9-13 sideルイス(ハヤト)
オットーバッハ国王のとんでもない言葉に、俺は怒りを禁じえなかったが、心を落ち着かせて言った。
「…陛下、それでは陛下は我がクロス王国を侮辱し、敵に回すということですね」
オットーバッハ国王は
「…何?!なぜそのような話になる!!」
と怒鳴った。
バカじゃねーの、このオッサン。
「私とハリエットの婚約は、我が国と貴国の絆をより強固なものとするために両国間で結んだ取り決めです。それを一方的に破棄するということは、我がクロス王国を敵に回すと言っているも同然では?」
と俺が言うと、
「ぐぬっ…」
とオットーバッハ国王は言葉に詰まった。
「しかも、クロス王国の王太子である私に婿養子になれと言うなど、我が国を下に見て愚弄しているようにしか思えません。私の父も…クロス王国国王もそう思うでしょう」
さらに俺が言い募ると、
「それはっ…」
とまたオットーバッハ国王は言葉に詰まったが、まだ何か言いたそうな顔をしていた。
すると
「…お父様、いい加減にしてください!!」
とハリエットが怒鳴った。
「ハ…ハリエット…?」
国王は驚いてハリエットを見つめた。
「国同士の取り決めは絶対だと勝手に私たちの婚約を決めたくせに、私たちが仲睦まじくなれば今度は婚約破棄だのルイス殿下に婿養子になれだの自分勝手なことばかり言って…一国の国王として恥ずかしくはありませんの?!」
ハリエットは今まで出したこともないであろう大声を出して、国王を怒鳴りつけた。
「ハ…ハリエット…しかし…」
国王は眉を下げて情けない顔で弱々しく言った。
ハリエットは国王をきっとにらみつけて、
「こんな…子供のようにわがままで自分勝手な人が私の父だなんて…私は恥ずかしいですわ!!」
と言った。
国王はもう泣きそうだ。
「クロス王国の国王陛下も王妃殿下もとてもお優しく、急にクロス王宮に逗留させて頂くことになった私を温かく迎えてくださいましたわ。それに王妃殿下には、私がちゃんと…しっかりとした王女として育てられているとお褒め頂きました。それなのに、お父様がこれでは…私は本当に恥ずかしくも情けないですわ…」
ハリエットは目に涙を浮かべてそう言った。
「ハリエットォ…」
国王はマジ泣きしていた。
なので俺は
「ハリエットは我が国に留学してクロス王国の学園で様々な人々と出会い、親交を深め…親友と言える友人までできました。その日々が、今の明るく元気でかわいらしいハリエットを育てたと…私はそう思っております」
と国王に向かって言った。
「それは…その話はハリエットより聞いておる…」
国王は弱々しく言った。
「クロス王国の学園で…皆と共に学び、学園祭のために懸命に仲間たちと刺繍をし、友人同士で誕生祝をするために親友たちと…初めてケーキ作りなどをして…とても…とても楽しかった…と…」
国王はハリエットから色々と聞いていたらしい。
「わかっておる…わかっておるが…淋しかったのだ…」
また泣きそうになりながらそう言った国王に、
「はい、かわいいハリエットを他国に嫁がせるのは…遠く離れるのは、それはそれはおさびしいことでしょう」
俺はできるだけ優しい声で言った。
「その分、私は…私の友人達は、我が国は、必ずハリエットを大切にし、ハリエットと共に幸せになります。この場でそれを誓います」
俺の言葉に、ハリエットも
「ええ、必ず幸せになりますわ。私もこの場で誓いましょう」
と言ってくれた。
するとそれまで様子を見守っていた王妃が
「さあもう気が済んだでしょう?あなた?」
と国王に言った。
「まったく…子供達にわがまま言って叱られて…私も恥ずかしくて顔から火が出そうでしたわ」
呆れたようにそう言う王妃に
「うぐっ…」
国王はもうぐうの音も出ないようだった。
「もう私が国王の座についた方が良いかもしれませんね…」
ハリエットに似ているがさらに彫刻のような美しい顔をしているハリエットの兄・ヨハンが、冷たい表情でそう言った。
ハリエットの兄ちゃん怖い…と思っていると、
「すまぬ…すまなかった…ルイス王子、ハリエット…」
国王は素直に謝ってきた。
なので俺は
「私はすぐに帰国する予定でしたが、しばらくこちらに逗留させて頂いても構いませんか?」
と言ってみた。
「おおっ…!!それは良い!!しばらく我が国でゆるりと過ごすが良い!!」
と国王は喜んだ。
俺は最大のピンチを何とか切り抜けられてほっとした。
しかも、これから何日かハリエットと一緒にいられるのだ。
俺はハリエットとの日々を想像してわくわくしてきた。
入力後チェックすると、「温かく」が「暖かく」となってたりします。「あたたかく迎える」っていう文章で判断しないあたり、パソの日本語変換機能もまだまだですね…




