4-4 sideルイス(ハヤト)
学園祭のバザーについて、クラスのあちこちで話し合いが始まった中、ハリエットがまた女子たちに囲まれているようだったので、俺は気になって少し離れたところから見守っていた。
またハリエットに何かするつもりなら…と身構えていたのだが、どうやら悪い雰囲気ではなさそうだ。
数人の女子たちの中で、ハリエットが何やら赤い顔をしているのが見えた。
怒っているわけでもなく、何か恥ずかしがっているような…?
気になって女子たちの近くに行って、端の方にいた女子の一人に尋ねてみた。
「女子たちは何を話してるんだ?」
するとその女子は
「私たち、バザーで刺繍をするグループですので、どのような作品にするかを話し合っておりますの」
と、そう答えた。
が、それではハリエットが真っ赤になっていることの説明にはならない。
なので俺はさらに聞いた。
「で?なんでハリエットは真っ赤になっているんだ?」
俺の言葉に、ハリエット以外の女子たちが口々に言った。
「ハリエット様が刺繍をなさったら…」
「その作品は全て殿下が買い占められるのでしょう?と」
「そう申し上げただけですわよ」
彼女たちがいかにもおかしそうに笑うと、
「もうっ…皆様、おからかいになって…」
と、ハリエットはさらに赤くなって、両手を口に当てて身をよじった。
なんだかよくわからないが、どうやらハリエットはこの女子たちと仲良くなったようだ。
以前、ハリエットを取り囲んでいた女子たちもその中には何人かいた。
なのに今、仲のいい友達のようにハリエットをからかって笑っていて、ハリエットもからかわれているのが分かっていながら、怒ったりはしていない。
そうか…ハリエットは俺が仲を取り持とうとしなくても、ちゃんと自分で女子たちと仲良くなったんだな…と俺は心底安心した。
なので俺は
「あんまりハリエットをからかうなよ。まぁ、ハリエットの作品は俺が買い占めるが」
と言った。
すると女子たちはわっと盛り上がって、
「ほら、殿下ご自身も買い占めると仰ってますわよ?」
「ハリエット様の作品の売り上げは確実ですわね」
と笑った。
「もう…もう…っ、殿下まで…」
真っ赤になって両手で顔を覆って身をよじるハリエットに、
「あははははっ」
と俺は声を立てて笑った。
「…で?君たちはどんな刺繍をするんだ?俺はハリエットが刺繍したものなら何でも買うが」
と俺が言うと、女子たちはまた笑った。
「そうですわね、私たちもどなたかに買っていただけるようなものを作らなくてはなりませんわね」
「学園祭にいらして下さる方々の年齢や性別などにもよりますわね」
ちょっと真剣に女子たちが話し合い始めたので、俺は退散することにした。
ハリエットは、もう大丈夫だ。
レイズとアンリエッタしか友達がいなかったハリエットが、他の女子たちとも話ができるようになって、俺は本当に安心した。
王太子である俺の婚約者としてやっていくには、貴族令嬢たちとも親交を深めておいた方がいいだろう。
そう考えていると、刺繍グループの女子のひとりが俺に尋ねてきた。
「…ルード様は、どのような刺繍がお好みなのかご存知でしょうか?」
あ…こいつらの次のターゲットはルードか。
まぁ俺がムリならレイズかルードかゴードンに行くよな…と思いつつ
「ルードなぁ…あいついつもちゃんとハンカチ持ってるけど、あんまり大きな刺繍入りのハンカチじゃないぞ?」
と答えた。
「ルード様のハンカチをご覧になったことがございますの?」
「あまり大きな刺繍入りではないとのことですが、どのような刺繍が施されておりますの?」
矢継ぎ早に質問してくる女子たちにちょっと引いた俺は言った。
「ルードに直接聞いたらどうだ?」
「そうですわね!」
「直接うかがってみますわ!」
「ルード様!」
女子ミサイルは、ルードに向かって飛んで行った。
…すまん、ルード。
ハリエットに友達?ができて安心のルイスですw




