5-7 sideルイス(ハヤト)
「…で?なんで小冊子のために俺がハヤトだって明かす必要があったんだ?」
と聞くと、レイズが答えた。
「あのさ、小説のラストがルードの失恋で終わるのはかわいそうだってアンリエッタが言ってさ」
「それでね、ルイスの弟とくっつく未来を思わせるラストにしたらどうかなって思ったのよねー」
アンリエッタが続けた。
「それで?シモンに俺から許可を得ろってことか?」
俺が尋ねると二人は声を合わせて
「うんっ!!」
と笑ってうなずいた。
なので俺は
「シモンなら、俺から言えば事後承諾でいけると思うぞ」
と言った。
アンリエッタが
「え?そんなんでいいの?」
と不思議そうに聞くので、俺はネタばらしすることにした。
「あのな、シモンはクラスの他のオタクグループのユウキだったんだよ」
「ええぇーっ?!」
アンリエッタの叫びが部屋に響いた。
「でもでも、だからって事後承諾はまずいんじゃないの?」
アンリエッタが慌てたように言うところに
「あのね、ユウキは前世でハヤトに恋してたんだって」
とレイズが説明した。
「…っ…リアルBL…っ」
悶えはじめたアンリエッタに、さらにレイズが言った。
「そのせいで今世でもシモンはルイスにべったべたでさ、超重度のブラコンなんだよね。だから事後承諾でも大丈夫だろうってことなの」
「兄弟BLも尊い…っ!」
アンリエッタはさらに身悶えした。
病気だ、こいつら。
「とまぁ、そういうわけだから、シモンに今すぐ許可を得る必要はない。シモンのことは煮るなり焼くなり好きにしろよ」
俺がそう言うとレイズは
「わかった!じゃあ小冊子女子たちともっかい話し合う!」
と、右手のこぶしをぎゅっと握り、アンリエッタも
「これで続編につなげられるわね!」
と、左手の親指をぐっと立てた。
…ん…?続編…?
「…お前ら、もう一冊作る気か…?」
おそるおそる俺が尋ねると、二人は
「また来年の学祭の楽しみができたね~!」
とはしゃいだ。
…こいつら、今世を楽しみ尽くしてやがる…
レイズがふと思い出したように
「あっ!ゴードンのことも言っとく?」
と俺に聞いてきた。
「そうだな、ゴードンなら俺たちからリオにバラしても気を悪くはしないだろ」
俺がそう答えると、アンリエッタは首をかしげた。
「え?何なに?ゴードンが何?」
なので俺は
「ゴードンはニシダ先生だったんだよ」
とアンリエッタに告げた。
「え?!マジで?!ニシダ先生もこっち来てたの?!よかったー!!」
アンリエッタが大喜びするのを、俺とレイズは笑って見ていた。
「こうなるとゴードンとアンリエッタが話す機会も作らなきゃだね」
レイズが言うので
「そうだな、それこそ早い方がいいかもな」
と俺も同意した。
「ゴードンは今日は貴族のとこ回って寄付金集めてるけど、夕方には学園に戻るから、ここに来るように声かけとくよ」
俺が言うと、アンリエッタはうれしそうに
「うん!」
と笑った。
ゴードンもきっと喜ぶだろう。
俺は久しぶりに明るい気分になった。
少しずつ前世組がお互いを認識し合ってきてます。ルイスとハリエット…ハヤトとユウヤももうちょっとです。




