9-2 sideルイス(ハヤト)
サロンの入り口で固まってしまっているシモンに、俺は声をかけた。
「ルードは伯爵家の人間だからな。そろそろ婚約者がいてもおかしくないぞ」
「は、はい…」
シモンはうつむいたまま、小さな声で答えた。
「お前もあと三年もすれば見合いをして婚約者を決めることになるだろう」
俺が言うと
「は、はい…」
またシモンはうつむいて小さな声で答えた。
レイズが何かに勘付いたようで、
「シモンはルードのことが好きなの?」
とシモンに笑いかけた。
それに対してもシモンは
「は、はい…」
と答えた。
マジかよ。
「ふーん、”兄上ぇ、兄上ぇ!!”って俺について回ってたお前が、今度はルードを好きになったのかー?」
と俺がからかうと、
「兄上のことは永遠に大好きです…でも、兄上は兄上なので…」
とシモンは言った。
するとアンリエッタが
「恐れながら…シモン様。ルイス殿下とハリエット様、ゴードン様とクラリア様…そしてレイズ様と私のように、お互いが好きで婚約する者ばかりではございません。お家同士の取り決めで形式的に婚約するという方の方が、貴族などでは多いと存じますわ」
とシモンに言った。
「う…うん…?」
シモンが首をかしげながらもうなずくと、
「なので家同士の取り決めでの婚約者がいても、心の恋人のようなお相手への想いをひそかに持ち続けても良いのでは…と、私はそう思うのです」
とアンリエッタがそう言った。
あっ…こいつ、ルード×シモンを成立させようとしてやがる。
アンリエッタに文句を言おうとすると
「じゃあ…婚約者がいても、ルード様をお慕いしててもいいの…?」
とシモンが言った。
俺はもう知らん。
「はい、さようでございますわ」
シモンの言葉に、アンリエッタはにっこりと笑った。
「ただし、ご婚約より先にルード様と想いを通じさせることが大切ですわ」
アンリエッタはそう続けた。
「お二人がそれぞれどこかのご令嬢とご婚約なさってから恋人になられましたら、それは浮気ということになってしまうかもしれませんもの」
アンリエッタの言葉にシモンは考え込んだ。
そして
「…ねぇ、アンリエッタさん…もし僕がルード様に好きって言って…恋人になってって言ったら…恋人になれると思う…?」
シモンはアンリエッタに尋ねた。
アンリエッタは
「先月のレイズ様のお誕生祝の席でのルード様のご様子から察しますに、シモン様とルード様が恋仲になれる可能性は高いと思いますわ」
と微笑んだ。
…悪魔の笑みだ…
またしばらく考え込んだ後、シモンは
「僕…僕…頑張ってみる。アンリエッタさん、応援してくれる…?」
と上目使いでアンリエッタに言った。
「えぇ、えぇ、もちろんでございますわ!」
アンリエッタがそう言うと、
「僕も応援しちゃうよー!」
レイズもにかっと笑った。
こいつらマジでルード×シモンルート作ろうとしてやがる…
俺がため息をつくと、
「じゃあっ!ルード様がいらっしゃる時にまた僕も仲間に入れてね!」
俺のため息に気づかず、シモンは明るく笑った。
シモンがサロンを出て行った後、レイズとアンリエッタはお互いの右手のひらと左手のひらをぱちんと合わせて
「やったね!」
「ええ、来年の小冊子こそルード様を幸せにいたしましょうね!」
と笑い合った。
この世界でも何が何でも腐女子として楽しもうとするレイズとアンリエッタ…マユとリオに、俺は本気で頭が痛くなった。
やっぱり己の欲求に素直なマユとリオの腐女子コンビは書いてて楽しいですね~w




