3-3 sideレイズ(マユ)
「それで?それで?なんでルイス×ルードの可能性が出てきたの?」
アンリエッタ(リオ)が身を乗り出して聞いてきた。
前世以来久しぶりのリオの美味しい手作りクッキーを味わいながら、私はちょっと考えた。
アンリエッタに、ルイスがハヤトだっていうのを今伝えるのはどうなのかな?と。
ルイスはルイスで、自分がハヤトだっていうことは、アンリエッタには自分の口から伝えたいかもしれない。
ここまで二秒で考えて、私は答えた。
「どうもね、ルードがルイスのこと憎からず思ってるっぽいんだよね」
「えっ?!それって、傍から見ててわかったの?」
アンリエッタがそう言うので、
「ううん、ルードが自分でそんな感じのこと言ったんだよ」
と答えると、アンリエッタは悶絶した。
「…尊い…尊死する…っ」
うん、リオらしい反応だ。
「ルイスは?ルイスの方は脈ありそうなの?」
アンリエッタはわくわくが止まらないといった様子で尋ねてきた。
「ルイスはハリエットをすごく大切にしてるよ」
と私が答えると、アンリエッタは
「ああ~…そこはゲーム通りなんだぁ」
と残念そうに言った。
まあゲーム通りであってゲーム通りじゃないんだけどね…と心の中で私は笑った。
ルイスがハヤトなのを黙ってる以上、ハリエットがユウヤかもしれないってことも言えないから。
全部ばらしたら、アンリエッタはどんな反応をするのか今から楽しみだ。
だが、レイズが私だと明かしたからには、今すべき話はハヤトやユウヤのことじゃない。
「アンリエッタ…リオはレイズ…私を選ぶんだよね?」
と、アンリエッタに聞くと
「うん、もちろん!」
と彼女は強くうなずいた。
「だったら…この先どうする?」
私はちょっと真面目な顔で尋ねた。
「え?どうするって…」
不思議そうな顔をして首をかしげるアンリエッタに私は言った。
「表向きはレイズとアンリエッタだけど、中身は私とリオなんだよ?恋人になって、いつかは結婚して…その先は?子供とか作れる?」
アンリエッタは大きく目を見開いた。
「そっか…そういうことになるんだよね…」
さっきまで楽しそうにしていたアンリエッタは、ふっと真面目な顔になって考え込んだ。
そして、自分が作ってきたクッキーを貪り食い始めた。
考え事をするときのリオの癖だ。
ひたすらスイーツを貪り食いながら…糖分を脳に送り込みながら考えるんだ。
そうして何枚かのクッキーを食べた後、アンリエッタは言った。
「…ねえ、レイズくんってマッコール公爵家の次男だよね?」
ん?さんざん考えた末に出てきたのは、今さらな設定確認なの?と思ったら、
「だったら…長男じゃないなら跡継ぎのこととか気にしなくていいんだよね?子作りなんてしなくてもいいんだよね?」
…目からウロコだった。
確かにそうだ。
マッコール公爵家には私の兄である長男がいるので、公爵家を継ぐのは兄だ。
マッコール家には他に継げる爵位もあるから、私…レイズはそちらを継ぐことになる。
「そうだ…そうだよ、私は跡継ぎなんて作らなくていいんだ…」
私がそう言うと、アンリエッタはにっこりと笑った。
「だったら、子供なんていなくてもずぅっと仲良しの夫婦でいればいいじゃん!それで、二人で色んな萌え妄想とか語りながら、楽しく暮らせばそれがハッピーエンドでしょ?」
リオらしいアンリエッタの言葉に、私はふっと笑った。
「レイズルートをクリアしたアンリエッタは、レイズと幸せに暮らしました…っていうハッピーエンド?」
アンリエッタは笑ってうなずいた。
私たちのストーリーは決まった。
アンリエッタはレイズと結ばれて、ハッピーエンド。
私たちらしい結末…そして、未来だ。
腐女子同士でも百合にはならないようですw




