4-11 sideルイス(ハヤト)
レイズ達とのやり取りで心底疲れ切っていた俺に、ハリエットは手ずから紅茶を入れてきてくれ、肩を貸してくれると言った。
体の大きな俺が小さな体のハリエットの肩を借りるのはどうなのかと数瞬迷ったが、俺はありがたくハリエットの肩を借りることにした。
…そういえば、前世での学祭の後もこんなことがあったな…
懐かしい思い出にふけりながら目を閉じた俺は、いつの間にか眠っていた。
ユウヤがメイド役を嫌がっていることに気づいたので、俺がユウヤの代わりにメイド役をすることになった。
本来女子が着る予定だったメイド服は、当然俺には小さすぎるだろうと思われたため、わざわざ採寸して特別に俺用にメイド服を作ってもらうことになったが、俺の採寸を誰がするかで女子たちが少々もめた。
別に誰が採寸したって変わらないだろうに…と思っていると、ユウヤが
「俺がやるよ」
と手を上げた。
ユウヤが採寸する…と思った途端、俺は色々意識し始めた。
採寸っていうと、密着して胸囲だのなんだの測るんじゃないのか?
ヤバい、ユウヤと密着したら…俺は思わずユウヤを抱きしめてしまうかもしれない。
まずいんじゃないのかコレ。
そう思ったが、みんなのいる所でそれはまずい。
俺はユウヤを抱きしめたい欲求に耐えることにして、採寸をユウヤに頼んだ。
「じゃあ、ユウヤに頼むわ」
そうは言ったものの、採寸って裸でやるべきじゃないのか?
普通にまずいだろソレ。
だが女子たちもいる前で裸になるわけにもいかないだろう。
俺の採寸をしたがっていた女子のひとりが
「Tシャツの上からちょっときつめに測ればいいよ~」
とユウヤに言い、ユウヤはうなずいた。
俺はシャツを脱ぎ、下着代わりのTシャツ一枚になってユウヤに採寸をしてもらうことになった。
「じゃあ、測るよハヤト」
と、ユウヤはメジャーを持って俺の前に立った。
「採寸って前から測ればいいの?後ろから?」
とユウヤが女子たちに尋ねると、女子たちは
「どっちでもいいと思うけど、家庭科でパジャマ作った時は前から測ったよー」
と言った。
「わかった、じゃあ前から…」
とユウヤが俺の胸に顔を寄せ、メジャーを後ろに回して採寸を始めた。
ユウヤと密着してる…と思うと、俺の胸は高鳴った。
俺がドキドキしてるの、ユウヤにバレるんじゃないのか?
ちょっと心配になった俺に、ユウヤは笑いかけてきた。
「緊張しなくても大丈夫だよ。サイズ測るだけだから」
今までこんなにもユウヤの顔が近くなったことはなかったので、俺はさらにドキドキした。
胸囲、ウエスト、肩幅などを採寸して、ユウヤは離れて行った。
ユウヤのぬくもりを近くに感じていた俺は、ユウヤが離れることで一気に寒くなり、なんだか淋しい気持ちになった。
ユウヤが測った俺のサイズを見て、女子たちは
「これ、あんま私らと変わんないかも」
と言った。
「え?じゃお前らと同じメイド服でいけそうなのか?」
と俺が女子たちに尋ねると、
「うん、いけそう。袖は半袖だし。でも丈は足りないから、ハヤトだけ超ミニになるかも」
という答えが返ってきた。
女子たちが着れば膝丈のメイド服が、俺には短すぎるらしい。
「…ヤローの超ミニって…需要あんのかよ…」
と俺が力なく言うと、
「ごめん、俺が着るはずだったのに…」
とユウヤがしょんぼりと謝るので、
「何言ってんだよ、俺がやるって言ったんだから」
俺はユウヤに笑いかけた。
学祭で超ミニのメイド服姿を披露して散々笑われたが、終始おどけて明るく場を乗り切った俺は、内心ではぐったりと疲れ果てていた。
そんな俺に、ユウヤは
「少し休んだら?」
と肩を貸してくれて、俺はしばらくユウヤの肩に頭を預けて眠ったんだった…
そんな前世の夢から目覚めると、ハリエットの声がした。
「殿下、お休みになれましたか?」
その声に、俺は現実…現世に意識を戻した。
”肩”もちょいちょい”方”と変換されるので油断できませんw




