4-5 sideルイス(ハヤト)
刺繍グループの女子たちは、ルードの元に向かった。
そしてその中のひとりが
「ルード様はハンカチを常備なさっていらっしゃると殿下から伺いましたが、どのようなハンカチをお使いになっていらっしゃいますの?」
と尋ねた。
するとルードは
「私が使っているものは、家族が刺繍してくれたものだ」
と答えた。
刺繍女子たちはさらに
「ご家族…と申しますと?母上様ですの?」
と聞いた。
ルードは
「母の手によるものと、妹の手によるものだ」
と言った。
ルードには少し年の離れた妹がいる。
確か、まだ八歳ぐらいだったはずだ。
なので俺は
「えっ、ルードの妹ってまだ小さかっただろう?刺繍なんてできるのか?」
とルードに聞いてみた。
ルードは
「はっ…まだ八歳ですので、あまり手の込んだ刺繍はできかねますが、”兄上に”と刺してくれたものですので、使用しております」
と、背筋を伸ばして答えた。
いちいち姿勢正さなくても…とちょっと笑いながら俺は
「ルードは妹を大切にしてるんだな」
と言った。
するとルードは
「いえ…その、使ってやらないと不機嫌になりますので…」
と恥ずかしそうに言った。
女子たちのルードを見る目が変わった。
「まぁ…ルード様ってばなんてお優しい…」
「妹様思いですのね…」
おっ、ルード、株が上がったぞ。
女子たちは、自分たちの刺繍ハンカチをルードに売るために、色々と考え始めたようだ。
「妹様はどのような刺繍をなされるのですか?」
とひとりがルードに尋ねた。
ルードは恥ずかしそうに
「その…犬や猫などの動物のものが多いのだ…」
と答えた。
以前見たことのあるルードのハンカチの刺繍の柄を俺は思い出した。
「そういえば、なんか動物っぽい感じの刺繍だったな」
と俺が言うと、ルードはさらに恥ずかしそうに
「はい、一応四つ足なので犬だか猫だからしいのですが、犬なのか猫なのか判別しがたい代物で…」
と、そう言ったので、
「今日も持ってるのか?」
と俺が聞いてみると、
「はい…妹の刺したものを…」
とルードは答えた。
「ちょっと見せてみてくれないか?」
俺は興味本位で聞いてみた。
「はっ…殿下にお見せするほどのものではございませんが…」
とルードが見せてくれたのは、四つ足で大きな耳が二つ付いている、犬とも猫ともつかない動物の刺繍だった。
「これは…犬にも猫にも見えるな」
と俺が言うと、ルードは答えた。
「本人曰く、猫だそうですが…」
なるほど、どっちにも見えるしどっちにも見えない。
なので俺は
「まぁまだ八歳なら、足や耳がわかるぐらいに刺せれば上等じゃないか?」
とルードに言った。
「お気を使わせてしまい、申し訳ございません…」
と本当に申し訳なさそうにルードが言うので、
「いや、八歳にしてはなかなかだろう。これからきっと、もっと上手くなるだろうな。あと5~6年もすれば、かなりの腕前になるんじゃないか?」
俺がそう言うと、女子たちの目の色が変わった。
ゆうべは久しぶりにブランデーを飲んで満足です~(´▽`)←




