラリアに言った。
クラリアはちょっと慌てたように
「で、ですが…家同士で決定したことですので…」
と言いつのってきたので、私はさらに腹が立った。
「僕はね、君みたいに家の言いつけに従うしかないって諦めるような子は好きになれないよ」
私の厳しい物言いに、クラリアはたじろいだ。
「僕には将来を誓った大切な人がいるんだ。僕は僕の意志で、将来を共にする相手を決めるよ」
私がそう言うと、
「…わかりました…父に報告させていただきますわ…」
と、クラリアは言った。
なので私も
「うん、僕も父に相談するよ。僕の父と君の父上、どっちの意見が通るかは見えてるよね?」
とクラリアをにらみつけながら言った。
「…っ…失礼いたしますわ…」
クラリアはそう言って小走りで去って行った。
「あんなこと言って大丈夫なの…?」
アンリエッタは不安げな顔で私に聞いてきた。
なので私は
「うん、大丈夫だよ。ちゃんと父上と話してくるからね」
と笑ってアンリエッタに言った。
そう言いながらも私は不安だった。
この世界での貴族のつながりは馬鹿に出来ない。
この国はまだ平和な方だから、第一王子派とか第二王子派とかのくだらない派閥争いはない。
それでも、貴族同士が家同士で取り決めたことは、ほぼ絶対的と言えるだろう。
次男とはいえ公爵家の人間が、一般庶民と結婚したいなどと言えば、反対されるのは目に見えている。
それでも、私たちは決めたんだ。
レイズとアンリエッタで結ばれて、レイズは伯爵の爵位をもらい、アンリエッタと二人、子供を作らずに幸せに生きていくってことを。
それは絶対、誰にも邪魔されたくはない。
なんなら私がアンリエッタんちの婿養子になったっていいんだ。
私はマッコール公爵家次男として、ちゃんと大切にされて育ってきた。
だったら、私が真剣にアンリエッタと結婚したいと言えば、わかってくれるはずだ。
私は父に…マッコール公爵に手紙を書くことにした。
マユの口調が一番書きやすいです。ちょっと口の悪いところとか、書いてて楽しいですw




