8-11 sideルイス(ハヤト)
六月十九日のレイズの誕生日が終わり、いよいよ一年も終わりに近づいた。
国立クロス学園は六月いっぱいで授業は終わり、七月八月は夏休みになる。
ルードの誕生日は七月二十一日なので、夏休みど真ん中に近い。
「ルード、夏休みは実家に戻るんだろ?何か特別な予定はあるのか?」
と俺が尋ねると、ルードは
「いいえ、今の所特に予定は入っておりません」
と答えた。
「ですが…夏休みの間に見合いを何度かさせようと父が計画しているようです」
ルードはため息混じりにそう言った。
「えっ?そうなのか?」
俺が聞くとルードは
「はい。兄にはとうに婚約者がおりますし、私もそろそろ…ということらしいのです」
そう言った。
ルードの誕生祝をどうすべきか、レイズたちと話し合い始めていたので、
「誕生日前後はあけておいてくれよ」
と俺はルードに言った。
「はっ…!かしこまりました!」
ルードはちょっとだけうれしそうな顔をして言った。
普段大真面目で堅苦しい奴だけど、やっぱりルードもこういうのはうれしいんだな…
ルードもかわいい所があるんだなと、俺はほほえましく感じた。
夏休み前には、学年末の試験が控えていた。
国立クロス学園では、歴史と社会学と国語と数学が男女共通で、男子はこれに加えて剣術、女子はお裁縫を学んでいる。
座学はどれも前世の中学生程度で簡単だが、男子の剣術と女子のお裁縫は実技なので、人によっては苦手科目だろう。
前世で剣道をやっていたゴードンにとって剣術は超得意科目で、ルードや俺も入学前から教師を雇ってかなり真剣に稽古をしていたので、特に不得手ではなかった。
が、レイズは実家にいた頃にあまり真剣に剣術を習っていなかったようで、剣術は不得意科目だった。
なので俺たちはレイズのために放課後に剣術の稽古をつけることになった。
「ねぇ、剣術とかって、今どき必要なのー?」
レイズはだるそうに不満を漏らした。
「戦争とかないのにさー、剣術、いる?」
不満たらたらだ。
「男子の必修科目なんだから仕方ないだろ?」
と俺が言うと、
「えー…そんなの誰が決めたのー?」
レイズはぶーぶー言って頬を膨らませた。
仕方なく俺は
「…試験で及第点を取れなかったら、夏休み補習だぞ」
と、夏休みを盾にした。
「あーもう…はいはい、やりますよー」
レイズは本気でめんどくさそうに言った。
だが、いざゴードンに稽古をつけてもらうと、意外にもレイズは強かった。
というか、身軽にひょいひょいと攻撃を避けるので、ゴードンの攻撃が当たらない。
前世で剣道一直線だったゴードンは”不真面目だ”と怒るかと思っていたが、
「ほお、なかなかやるな」
と楽しそうに言っていた。
それでもしまいにはゴードンがレイズの剣を弾き飛ばし、決着はついた。
「もー、ゴードン強いよ~」
レイズは情けない声で言ったが、ゴードンは
「いや。俺相手にここまで粘れるなら、試験も大丈夫だろう」
と、そう言った。
そしてゴードンの言葉通り、剣術の試験でレイズは教師から合格点をもらい、無事に学年末試験を終えた。
「ひゃっほー!!これで夏休みは自由の身だねっ!」
浮かれまくるレイズに、俺は苦笑いするしかなかった。
学年末試験が終わった翌日には終業式が執り行われ、夏休み中の注意を教師から受けて、学園は夏休みに入ることになった。
俺たち寮生は、寮を出てそれぞれ実家に戻る。
…ん?
実家に戻る…ということは…と考えていると、
「殿下、しばしのお別れですわね…」
とハリエットが言った。
「えっ…二ヶ月…二ヶ月も会えないのか…っ?!」
俺の言葉にハリエットもしょんぼりとして
「…お手紙を書きますわ…」
と言った。
仕方ない…仕方ないとはわかっているが…
夏休みなんてキライだ…と、俺はがっくりと肩を落とした。
戦争もないような世界で剣術が必要なのは、多分犯罪者対策とかそんな感じなのではないか…と思います。中高の体育の授業で男子は柔道とか剣道やってましたし。




