9-14 sideハリエット(ユウヤ)
父が色々とごねましたが、何とかお話は治まり、その上殿下がしばらくわが国にご滞在下さることになりました。
なので私は殿下を我が国の城下町などにご案内することにいたしました。
「殿下、道中で我が国をご覧になられましたか?」
と殿下にお尋ねすると、殿下は
「ああ。ハリエットが我が国に来てくれた時と同じく、店先に並ぶ品々などが全く違うことに驚いたよ」
と笑って仰いました。
さすが殿下、そういったことにも目を向けて下さっていたのですね。
そして
「わが国では高級品であるリンゴやナシなどが安く売られていたな…」
と仰いました。
「そうなのです。クロス王国での高級品は我が国では安価で、我が国での高級品はクロス王国では安価で売られているのです」
と私が申し上げると、
「両国のきずながより深まった暁には、両国国民がどちらの国の特産品も安く手に入れられるようになるといいなぁ」
殿下はそう仰いました。
「私もそう願っていますわ」
と私が笑いかけると、殿下も
「うん。二人でそうやって民の生活を楽に…幸せにしていこうな」
と微笑まれました。
ああ…本当に殿下は…ハヤトだった頃もクラスの皆が楽しく過ごせるようにと、学園祭などでも気を使っていらっしゃいましたが、王太子殿下となった今も、皆が楽しく幸せに暮らせるようにとお考えなのですね…
私はとても幸せな気持ちになりました。
我が国の民の生活を見てみたいと殿下が仰ったので、私たちは馬車で城下町に行ってみることになりました。
私たちは王族に見えない程度…平民のお金持ち程度に見えるような恰好をして、お忍びで城下町に降りました。
沢山のお店が立ち並ぶ大通りを二人で歩きましたが、当然少し離れた所に護衛の方々が控えてくれておりました。
殿下はきょろきょろと店先をご覧になり、果物などを取り扱っているお店で店主に向かって
「よう、おれはクロス王国から来たんだけど、クロス王国では高級品のリンゴが安いな」
と申されました。
すると店主は
「おっ、そうなのかい?クロス王国ではリンゴはどのぐらいの値で売られてんだい?」
と殿下に尋ねました。
殿下は
「この倍はするな」
と仰い、店主はたいそう驚きました。
「えっ?!クロス王国ではリンゴはそんなに高いのかい?」
店主の言葉に
「そうなんだ。リンゴはクロス王国では高級品なんだよ」
殿下はそう仰いました。
店主は
「はー…それって関税とかいうやつのせいかね?」
と言い、殿下も
「そうだな。国と国の間を通るだけで税金が取られるんだよなぁ」
とため息をつきながら仰いました。
「だよなぁ、俺らにはなんの儲けにもならないのになぁ」
店主がそう言うのに対して、
「多少の関税は仕方ないにしても、リンゴやナシが倍になるってのはちょっと高すぎるよな」
殿下はそう仰いました。
私はいてもたってもいられず、
「でもっ!オットーバッハ王国とクロス王国との婚姻がうまくゆけば、そういったことも何とかなるはずですわ…!」
と、つい言ってしまいました。
すると店主は
「お嬢さん…貴族の娘さんだね?」
と言い、私は”しまった”と思ったのですが、
「そうだ。彼女は身分の高いお嬢様だけど、クロス王国に留学してるんで、物価の違いとか見てきて気になったらしいんだよ」
と殿下が仰いました。
「俺としては、せめてリンゴやナシが安くなればいいなと思ってるんだけどな…」
殿下のお言葉に
「ははっ、そりゃ俺らだってそう思ってるよ。坊ちゃんはリンゴが好きかい?」
と店主は笑って言いました。
そこで殿下は
「ああ。アップルパイなんかを気軽に食べたいのに、クロス王国ではリンゴが高すぎるんだ」
とため息をつかれました。
「そりゃもう、我が国のハリエット姫様とクロス王国のルイス王太子殿下の婚姻がうまくいきゃあ何とかなるかもだけどなぁ」
店主の言葉に、殿下は
「ああ、俺たちが何とかするしかないな」
と仰いました。
店主が
「は?」
と言った所で護衛兵たちが建物の陰から出てきて
「両殿下、そろそろお戻りを」
と言い、私たちは王宮に戻らなければならなくなりました。
「え?え?」
何が何だかわからないといった体の店主に、
「俺はクロス王国王太子ルイスで、彼女はこの国の第一王女ハリエットだ」
殿下は笑ってご自身と私の身分を明かされました。
店主はがくがくと震えはじめたのですが、殿下が
「クロス王国でもリンゴを安く買えるようになりたいので、ハリエットと二人で頑張るから…待っていてほしい」
笑ってそう仰った殿下に、
「よ、よろしくお願いします!」
店主はそう言って頭を下げました。
…本当に…民のためにも私たち、頑張らなくては…と、私は改めて身の引き締まる思いがいたしました。
ハリエットが語りになると硬い文章になってしまいますね…ユウヤ成分ゼロw




