5-9 sideレイズ(マユ)
前世の同窓会的なこともできたし、ルイスからシモンをモデルにする許可ももらったし、私は色々すっきりした。
あとは小冊子用の小説について女子たちと話し合って、ラストあたりの手直しをして印刷準備にとりかかるだけだ。
もう今日はみんな解散したから、明日女子たちに報告して色々一気に進めよう。
この世界に転生してから、こんなにもすっきりした気分で明日を迎えられるのは初めてかもしれない。
私はうきうき気分で寮の自室でシャワーを浴びて、ベッドに入って眠りについた。
翌朝、私は自分の教室に
「おっはよー!」
といつも通りに入った。
「おはようございます、レイズ様」
「おはようございます」
みんなと朝の挨拶を交わし、早速小冊子グループの女子たちと集まった。
「昨日アンリエッタが提案した、ルイスの弟シモンを小説に使うことなんだけど、ルイスに許可取れたよー」
と私が言うと女子たちは
「えっ、シモン様にお話は通されましたの?」
「ルイス殿下の一存でお決めになられて問題はございませんの?」
とちょっと不安そうだった。
なので
「シモンはすっごい重度のブラコン…ルイス大好きだから、事後承諾でも大丈夫なんだって」
と私が言うと、
「それはっ…」
「兄弟でも萌えますわ…っ」
女子たちはルイスとシモンの兄弟妄想に萌えたようだ。
うん…みんな立派な腐女子に育ったんだね…
「では小説の終盤をどう変えましょう?」
「そうですわね…」
女子たちが相談を始めたので、私はそれを見守りつつ、変更した方が良さそうな時にはアドバイスをすることにした。
ふと小冊子女子たち以外の女子を見ると、刺繍グループが一心不乱に作業していた。
どんな刺繍をしているのかが気になった私は、手近にいた刺繍女子に聞いてみた。
「きみはどんな刺繍をしてるの?」
私に話しかけられた女子はちょっと驚いた顔をしてから、にっこり笑って
「かわいらしい動物などの刺繍ですわ」
と、手元のハンカチを見せてくれた。
なるほど、かわいい猫の顔だ。
「すごい、上手だねー!」
と私がほめると、
「ありがとうございます、レイズ様」
その子はまたにっこりと笑った。
刺繍グループを見渡すと、端っこでハリエットも頑張っていた。
ハンカチじゃない。
なんかすごい大物に刺繍してる。
「ハリエット、それは何?」
ハリエットの顔を覗き込んで私が尋ねると
「きゃっ…レイズ様」
とハリエットはホントに驚いてた。
それだけ作業に集中してたってことだろう。
ハリエットが刺繍をしていたのは、厚手の織物で、かなりのサイズだった。
「これは、我が国では良く使われるひざ掛けですわ」
ハリエットがそう説明してくれた。
「へー、クロス王国ではあまり見ないものだね」
と私が言うと、ハリエットは軽くうなずいて
「オットーバッハ王国はクロス王国より北に位置しますので、冬はとても寒いのです。なのでこういった防寒具が必要不可欠なのですわ」
と、また説明してくれた。
「クロス王国の冬はそんなに寒くないけど、王宮は広いからちょっと冷えるもんね」
と私が言うと、ハリエットは赤くなった。
「そ、そうでございますか…」
ははーん、これはルイスが買うってわかってるから、ルイスのために作ってるんだな?
「ルイス、きっと喜んでくれるよ」
私がそう言うと、ハリエットはまた赤くなって
「で…殿下がお使いになられるかはまだわかりませんわっ」
と顔をそむけて答えた。
え…何これツンデレ…?
ヤバい、ハリエットかわいい。
ツンデレハリエット、お気に入りです。中身はユウヤだけどw




