4-9 sideルイス(ハヤト)
勇気を振り絞ってハリエットに俺の今の気持ちを伝えようとしたのに、レイズたちに邪魔をされて、俺はがっくりと崩れ落ちた。
マジでなんなんだよこいつら…
と恨みがましい目でレイズたちの方を見ていて、ふとさっきの会話を思い出した。
ショウサッシ…小冊子って言ったよな、こいつら。
それも俺がどうの、ルードがどうのって…
そこまで考えて、俺はまさかと思った。
「おい…レイズ…」
俺は小声でレイズに話しかけた。
「何?どうしたの?ルイス」
きょとんとした顔のレイズに
「まさかとは思うが…お前ら、俺とルードを使った同人誌みたいなものを作る気じゃないだろうな…?」
と俺が尋ねると、
「あたりー!よくわかったねー!」
レイズはけらけらと笑って答えた。
何考えてんだよこいつら…
「何がどうなってそういう話になったんだ?」
と俺が聞くと、
「あのね、ルードがルイスのこと好きだって、みんなの前で言ってぇ」
とレイズが言うので
「それは知ってるが…それでなんで同人誌なんだ?!」
と、俺はレイズをにらみつけながら聞いた。
「でね、アンリエッタのひと押しで、ルイスとルードの腐妄想に何人かが萌えちゃってー」
「…それも知ってる…」
レイズの呑気な言い方に、俺はだんだんいらついてきた。
「でね、みんなの萌えを拾わなきゃって思ったらしいアンリエッタが、バザーの出品物をもうひとつ増やしたらどうかな?って」
…あいつが元凶かよ…
俺はかなり頭に血が上ったが、ひと呼吸置いて心を落ち着かせた。
今の俺は、いち男子高校生じゃない、王子だ。
心を何とか落ち着かせた後、俺はアンリエッタに小声で話しかけた。
「…アンリエッタ、少し、いいか…?」
「はい、なんでございましょう、殿下?」
アンリエッタは不思議そうな顔でそう返してきた。
アンリエッタはリオだとわかっているが、リオと呼ぶわけにはいかない。
もう一度、俺は心を落ち着かせてからアンリエッタに言った。
「俺とルードの話を小冊子にするつもりだそうだが、不敬になるとは思わないのか?俺はこの国の第一王子で、ルードは伯爵家の人間だぞ?」
するとアンリエッタは
「もちろん、お二方のお名前などをそのまま使用すれば、不敬になるであろうことは存じております」
と真面目な顔で言った。
「わかっているのにそんな小冊子を作ることが許されると思うのはなぜだ?」
と俺がたたみかけるように尋ねると、
「お二方をモデルにさせて頂きますが、お名前は変えますので問題はないかと」
アンリエッタはにっこり笑ってそう答えた。
…ってことは前世で言う所の二次創作みたいなもんか…?
いや、二次とはちょっと違うか…
と俺が考えていると、
「お二方の外見的特徴はそのままに、お名前だけを変えさせて頂く予定でございますが…ご迷惑でしょうか…?」
は?それって読む人が読めば、俺たちがモデルだってすぐわかるんじゃないのか?!
俺が呆然としていると、さらにアンリエッタは言い募ってきた。
「貴族令嬢の皆様には、読書をたしなまれる方も多いかと存じます。読むだけではなく、文筆にも秀でていることをこの小冊子でたくさんの方々に知って頂くのも、貴族令嬢の皆様の日頃のお勉強の成果を示すことになるのではございませんか?」
…理屈でリオに勝とうってのが間違いだった…と俺は肩を落とした。
新たに下書き用に使い始めた70枚つづりの落書き帳も、すでに半分以上使っています。三冊組買っといてよかったw




