5-6 sideルイス(ハヤト)
俺が刺繍グループをしばらく見学していたら、レイズが教室のドアを少し開いて、俺に手招きをしてきた。
なので俺はハリエットに
「レイズに呼ばれたからちょっと行ってくる。根を詰めすぎるなよ?」
と声をかけた。
「殿下こそ…今夜こそはしっかりお休みくださいませね?」
ハリエットがクギを刺すように言うので
「ああ、今夜はたっぷり寝るよ」
と笑って返し、俺は廊下に立っているレイズの元に向かった。
するとレイズがやや小声で
「あのさ、いつもの僕らの部屋、今誰もいない?」
と聞いてきた。
「ああ、ルードとゴードンはそれぞれの担当する貴族の所に寄付金の回収に行ってるから、戻るのは夕方になると思うぞ」
俺が答えると、レイズは安心したような顔をして
「そっか、じゃあ今から一緒に部屋に行ってくれる?」
と言った。
もちろんとうなずいて二人で廊下を歩き出すと、アンリエッタが廊下の隅にいて俺に礼をした。
俺とレイズとアンリエッタの三人で話したいってことか?
いったい何を…と俺は不思議に思いつつ、二人を伴っていつもの部屋に向かった。
部屋の入り口に着くと、レイズはアンリエッタに言った。
「ごめん、アンリエッタ。ちょっとだけここで待ってて」
なんだろうと思っていると、レイズがドアを開けて俺の背中を押して部屋に入らせ、ドアをそっと閉めた。
「なんだ?アンリエッタと三人で話したいんじゃないのか?」
俺が尋ねるとレイズは
「あのさ、ルイスは前世ハヤトだったってこと、まだアンリエッタに話してないよね?」
と言った。
「ああ…お前も話してないんだろ?」
と俺が返すと、レイズは
「至急、ルイスがハヤトだって明かさなきゃな流れになってさ」
とわけのわからないことを言ってきた。
「は?なんなんだよ至急って」
俺が言うと
「とにかく!今、ルイスがハヤトだって明かしたいんだよ」
レイズは両手を合わせて俺を拝んだ。
「まあ…わかんないけど、俺もそろそろとは思ってたからな」
俺がそう言うと、レイズは笑って
「おっけー!アンリエッタ、入っていいよ!」
とアンリエッタを招き入れた。
ドアを開けて入ってきたアンリエッタは
「お二人のお話はお済みになりましたの?」
といつもの礼儀正しい口調で言った。
レイズは
「うんっ!さあルイス、アンリエッタに言って!」
と俺に向かってにこにこと言った。
「お前…雑だなー…」
とレイズに呆れる俺に、アンリエッタは
「殿下、私に何かご用でしょうか?」
と不思議そうに尋ねた。
どう切り出そうか迷ったが、ちょっと考えて俺は思ったままをストレートにアンリエッタに言った。
「リオ、お前猫っかぶり上手いなー」
笑いながら言う俺を見るアンリエッタの目が点になった。
「えっ…?えぇっ…?!」
と驚くアンリエッタに、俺は
「久しぶり…でもないけど、俺だよ、ハヤトだよ」
と笑って言った。
「えぇーっ?!ルイスがハヤトだったの?!」
と叫ぶアンリエッタにレイズが言った。
「ごめん!リオにハヤトのこと明かすタイミング逃しててさー」
アンリエッタは驚いて固まっていた顔をほぐし、
「もうっ…早く言ってよー!!」
と笑った。
「やー、これで色々やりやすくなったわ」
と言うレイズに俺は尋ねた。
「…で?どんな目的があって俺の前世を明かす必要が生じたんだ?」
「うん!小冊子のため!!」
レイズの返事に俺は
「あぁ…そんなとこだろうと思ったよ…」
と肩を落とすしかなかった。
前世同窓会wやっぱり腐女子コンビが大好きですw




