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王子になった俺と姫になったあいつ  作者: リュウ
第5章 学園祭準備から本番も大混乱

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5-10 sideハリエット(ユウヤ)

学園祭までもうあまり日もないので、私は日々黙々と刺繍をし続けました。

ハンカチやポケットチーフなどの小物の他に、何に刺繍を施そうかと悩みましたが、我が国でよく使われるひざ掛けなどはどうかと考えました。

クロス王国は我が国ほど冬の寒さは厳しくはありませんので、ひざ掛けなどの防寒具はあまり普及していないように思われます。

お見合いの折に訪れたクロス王国の王宮はたいそう天井が高く、夏は涼しいだろうと思いましたが、冬は少し冷えるのではないかとも思いました。

冬の王宮が多少なりとも冷えるなら、殿下もひざ掛けなどお使いになられるかもしれません。

そこまで考えて、私ははっと我に返りました。

私の作品を全て買い占める…と殿下は仰いましたが、婚約者への社交辞令だったかもしれません。

そう思いつつも、私は侍女に頼んで、我が国からの輸入品のひざ掛けを調達することにしました。


侍女が近隣の商店からひざ掛けを購入してきてくれたので、私は早速刺繍に取り掛かりました。

ハンカチなどとは違い刺繍する面積が広いので、私は黙々と刺繍をしていました。

すると、私のすぐそばから

「ハリエット、それは何?」

というレイズ様のお声がしました。

「きゃっ…レイズ様」

私は驚いて小さな悲鳴を上げてしまいました。

レイズ様は珍しいものを見るようにひざ掛けをしげしげとご覧になっておられたので、

「これは、我が国でよく使われるひざ掛けですわ」

とご説明いたしました。

するとレイズ様は

「へー、クロス王国ではあまり見ないものだね」

と、また珍しそうにひざ掛けを眺めて仰いました。

なので私は

「オットーバッハ王国はクロス王国より北に位置しますので、冬はとても寒いのです。なのでこういった防寒具が必要不可欠なのですわ」

と、レイズ様にご説明しました。

レイズ様が

「クロス王国の冬はそんなに寒くないけど、王宮は広いからちょっと冷えるもんね」

と、そう仰るので、私はひざ掛けを選んだ理由を思い出し、赤くなってしまいました。

「そ、そうでございますか…」

しどろもどろに私がお答えすると、レイズ様は

「ルイス、きっと喜んでくれるよ」

と、少し笑って仰いました。


何もかも見透かされているような気がして、私はつい

「で、殿下がお使いになられるかはまだわかりませんわっ」

と語気を強めて言ってしまい、思わず顔をそむけてしまいました。

レイズ様が目を丸くして私を見つめていらっしゃるので、私は己の言動を後悔しました。

ですがレイズ様は声を立ててお笑いになって

「いやぁ、それ、他の人が買おうとしたらルイスが止めるよ?」

と仰いました。

レイズ様が笑って下さったので、私は少しほっとしました。

「そ、そんな…」

と私がそう申し上げると

「僕が買おうとしたら絶対”なんでお前がそれを買うんだよ!”って、ルイス激怒するよ~」

レイズ様はさらにおかしそうにお笑いになりました。

レイズ様がお気を悪くなさっていらっしゃらないご様子なので、私は本当に安心しました。

なのでつい、

「うふふっ…」

と声に出して笑ってしまいました。

今度こそ失礼かもと慌てた私に、レイズ様は

「うん、ハリエットには笑顔が似合うよ。きっとルイスも、ハリエットにはいつも笑っててほしいって、そう思ってるよ」

と優しく笑って仰いました。


「じゃ、頑張ってねー」

と手を振って去って行かれたレイズ様の背中を見送り、私は最近の己の態度を顧みました。

このところの私は、前世のことによる将来への不安で暗い気持ちになった上に、学園祭に出品する作品のことでも頭を悩ませ、刺繍に没頭しておりました。

前夜によくお眠りになれなかったらしい殿下の体調不良に気づいても、優しく気遣うどころか、きつい言葉でたしなめてしまいました。

笑顔を見せるどころか、目を吊り上げて厳しい顔をしていたと思います。

…私は、殿下をお慕い申し上げています。

前世の私は男性であったので、今世で男性を愛することはないと思っていました。

それなのに私は殿下に恋をしたのです。

ならば、もう前世のことは考えなくても良いのではないか…と私は思い始めました。

殿下の前世がハヤトで、ハヤトが男性しか好きになれない性癖で、それは今世でも変わらないとしても。

それでも私は殿下のことが、好きです。

私は殿下を愛しているのだと、胸を張ってそう言えます。

なので私は前世のように…ユウヤであった頃のように、殿下に接しよう…そう心に決めました。


 

間違って5-9より先に5-10をアップしてしまいました…慌てて直してます…すみません…

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