4 sideレイズ(マユ)
現世での一人称は「ボク」だけど、前世での一人称は「私」だった。
私は高校二年生の女子…腐女子だった。
小学四年生ぐらいからBLに目覚めて、その頃はそういう趣味の友達もいなかった。
中学に入って、同じ趣味の友達・リオに出会って一気にBL熱が上がった。
BL系の乙女ゲームを色々やりこんだり、二次創作のBLものにもハマった。
BL趣味だけじゃなく普通の乙女ゲームもやるぐらいにはオタクだったんだけど、普通の乙女ゲームでも攻略対象同士のBL妄想とかでもリオと盛り上がったりしていた。
そんな私たちが、高校に入ってリアルBL妄想に盛り上がった。
うちの高校は一年で同じクラスになったら二年もそのまま持ち上がりで、三年になる時に理系と文系に別れるんだけど、一年で同じクラスになった男子たちの中に、妄想が滾る二人がいた。
それはハヤトとユウヤという男子だった。
ハヤトはツーブロックの爽やか系イケメンで、高校に入った頃から女子に呼び出されては告られたりしてた。
もう一人のユウヤはちょっとかわいい感じのイケメンで、サラサラなやや長めな髪がきれいな子。
でもユウヤはなんかちょっと近寄りがたい雰囲気もあって、ハヤトほど告られたりはしてなかった。
二人揃って2.5次元っぽい見た目だったので、リオと私はリアルBL妄想するぐらい萌えた。
二人がお互いの頭を寄せ合って内緒話みたいなことをしてるだけで、リオと私はめっちゃ盛り上がって妄想しまくり、オリジナル小説でも書く?っていうぐらいだった。
特にハヤトはユウヤに対して、他の人に対するのとは全く違う、すっごく優しい目で見ていることが多かったので、私たちはハヤトのユウヤへの好意が友情とは違うことに気づいていた。
だから学校帰りにカラオケに誘ったりマックに誘ったりして、さりげなく二人が隣同士の席に座るように仕向けたりしたんだけど、ユウヤの気持ちは見えなかった。
ハヤトの片思いっぽいなと思いつつも、リアルBL妄想に萌えてた私たちは、何とかユウヤがハヤトのことを友情以上に好きになるようにと努力し続けた。
「ハヤトってユウヤにはすっごく優しいよね」
「ハヤトにとってユウヤは特別っぽいよね」
とか、リオと二人でユウヤに言ってたんだけど、ユウヤは
「ハヤトはみんなに優しいよ」
と柔らかく微笑んでいるばかりだった。
ハヤトとユウヤの仲が進展するように、修学旅行ではさらに応援するつもりだったんだけど、その修学旅行のバスが事故って私たちはみんな死んでしまったらしい。
私はこの世界に転生してほぼすぐに、この世界は「恋に恋するアンリエッタ」のゲーム世界だと気づいたんだけど、自分が攻略対象の一人・レイズに生まれ変わったのには戸惑った。
前世で時々リオと話してたんだけど、もし私たちが死んでゲーム世界に転生するなら、主人公とか攻略対象じゃなく絶対モブだよね!と。
主要人物に近いモブに転生して、攻略対象同士がBLになるように仕向けるとか、そういうポジションになったらきっと楽しいだろうなって話してたんだ。
なのに私は攻略対象の一人に転生してしまった。
主要人物に近いモブに転生したら、ルイスとレイズがくっつくように応援したりしたのに…と思うと、自分が攻略対象になったことがすっごく残念。
でも三歳になった頃に出会ったもう一人の攻略対象者ルイスがハヤトの転生後だと分かって、うれしいようなうれしくないような複雑な気分になった。
レイズは私だから、ハヤトであるルイスとくっつくなんて考えられない。
ルイスが主人公とくっつくことになったら、前世でユウヤが大好きだったハヤトがかわいそう。
予想通り、ハヤトはユウヤを探したいと言ってきたので、全面的に協力することにした。
もしユウヤが平民の男子とかに生まれ変わってたら、ハヤトとは性別以前に身分違いになるけど、この世界では平民の主人公が王子と結ばれるケースもある。
そしてハヤトは第一王子であって唯一の王子だから、王位を継がなきゃならない。
とりあえずハヤトには、王様と王妃様に「兄弟が欲しい」とお願いするように勧めようと思う。
そしたら、もしユウヤが平民の男子になってても、ハヤトが王位継承権を放棄して平民になって結ばれることも夢じゃなくなる。
…ただ、ユウヤがハヤトに対して恋愛感情を持ってたかどうかイマイチ分からなかったから、この世界で再会したとしてもハヤトの片思いになるかもしれない。
それでも私はハヤトを応援する。
そして、私の親友であるリオもこの世界に転生してることを祈って、リオのことも探し続けようと思ってる。
リオ、この世界のどこかにいる…?
レイズ(マユ)はこんな感じに前世を生きてきました。リオもこの世界に転生してたら…ってのはご都合主義的ですがw




