3-14 sideレイズ(マユ)
先生がこの世界で苦しい思いをしてたわけじゃなくて、私は安心した。
安心したら、他のことが気になってきた。
「あのさ…ルードがルイスのこと好きっていうの…知ってる?」
と聞くと、ゴードンは
「あぁ、知ってる…というか、夜の練習相手になりたいって言ってたのは知ってる」
と答えた。
なるほど、ゴードンの中ではそこで止まってるんだ。
「…まさか、ルードの奴、本気なのか…?」
何かに勘付いたらしく、ゴードンはそう言った。
「そうみたいなんだよねぇ…」
と私が言うと、ゴードンはうなった。
そして申し訳なさそうに
「いや…ルードが練習台になるって言った時、俺はレイズの方が適役だろうって言っちまったんだよな…」
と言ったので、私は体の前で手を左右に振って
「あぁそれは大丈夫だから」
と言った。
「ルイスと私がどうにかなるなんて絶対にないから、その場のしのぎ方としてはそれで正解だったよ」
と私が言うと、ゴードンはほっとした顔をした。
もうついでだ、言っちゃえ!と
「あのね、私…レイズはアンリエッタと恋人になったから」
私はゴードンにそう告げた。
ゴードンはえっ?えっ?ととても驚いたので、
「アンリエッタはリオなんだよ」
とネタばらしをしたら、今度こそゴードンの目は点になった。
「…は?!アンリエッタがリオで…ってことは、お前ら元々親友の女同士だろ?それでいいのか?!」
ゴードンが慌てたように言うので、私はちょっと意地悪してみた。
「先生は、女同士っていうの、ムリな人なの?」
ゴードンはぐっと言葉に詰まった。
「いや…男同士がある以上、女同士も否定できんが…お前らは親友だっただろう?親友が恋人になるっていうのは…抵抗ないのか?」
ゴードンがそう言うので、私は説明した。
「あのね、私とアンリエッタ…リオが決めたハッピーエンドストーリーがあるの」
ゴードンは訳が分からないといった顔をしたけど、
「それは…どういうストーリーなんだ?」
と、ちゃんと尋ねてくれた。
頭ごなしに否定したりしないあたり、やっぱりゴードンは…先生はとってもいい人だ。
「私たちが決めたストーリーは、レイズとアンリエッタが恋人同士になって、いずれは結婚して…そして、子供を作ったりせずに、萌え妄想を語り合ったりしながら、一生幸せに暮らすっていうハッピーエンドだよ!」
ゴードンは、大きく目を見開いて、そして笑った。
「…そうか、そうか、レイズは次男だから、跡継ぎを無理して作らなくてもいいんだよな…そうか、子供なんていなくても、二人が幸せに暮らせれば…それは立派なハッピーエンドだなっ!」
そう言うゴードンの目には、涙が浮かんでいた。
「先生、なんで泣いてるの?」
と、びっくりして私が尋ねると、
「俺は…あんな形であんなにも若い命を終えることになったお前たちのことがずっと心配だったんだ…」
と言うゴードンの目には、まだ涙があった。
そして
「この世界に転生しても、転生先によっては幸せになれないかもしれない。辛い思いをすることになるかもしれない…と、そう思っていた」
そう言ってから、ゴードンはふっと笑った。
「だから、お前たちが自分たちで幸せになる道を選べたことが、ホントにうれしいんだ」
先生の…ゴードンの言葉に私も泣きそうになった。
「うんっ…絶対、絶対に幸せになるから…先生も幸せになってね!」
と私が言うと、ゴードンはこう返した。
「俺は、お前らが幸せになってくれれば幸せだよ」
私は、柄にもなく本格的に泣けてきてしまった。
なんでみんながこの世界に転生したのかはわからないけど、折角新たに授かった命、人生なんだもの。
きっと、みんなで幸せになろうね…!!
これにて第3章終わりです~。次からは第4章が始まります。




