3-6 sideレイズ(マユ)
この世界には、前世のカフェにあったような保温カップがあるので、私たちはそれぞれ好みの紅茶をそのカップに入れて中庭に向かった。
秋の始まりの心地良い風に秋咲きの花の香りが混じって、気持ちのいい季節だ。
いつものベンチに私、ハリエット、アンリエッタの順に座り、両サイドからハリエットを挟んで話せるようにスタンバイして、アンリエッタが手作りのお菓子を差し出した。
「私の手作りで恥ずかしいのですが…」
アンリエッタが箱から取り出したのは、シフォンケーキだった。
「まぁっ…こんな見事なケーキがお手製なのですの…?」
と、ハリエットは大きく目を見開いて驚いた。
箱の中には数枚の紙ナプキンと、数本のフォークが入っていて、アンリエッタは紙ナプキンに一切れの資本ケーキを載せ、フォークを添えてハリエットに差し出した。
「お皿がないのでこんな形で申し訳ありませんが、よろしければ召し上がってください、ハリエット様」
ハリエットは大きな目をぱちぱちと何度か開閉させてから
「では…食べさせていただきます」
と、早速ケーキを食べ始めた。
「…おいしい…っ」
と、ハリエットは本当においしそうな表情でそう言った。
うん、かわいい。
「ねーねー、アンリエッタ、僕にもちょうだいよー」
と私がアンリエッタに言うと、アンリエッタは
「はいっレイズくんの大好きなふわふわシフォンケーキだよっ」
と、私にもケーキを手渡してくれた。
甘さも柔らかさも完璧…しみる~!!
と、私がシフォンケーキを堪能していると、ハリエットはケーキを食べる手を止めて言った。
「…お二人は本当に仲睦まじいのですね…」
少し淋しそうな、うらやましそうな表情だった。
なので私は
「えー?ルイスとハリエットだって婚約者なんだから、仲良くすればいいでしょ?」
とハリエットに向かって言ってみた。
ハリエットの表情が曇る。
「…私たちは…国同士の決めた婚約者ですので…」
…ん?なんか聞き出せそうな雰囲気だ。
「国同士が決めた婚約でも、ルイスはハリエットのことすごーく大切にしてるよ?親友の僕が言うんだから、間違いないよ?」
と私が言うと、
「…それは…殿下が私を大切にして下さっているのは、私にもわかっておりますが…」
ハリエットの表情がさらに曇る。
「わかってるのに、最近ルイスに冷たいのはなんで?女子たちに意地悪されたから、ルイスと仲良くするのが怖いの?」
と聞いてみた。
ハリエットは慌てたように
「そうではありません…女生徒たちに取り囲まれたことは、怖いとも何とも思ってはおりません…」
と、そう言った。
「じゃあなんで?なんでルイスに冷たくするの?」
と畳み掛けるように尋ねた私に、少しうつむいてハリエットは言った。
「…殿下といると…胸がどきどきして苦しくなるのです…」
…マジか?!
えっ?ハリエットってユウヤかもなんだよね?!
コレって、ハリエットがルイスのこと好きになってるってコトだよね?!
私は内心興奮しまくって叫びそうになった。
するとアンリエッタが
「ハリエット様は、殿下に恋をしていらっしゃるのですね?」
と、すっごく優しい笑顔でハリエットに向かってそう言った。
ハリエットは真っ赤になって
「…そう…かもしれません…」
と言って、両手で顔を覆った。
おちけつ…いや、落ち着け私。
ハヤトであるルイスは、ハリエットのことをユウヤじゃないかって思ってる。
でもユウヤかもしれないハリエットは、多分ルイスがハヤトだってことは知らない。
その状態でハリエットがルイスに恋してるってことは…???
ってか、ハリエットが完璧な淑女すぎて。
前世が男な女の子じゃなくて、ただ普通の女の子がルイスに恋してるような感じじゃん?!
ルイスはハリエットのこと、ユウヤかもって言ってるけど…
ホントにハリエット、ユウヤなの…?
アンリエッタが頼もしすぎるwゲーム開始時の暴走が終わったので、ちゃんとアンリエッタとしての役目を果たすようになったリオは、内心暴走しがちなマユの良いサポート役になるでしょうw




