9-11 sideゴードン(ニシダ先生)
八月一日の俺の誕生日前に、ルイスが竹刀や剣について色々と尋ねてきた。
これは恐らく俺の誕生祝に剣をあつらえてくれるのだろうな…と思ったが、ルイスにはそれは言わずにいた。
きっと皆であれこれと、俺の誕生祝に何を贈るか考えてくれたのだ。
その結果、将来騎士となる俺には、剣を贈ったら良いだろうと決めてくれたのだろう。
かわいい生徒たちが俺のために色々と考えてくれたことが、俺は嬉しい。
ルードは俺の生徒ではなかったが、前世24歳だった俺からすれば、15歳のルードも我が生徒のようなものだ。
そんな皆が、俺の誕生日のために一生懸命考えてくれたのだと思うと、俺は本当にうれしくてたまらなかった。
ルードの誕生日には、昼間の俺たちのささやかな祝いの席の後、ルードの家でも家族が祝ってくれたそうだが、俺も夜には実家で家族が祝ってくれることになっている。
家族で祝ってくれるのはもちろんうれしいが、やはり生徒たち…友人たちから祝ってもらえるというのは格別だ。
俺は自分の誕生日がこんなにも楽しみだったことは前世でもなかった。
明日…俺の15歳の誕生日が待ち遠しくて、俺はわくわくしながら眠りについた。
15歳の誕生日の朝、俺はいつも通り早く起きて屋敷の敷地内をぐるぐると走った。
これは子供のころからの習慣だ。
ひと汗かいてシャワーを浴び、いつも通り王宮に向かおうとすると
「ゴードン、お誕生日おめでとう」
と母がそう言った。
「はっ、ありがとうございます!」
俺が笑って答えると、
「今夜はお祝いの席を設けるので、夕刻には戻るのですよ」
母はにっこりと笑って言った。
「はい!では王宮に行ってまいります!」
俺も笑って、王宮に向かう馬車に乗った。
いつもなら走って行っているのだが、それはルイスに止められた。
どうやら王宮のメイドたちに、俺を着飾らせるつもりらしい。
俺は勉強会に行く時には、必ず普段着で行っているからだろう。
そういえばレイズとルードはいつもきちんとした貴族令息らしい格好で来ている。
前世でも見た目に頓着なかった俺は、今世でも変わらず見た目に頓着ないので、誕生日位は…とルイスは思ったのだろう。
生徒に気を使わせるなど、俺は教師失格だ…と思ったが、今世では俺は教師じゃない。
いつまでも前世を引きずっているのは俺だけなのか…と俺はひとりごちて、苦笑いをした。
王宮のサロンでいつも通り勉強会をした後、俺はメイドたちに連行された。
そしてなぜかクラリアもメイドたちに連れていかれていた。
騎士らしい立派な衣装に着替えさせられた後、サロンに戻ると机の上にはいつものケーキが用意されていた。
今日はブドウのケーキだ。
ルイスとレイズとルードとアンリエッタが、にこにこと笑って俺を見ている。
クラリアは?と思っていると、メイドたちがクラリアを連れてきた。
クラリアは、クラリアの瞳のような青い布地に金糸で刺繍が施された上に青い石がちりばめられたドレスを身にまとい、青い石がはめられたイヤリングとネックレスも身に着けていた。
いつもはかわいいと思うクラリアが、装いのためかとても美しく見えたので、
「クラリア…きれいだ」
と俺は言ってしまった。
するとメイドたちが
「きゃーっ!!やったわー!!」
「クラリア様!ゴードン様がきれいだって仰いましたわよ!!」
と大騒ぎし、クラリアは真っ赤になって
「わわっ…あの、おおお誕生日おめでとうございますっ…!」
と俺に言ってくれた。
「ああ…ありがとう…!」
俺がクラリアに言うと、レイズが
「ちょっとクラリア!おめでとうはみんなで言おうって言ってたじゃん!!」
とつっこんだ。
そして皆が笑って
「ゴードン(様)、誕生日おめでとう(ございます)!!」
と言ってくれた。
「ああ…みんな、ありがとう…!!」
俺は胸が熱くなるのを感じた。
アンリエッタがクラリアと二人で作ってくれたケーキを食べながら、今日はハリエットはいないのだな…と少し残念に思ったが、ハリエットもご両親のもとに帰らねばならないので仕方がない。
そこでルイスが
「これは俺たちからのプレゼントだ」
と、ヘイワード家の家紋が柄と鞘に刻まれた剣を差し出してきた。
「おおっ!ありがとう!騎士団入団後に使う鉄の剣か?」
と俺が言うと、ルイスが
「いや、はがねの剣だ」
とそう言った。
「はがねの剣?!ド○クエ…?!」
と俺がついそう言ってしまうと、ルードが
「○ラクエとはなんだ…?」
といぶかしげに尋ねてきた。
しまった!と思ったらルイスが
「とある剣豪の伝説の剣のようだ…ということだ」
とルードに言った。
よかった、ごまかしてくれた。
ルイスは俺にこそっと
「…ドラク○知ってるのか?」
と聞いてきたので、
「ああ。あれだけは結構やりこんだ」
と答えた。
「なるほどな…」
とルイスが言ったのだが、クラリアも
「ドラ○エの…!!」
と小さな声を上げて、瞳を輝かせた。
前世喪女だったクラリアだが、どうやらこういう話も合いそうだ。
「クラリア、その話はまた今度ゆっくりとしような」
俺が言うと、
「は、はいっ…!」
とクラリアは笑った。
仲の良い夫婦になれそうだ…と俺はそう思った。
珍しく一話二千文字を越えました。なんでこの話だけ…?と自分でも不思議ですw




