9-8 sideルイス(ハヤト)
ルードの誕生日が終わり、次は八月一日のゴードンの誕生日だ…と思っていると、ハリエットが
「私はそろそろ国に戻らなくてはなりませんわ…」
と言った。
そうだった。
ルードの誕生祝をしてから帰国するという約束をしていたんだ。
俺は慌てて
「いやっ、ゴードンの誕生日も目前だぞ?」
とハリエットに言ったのだが、
「戻ってくるようにと、父と母から手紙が来ましたの…」
ハリエットはしょんぼりと言った。
そして
「本当に残念ですが、ゴードン様のお誕生祝には私は参加できませんわ…」
と、本当に残念そうに言った。
俺たちの婚約は、クロス王国とオットーバッハ王国の絆をより強固なものにするための大切な取り決めだ。
俺たちの私的な理由でこれ以上ハリエットの帰国を遅らせるわけにはいかないだろう。
「でも、アンリエッタ様のお誕生日にはこちらに戻って来られると思いますわ。九月一日からは新年度が始まりますもの」
と、ハリエットはそう言った。
「そうだな。ならハリエットの誕生祝もこちらでできるだろう」
俺は気を取り直して言った。
「はい、うれしゅうございますわ」
ハリエットはにっこり笑った。
ルードの誕生日の二日後、七月二十三日にハリエットは帰国の途についた。
「殿下っ…お手紙を差し上げますわ…!!」
動き出した馬車の窓から顔を出して、ハリエットは少し大きめの声で言ってくれた。
「俺もっ…俺も手紙を送るからっ…!!」
俺もハリエットに答えて、大きく手を振った。
ハリエットの馬車が見えなくなるまで、俺はハリエットを見送った。
…淋しすぎる…
俺は意気消沈したまま、王宮に戻った。
すると、ハリエットづきだったメイドたちが泣いていた。
「ハリエット様…」
「私たちのハリエット様がっ…」
お前らのハリエットじゃねーよ。
すっかりメイドたちの人気者になってしまったハリエットがいなくなったせいで、メイドたちは本気でがっかりしていた。
なので俺はちょっと思いついたことを言ってみた。
「八月一日には王宮でゴードンの誕生祝をするつもりなので、ゴードンの騎士らしい衣装を準備しておいてくれ」
俺の言葉に
「はあ…さようでございますか…」
メイド頭の興味なさそうな言い方に俺は呆れたが、まあゴードンを着飾らせるだけなら、ハリエットを着せ替え人形にしていたこいつらにはどうでもいいことだろう。
それは俺にも理解できる。
「でな、ゴードンの衣装も準備しておいてほしいんだが、ゴードンの婚約者のクラリアも、ゴードンの誕生祝の席にふさわしいよう、美しく仕立て上げてほしいのだ」
俺がそう言うと、メイドたちの目がきらーんと光った。
「クラリア様…レイナード伯爵家ご長女でございますわね?」
メイド頭がそう返してきた。
「ハリエット様ほどではございませんが、クラリア様も金髪碧眼の、かなりの美少女ですわね…」
「たしかに…!着飾らせ甲斐がありそうですわ…!」
メイドたちの目に力が戻ってきた。
なので俺が
「ゴードンにクラリアの魅力をこれでもかと思い知らせられるぐらいに、クラリアを仕立てあげてくれ」
と言うと、
「仰せのままに!!」
メイドたちは声を揃えて叫んだ。
良かった。
メイドたちが元気を取り戻したので、俺は安心した。
こいつらのために我慢してくれクラリア…
そして俺は、早速クラリアを王宮に呼びつけた。
「おおお王太子殿下っ…わわ私に何かご用でございますかっ…?」
噛みながらおどおどとクラリアがそう言うので、
「ゴードンの誕生祝に、クラリアを目一杯着飾らせてくれるようにとメイドたちに頼んだのだ」
と俺は言った。
「ゴゴゴゴードン様のお誕生日と申しますと…はっ八月一日でございますよね…?ななっなんでこんな早くから…???」
と、また噛みながらクラリアが言うので、
「どんなドレスやアクセサリーが良いか、うちのメイドたちが色々考えてくれるそうだ。なので彼女たちにつきあってやってくれないか?」
と言うと、
「そ、そんな…私ごとき喪女がっそそそんなぜいたくな…」
クラリアは慌てふためいたが、すでにメイドたちが準備を整えていた。
「さあ!クラリア様!こちらへ!!」
メイド頭を筆頭に、メイドたちは目を輝かせてクラリアを引きずって行った。
「ひっひええええええ!!」
クラリアの悲痛な叫びを聞きながら、俺は
「すまん、人身御供になってくれ…」
とつぶやいた。
下書きは昨夜ラストまで終わりました~。第10章16話で終わりますので、もうしばらくお付き合いくだされば幸いです~




