8-5 sideゴードン(ニシダ先生)
この世界では一月から十二月の十二か月で一年、各月の日数も前世の世界とほぼ同じだが、年度の始まりは九月なので、年齢の数え方もそれに準ずる。
国立クロス学園に入学するのは、その年の九月から翌年の八月末までに15歳になる者なので、五月になった今、満15歳になっている者は一年生の生徒の約半数だ。
ルイスは五月生まれ、レイズは六月生まれ、ルードは七月生まれでハリエットとアンリエッタと俺が八月生まれ…と、俺たちはこの順番で15歳の誕生日を迎えるが、クラリアは一学年上で春生まれなので、すでに16歳になっている。
今月…五月半ば生まれのルイスが誕生日を迎えるに当たり、俺たちはルイスの誕生祝をしようと計画を立てていた。
王宮でルイスの生誕祝いパーティをしようと王家で計画をしていたらしいが、ルイスが
「まだ私はクロス学園の一学生なので」
と断ったため、パーティがなくなってしまったからだ。
なので俺たち仲間内でだけでも誕生日を祝おうと思い、何を贈るかの話し合いを始めていた。
授業が終わり、いつもの部屋に行こうとしていると、
「大変だよっ!!」
レイズが血相を変えて俺の方に走ってきた。
「ん?どうした?何かあったのか?」
と尋ねると、
「僕の兄上とクラリアの縁談が持ち上がってるんだって!!」
レイズはそう言った。
「それは一体…どういうことだ?」
俺が問うとレイズは
「どうやらレイナード伯爵は僕んち…マッコール公爵家との縁が切れたのが惜しかったらしくてさ、僕がダメなら兄上は?って打診してきたみたい」
と苦い顔をして答えた。
予想外…とは言えないだろう。
貴族同士なら、より良い家柄の者同士を結婚させようとするのは当然だ。
レイズとクラリアの縁談は王命によって白紙に戻されたが、レイナード伯爵家からすれば、それは諦めきれない良縁だっただろう。
「どうすんの?ゴードン!」
レイズは辛そうな顔で俺にそう言った。
レイズはきっと、自分とアンリエッタのせいではないかと責任を感じているのだろう。
「心配するな。まずはクラリアと話をしてくる」
俺は笑ってレイズの頭にぽんと手を置き、クラリアの元へと向かった。
二年1クラスに向かっていると、
「あら、ゴードン様。クラリア様はまだ教室にいらっしゃいますわよ」
クラリアのクラスの女子らしい子が俺にそう言った。
「そうか、ありがとう」
と礼を言い、クラリアのクラスに言って教室を覗くと、クラリアは友人らしい女生徒と何やら笑って話をしていた。
クラリアにも同じクラスで友人が出来たようで良かった…と俺は安心した。
「クラリア様、お迎えですわよ。ごきげんよう、また明日」
クラリアと話していた女生徒が俺に気づいてクラリアに言うと、
「ありがとうございます。ごきげんよう、また明日」
挨拶を交わしてから、クラリアは俺の方に小走りでやってきた。
「ゴードン様、今日は殿下たちとの集まりはないのですか?」
とクラリアが尋ねてきたので、
「クラリアに急用ができたので迎えに来たのだ」
と言い、俺はクラリアをつれて中庭に向かった。
中庭のベンチに座り、俺はおもむろに切り出した。
「クラリア、レイズの兄上と君との縁談が持ち上がっているそうなのだが、何か聞いていないか?」
「…え…えええっ?!」
クラリアは驚いて声を上げた。
「そっ…そんな…そのようなお話は…私は何も…っ」
青い顔で言葉に詰まるクラリアに、
「レイズから聞いたので、確かな情報のようだ」
と俺は言った。
「わっ…私…私がレイズ様との婚約を望んだせいでっ…」
泣きそうなクラリアに、俺は
「…大丈夫だ」
と言うしかなかった。
クラリアがはっとしたように
「あのっ…ルイス殿下にお願いすれば…!」
と言ったが、
「大丈夫。俺がレイナード伯爵に話をしよう」
と言って、俺はクラリアに向かってうなずいた。
ルイスに頼めば間違いなく破談にしてくれるだろう。
だが、ルイスに頼るわけにはいかない。
ルイスは前世では俺の生徒で、俺は先生だったのだから。
転生して同い年になっても、やっぱり先生として生きてきた日々が抜けないゴードン。こんなゴードンを書くのも楽しいです。




