8-7 sideルイス(ハヤト)
ゴードンからクラリアとの婚約が正式に決まったとの報告を受け、俺は安心した。
レイナード伯爵がクラリアとレイズの兄との縁談をマッコール公爵に打診していたという話をレイズから聞いていたので、俺は心配していた。
ゴードンによれば、ゴードンの父ヘイワード子爵が、レイナード伯爵にうまいこと言って、ゴードンとクラリアの婚約を決めてくれたそうだ。
ゴードンの父は騎士団長で、脳筋タイプだと思っていたので、ちょっと意外な感じがした。
それをゴードンに言うと、
「実は俺も驚いたが、知略というよりは嫌がらせの力技っぽかったぞ」
とゴードンは言った。
それでもとにかく、ゴードンとクラリアが婚約に至ったのはめでたいことだ。
なので俺が
「レイズとアンリエッタ、ゴードンとクラリアの婚約がうまくいったなら、何かお祝いをしないとな」
と言ったのだが、ゴードンは
「それはまた、婚約発表をしてからにしよう。今はそれより…」
とそこまで言って言葉を切った。
言いかけて止めるなんて、ゴードンらしくない。
「なんだ?それより大事なことがあるのか?」
と尋ねたが、ゴードンは
「まあな」
と言葉を濁した。
ゴードンのやつ、なんなんだ?と思っていたが、ゴードン以外の皆の態度もちょっとおかしい。
「ハリエット、寮に帰ろう」
とハリエットをいつも通りに誘ったが、
「申し訳ございません。私、アンリエッタ様とのお約束がございまして…」
と断られた。
「そうか。楽しんでおいで」
と見送ると、ハリエットはアンリエッタと一緒に小走りで校舎を出て行った。
学園内ではなくアンリエッタの家に行くのか?と俺は不思議に思った。
が、女子同士の楽しみなどもあるのだろうと思い、気にしないことにした。
仕方なくひとりで寮に戻ろうとしていると、珍しくレイズとルードが何やら二人で話していたので、
「よお。お前たちが二人でいるのは珍しいな」
と俺が声をかけると、レイズは
「うんっこれからルードとちょっと出かけてくるね~」
と言い、ルードは俺に礼をして、そうして二人で行ってしまった。
二人が歩いて行った先にはゴードンがいて、三人で校門を出て行った。
「なんだよ…俺だけ仲間外れかよ…」
我ながら情けない、淋しそうな声でつぶやいてしまった。
俺にとってあいつらは大事な友達だけど、俺は王子だから…あいつらにとってはホントの友達ってわけじゃないのかもしれない。
こんなことですねるなんて俺もまだまだガキだよなー…前世じゃ17歳だったけど、今世じゃまだ14のガキだし仕方ないのかな…あぁ、もうすぐ…明日には15になるんだっけ…
などと考えつつ、俺はひとりで寮に戻った。
翌朝はいつも通りに寮の入り口でハリエットと待ち合わせをして登校した。
いつも通りのハリエットに、俺は安心した。
「おはよールイス」
「おはよう」
「おはようございます」
レイズもゴードンもルードも、いつも通りだ。
みんな昨日は俺抜きで何してたんだろうな…と沈む心を抑えて、俺もいつも通り
「ああ、おはよう」
と挨拶をした。
いつも通りに授業を受け、いつも通りに昼食を取り、いつも通りに中庭で紅茶を…と思ってたら、アンリエッタが
「申し訳ありません。私ちょっと実家に帰ってきます。すぐに戻りますので」
と言って走って行った。
珍しい…というか、昼休みにアンリエッタが家に帰るのは初めてなのでちょっと気になった。
「アンリエッタ、実家で何かあったのか?」
とレイズに尋ねると、
「大丈夫だよ!ちょっとした用事なだけですぐに戻るからさ」
レイズは笑ってそう言った。
レイズが大丈夫って言うなら大丈夫か…と思っていると、ホントにすぐにアンリエッタは戻ってきた。
ちょっと大きめの箱を大事そうに抱えて。
そしてなぜか全員が顔を見合わせてうなずきあって、
「ルイス(殿下)、お誕生日おめでとう(ございます)!!」
と、大きな声でそう言った。
「は…え…?」
と俺が困惑していると、アンリエッタが箱を開けて、大きなケーキを取り出した。
「昨日の夕方、ハリエット様とクラリア様と一緒に作りましたの」
まさか…誕生祝のケーキ…か…?
そしてレイズが
「これは僕たち三人から!」
と小さな箱を俺に差し出した。
開けてみると、見事な細工のナイフが入っていた。
「昨日三人で店に行って買ったものだから、特注品などではないが、良い品だぞ」
ゴードンがそう言って笑った。
俺の誕生祝のためにみんな準備してくれてたのか…と、俺は胸が、目頭が熱くなるのを感じた。
「脳筋」が一発変換できないと知りました…新しい言葉だからですかね…?でももう覚えてくれたみたいなので次からは大丈夫でしょうw




