6 sideルイス(ハヤト)
初めてのお茶会でレイズ(マユ)と出会って色々確認した後も、王妃と公爵夫人は俺とレイズが仲良くなるようにと頻繁にお茶会を催すようになった。
俺とレイズは、一応まだ三歳児なので他の人間のいる所ではごく一般的な三歳児がちょっと賢くなったような言葉づかいで会話しているが、二人きりになると前世と同じような話し方で話をするようになった。
今日は俺の部屋でレイズと二人で遊ぶことになったが、もちろんメイドたちが部屋の隅で控えていて、いつでもお茶のおかわりやお菓子の追加を持って来られるようにしている。
メイドたちに聞こえない程度の声の大きさで、レイズが俺に話しかける。
「もしユウヤが平民になってたとして、どこかで出会ったらどうする?」
とレイズが言うので、俺は
「ユウヤだって分かったら絶対ユウヤと一緒にいられるようにする」
と答えた。
「でもルイスは一人っ子だから、平民のユウヤと一緒にいられるようにするのは難しいよ?」
と言われて、それは確かに…と俺は悩んだ。
「もしも、もしもだけど、ユウヤが主人公に転生してたら、平民でも一緒にいられるようになるかもしれないよ」
というレイズの言葉に俺はちょっと考えてみた。
主人公になるってことは女に生まれ変わるってことだ。
でも前世でも現世でも、俺は変わらず男の方が好きみたいなんだ。
もしもユウヤが主人公のアンリエッタ…女になってたとして、俺はアンリエッタを愛することはできるんだろうか?
考えてたら思考が渦巻いて訳が分からなくなってきた。
そこにまたレイズが話しかける。
「もしユウヤが平民の男に生まれ変わってて、出会えたとしたら?」
平民でも何でもユウヤが前世と同じく男に生まれ変わってたらきっと愛せる。
そう思ったので俺はレイズに答えた。
「もしそうなら、俺はユウヤとずっと一緒にいたい」
レイズはうんうんとうなずいて、とあるプランを勧めてきた。
「だったら、弟か妹を作ってもらえばいいよ」
「弟か妹…?」
「そう。今はルイスは一人っ子で王位継承権を持ってるから、平民のユウヤと結ばれたいなんてとてもじゃないけど叶えられないでしょ?もし弟か、最悪妹がいればルイスが平民になっても王家は何とかなるんじゃない?」
「…なるほど…確かにそうだ」
うなずいてはみたものの、確かこのゲームにはルイスの弟なんてのはいなかったはずだ。
「なあ…もしルイスの弟が出てきたら、このゲームのストーリー変わってくるんじゃね?」
とレイズに尋ねてみるとレイズは
「私たちがこうして転生してるってことは、それでもうすでに元々のゲームとは違ってきてるわけだよね?だったらルイスの弟がストーリーに絡んできて、筋が変わっても仕方ないでしょ?」
と、あっさりとそう言った。
レイズ…マユ的には、このゲームのストーリーその他はあまり重く考えるべきものではないようだ。
確かに俺たちがゲームキャラに転生している時点で、元々のストーリー自体破綻し始めていると言っても過言ではない。
というか、この世界は俺たちにとってはゲームの世界であっても、この世界に生きる人達にとっては、まぎれもない「自分たちが生きている世界」で、ちゃんと個々人がそれぞれの考えや立場に沿って生きている。
それなら、元々のストーリーがどうのという心配などする必要はないかもしれない。
「うん…そうだな。父上と母上にさりげなく頼んでみるよ」
俺は腹を決めた。
ゲームのストーリーとは全く違う筋書きになったとしても、それはそれでいいんだ。
この世界の人達はそれぞれ日々を生きているんだから、俺たちがどうしようと人々の人生にはそうたいした影響はないだろう。
…というわけで、俺は早速王妃に言ってみた。
「母上、僕も兄弟が欲しいです」
王妃はちょっと驚いた顔で
「急にどうしたの?」
と言ったので、そういえばレイズは公爵家次男だったっけ…と思い出しつつ
「レイズはお兄様がいるそうです。僕も兄弟が欲しいです」
と、いかにも子供が言いそうなことを言ってみた。
「まあ、そうだったの。じゃあ陛下とお話してみるわね」
王妃は微笑んで、そう約束してくれた。
俺たちの「恋に恋するアンリエッタ」はゲームのストーリーを逸脱しつつあったが、ユウヤに出会って一緒にいるためなら構わない。
ユウヤ、お前どこにいるんだ?
この世界にいるなら会いたいよ…
ユウヤも転生していることをハヤトはまだ知りません。ていうか、ユウヤが女になってたら愛せないのかお前…




