5-8 sideルイス(ハヤト)
ゴードンが学園に戻るのを待っていると、ルードが先に戻ってきた。
まずい。
俺たちがいつもの部屋に行くと言えば、ルードもついてくるだろう。
焦りながらルードの顔を見ると、少し疲れているようだったので、俺は
「どうした?疲れたのかルード?」
とルードに尋ねてみた。
するとルードは
「はっ…申し訳ございません。疲れを顔に出し、あまつさえ殿下にお気を使わせてしまうなど、臣下としてお恥ずかしゅうございます」
と頭を下げて臣下の礼をしてきた。
「ああもう…疲れてんなら疲れてるって言えよ。もう寮に戻って休め。これ以上俺を心配させるなよ!」
ちょっといらついたので俺がそう言うと、
「はっ…で、ではお言葉に甘え、早々に休ませて頂きます…」
ルードは少し顔を赤らめてそう言って礼をして去って行った。
…俺またなんかスイッチ入れたのか…?
「ルイス、ナーイス」
陰から見ていたレイズがそう言うと、
「また小冊子のネタが増えたわね…」
とアンリエッタがにやりと笑った。
こいつら…と考えているとレイズが
「これでルード抜きで部屋に集まれるね!」
と、右手の親指を立てて笑った。
そうだった。
ルードを部屋に入れないようにしなきゃだったんだ。
これは我ながらファインプレーか…?
そうこうしていると今度こそゴードンが戻ってきた。
「ゴードン、疲れているところ悪いが、いつもの部屋に来てくれないか?」
俺が言うと、ゴードンは笑った。
「大丈夫だ、疲れてなんかないぞ!…って、ルードは疲れてたのか?」
さすが先生、生徒のことに関してはよく気が回る。
「ああ、ルードはすごく疲れた顔をしてたから、先に寮に戻らせた」
俺の言葉にゴードンは
「うむ、今夜はゆっくり休ませた方がいいだろう」
とうなずいた。
いい先生だ…今は生徒だけど。
いつもの部屋に俺、レイズ、アンリエッタが続いて入ると
「ん?アンリエッタは何か用があるのか?」
とゴードンが尋ねてきた。
当然だろう。
この部屋は俺たち王子と側近候補たちが使うということで使用許可をもらっている部屋だからだ。
色々説明するのも面倒なので、俺はアンリエッタに
「アンリエッタ、ゴードンに言え」
と雑にふった。
不思議そうな顔をしているゴードンに
「先生っ!ゴードンが先生だったんだね!私うれしいよ!」
とアンリエッタが言うと、ゴードンはぱっと顔を明るくした。
「リオ…そうか、リオは俺の前世を知らなかったんだな」
「うんっ、さっき聞いたとこなんだよ!それで早く先生と話せるようにって二人がセッティングしてくれたの!」
アンリエッタが満面の笑みで答えると、ゴードンも満面の笑みを見せた。
「俺の方はレイズから、アンリエッタがリオだってことと、二人のハッピーエンドストーリーってのを聞いてたんだがな」
「やっだぁもう、そんなとこまで聞いてたのー?」
アンリエッタはゴードンの脇腹を肘で小突いて笑った。
そしてふっと笑いを納めて
「…ちょっと、淋しいなー…」
アンリエッタはそう言った。
「先生とハヤトとマユは男の子だから、今も寮で一緒に生活できるじゃん?でも私は女子だし家近いから寮にも入れないしさー」
あ…そうか、そうだな。
俺たちみんな一緒に寮で暮らせたら良かったな…
淋しそうなアンリエッタの表情に、俺たちはしんみりとした。
するとアンリエッタは
「私も男の子で男子寮で暮らせたらさー、モブ同士の萌えも拾えたのにさー…」
と残念そうに言った。
…俺らのしんみりを返せよ…
アンリエッタ…リオの方がマユよりも腐病は重いようですw




