4-3 sideハリエット(ユウヤ)
来たるべき学園祭を前に、クラスの皆様は色々と話し合いを始められました。
アンリエッタ様はお得意のお菓子作りで何種類ものお菓子をお作りになるようですが、他の数名の女子たちも、どうやらお菓子をお作りになるらしいです。
私は幼少時からお稽古を重ねてきた刺繍を、ハンカチなどに施すことに決めました。
レイズ様が私のそばにいらして、
「ハリエットは刺繍するの?」
とお尋ねになったので、
「はい、ハンカチなどの小物に刺繍をしようかと思っております」
と私はお答えしました。
するとレイズ様は、
「ハリエットが作ったものなら、ルイスがぜーんぶ買っちゃうかもね」
そう笑って仰いました。
なので私は頬に熱が集まるのを感じながら、
「まぁっ…レイズ様ったら、そのような…」
と慌ててしまいました。
すると近くにいらした女子の皆様が
「まぁ…ハリエット様もそのようなお顔をなさるのですね」
と、驚いたようなお顔をなさいました。
そして、そのうちのおひとりが
「私…ハリエット様はあまり表情を崩されないので、そのような表情をなさることもあるのだと知って、不敬かもしれませんが、親近感がわきましたわ」
と、そう仰いました。
そう言われ、私は学園に入学してからの己の態度を顧みました。
確かに私は表情が乏しく、皆様から冷たそうに見られていたかもしれない…と気づき、恥ずかしくなりました。
なので勇気を出して
「…私は母国の代表としてこの学園に留学生として参りましたので、気負い過ぎていたのかもしれません。ですが…ですが、私もひとりの女性なのです…っ」
私は両の目をぎゅっとつぶって、そうお伝えしてみました。
すると周囲の女子たちは
「そうだったんですの…」
「そうですわよね、お国を代表していらしているのですもの、常に緊張していらしても仕方ありませんわよね…」
「私、ハリエット様のことを誤解しておりましたわ」
と、口々にそう仰ってくださいました。
そして、おひとりが
「…ハリエット様は、ルイス殿下をお慕いしていらっしゃるのですね?」
と仰ったので、私はうなずいて
「…はい、ひとりの殿方として、お慕い申し上げております」
とお答えしました。
すると、女子の皆様は笑って仰いました。
「ハリエット様も、私たちと同じ恋する乙女なのですね?」
「恋…」
今度こそ私は真っ赤になってしまい、両手で顔を覆いました。
近くで私たちの様子を見守っていらしたらしいアンリエッタ様が
「うふふ、ハリエット様、かわいい」
と、そう仰って、女子の皆様も
「本当に…おかわいらしいですわね」
と笑って下さいました。
私はまだ恥ずかしく、顔の熱も冷めなかったのですが、そんな私の様子を見て、女子の皆様が
「私たち、ハリエット様と同じく刺繍をするつもりなのです」
「よろしければ、どのような刺繍を施すのか話し合いをしませんか?」
と、今までよりも少し砕けた調子で話しかけてくださいました。
「はいっ…是非…!!」
こうして私は、クラスの女子たちと少し…ほんの少しですが仲良くなれそうになり、内心ほっといたしました。
そしてお話し合いをすることになったのですが、女子のおひとりが
「まぁハリエット様の作品は、全て殿下が買い占めそうですけど」
と、いたずらっぽくお笑いになりました。
「もうっ…そんな…」
と私がまた両手で顔を覆うと、皆様はとても暖かい笑顔で…私を見守るように笑って下さいました。
すっかり乙女なハリエット(ユウヤ)w




