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王子になった俺と姫になったあいつ  作者: リュウ
第5章 学園祭準備から本番も大混乱

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5-11 sideルイス(ハヤト)

女子たちの出品物も何とか間に合い、いよいよ学園祭本番となった。

幸い好天に恵まれ、春先にしては暖かく、屋外でのバザーにはもってこいだった。

三学年2クラスずつ合計6クラスが前庭に長い机を設置し、白いテーブルクロスを机にかけて、各々の出品物を並べた。

それぞれの机の後ろにはいくつかの椅子を並べ、売り子役の生徒が座ることになった。

売り子は時間制の交代で、売り子をしていない間は他クラスの出品物を見に行ったり買ったりできる。

レイズが小声で

「前世の同人誌即売会みたいだね」

と、こそっと俺に耳打ちした。

なるほど、言われてみれば確かに。

…と、そこで学園長の挨拶が始まった。

「本日は国立クロス学園恒例の春の学園祭をつつがなく執り行えることになり、生徒諸君の日頃の勉学、お稽古の成果を招待客の皆々様にもご覧いただけることを喜ばしく思います」

前世の校長の挨拶みたいに長い挨拶すんなよな…と思っていたが、意外に学園長の挨拶は短くて安心した。

「それでは、国立クロス学園春の学園祭を開催いたします」

学園長の挨拶の最後の言葉に、学生、教師皆で拍手をして学園祭は始まった。


俺のクラスでは、まず出品物を作った女子たちが売り子をすることになっていたので、俺はすぐに俺たちのクラスの机にと走った。

ハリエットの刺繍作品を全て買うため、俺はためてあった小遣いを握り締めて刺繍作品売り場の前に立った。

「いらっしゃいませ、よろしければお手に取ってご覧ください」

売り子をしていたハリエットは、にっこりと笑った。

「ハリエットの作品は?」

と俺が尋ねると、ハリエットは口に手を当てて笑った。

そして

「うふふ、私の作品はここからここまでですわ」

と手で指し示してくれた。

なんだか最近、ハリエットがすごく明るくなった。

理由は分からないが、ハリエットのその変化が俺にはすごくうれしかった。


「ここからここまで全部いただこう。おいくらかな?」

俺がハリエットの作品群を指さして尋ねると、

「はい、全部で二万三千ジェニーですわ」

とハリエットは笑って答えた。

「えっ…そんなに安くていいのか?」

あんなに一生懸命刺していたのに…と俺が戸惑っていると

「うふふ、まとめ買い割り引きしようと、皆様と相談しておりましたの」

ハリエットは目元をくしゃっとさせて笑った。

「殿下こそ、そんなにお買い上げになられて大丈夫ですの?」

とハリエットが首をかしげて言うので、

「大丈夫だ。今日のために小遣いをためてきた」

俺が答えると、ハリエットと女子たちは下を向いてぷっとふきだした。

「お…お小遣いを…そうでございますか…」

苦しそうに笑うハリエットに、俺はどきどきした。

なんだよ、コレかわいすぎるだろ?!

そう思いつつ、俺は代金を支払った。

「はい、確かに二万三千ジェニー頂戴いたしました。ありがとうございます」

他の女子が手早く紙の袋にハリエットの作品を詰め、ハリエットはそれを俺に手渡してまたほほえんだ。


何が何だかわからないが、最近沈みがちでゴードンにすら心配されてたハリエットが、以前よりずっと明るくなった。

ハリエットがしばらく沈んでいたのは、恐らく前世と今世との狭間で色々と悩んでいたからではないか…と俺は思っていた。

だが今のハリエットは、何かが吹っ切れたかのように明るい。

その笑顔は決して無理をしているわけではない、本当の笑顔だ。

俺は心の底から安心して、今日を目一杯楽しもうと思えた。

ハリエットの作品が入っている紙袋の口を開けて、俺は中身を確認した。

ハンカチが十枚とポケットチーフ五枚に、ひざ掛けらしい大物が一枚。

「これで当分ハンカチには困らないな」

と小声で言った俺の言葉が聞こえたらしく、ハリエットと女子たちはまた下を向いてふきだしていた。

いくらでも笑ってくれよ。

ハリエットが笑っていてくれれば、俺は幸せなんだ。

 

この世界の貨幣単位をどうしようかと迷いましたが、大好きなモンハンの「ゼニー」をちょっといじって「ジェニー」にしてしまいましたw

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