10 sideルイス(ハヤト)
俺は13歳になった。
この世界に転生して13年、前世での友達だったレイズ(マユ)と一緒にユウヤとリオを探し始めて十年が過ぎ、その間に弟であり前世で同じクラスだったユウキが生まれてきたが、レイズによるとそろそろルイスとハリエットの婚約が成されるらしい。
ある日父王から
「隣国のオットーバッハの第一王女との婚約話が進んでいる」
と言われ、ああその日がやってきたのか…と少々憂鬱な気分になった。
いまだにユウヤが見つかっていないのに、ゲーム内と同じく隣国の王女と婚約しなければならないんだ。
俺が浮かない顔をしていると、
「ハリエット王女は大層美しいそうだぞ。そして穏やかで心優しいとのことだ。心配はいらない」
と父王はそう言ったが、俺は別に王女に不満があって浮かない顔をしているわけじゃない。
そんなことを父王に言う訳にもいかず、ただ
「そうですか、お会いできるのが楽しみです」
と社交辞令的に返すのがやっとだった。
そして約一か月後、ハリエットと面会する日がやってきた。
とりあえず二人きりでお茶会をして、色々と話をしてみろということだ。
これって前世で言う所のお見合いみたいなもんなのかな…と俺はうんざりした。
高校生の頃は気楽に色々な話をしてすぐに友達が出来たが、お見合いともなればそういうわけにはいかないだろう。
「ご趣味は?」とかそんな感じのかしこまった話をするなんて、考えただけで憂鬱だ。
心の中でため息をついていると、
「オットーバッハ王国第一王女、ハリエット様ご来訪でございます」
と侍従長から言葉があった。
そして、ゲームの中で見た通りのかわいらしい少女が俺の前に立った。
「初めてお目にかかります。オットーバッハ王国第一王女・ハリエットと申します」
背中まで伸びたふんわりとした金の髪に若草色の大きな瞳の彼女は、貴族らしい完璧な礼をして俺に挨拶をしてきた。
「初めてお目にかかります。クロス王国第一王子・ルイスと申します」
と、俺も完璧な礼をして彼女に挨拶をした。
それから二人で同じ卓に着き、メイドが淹れたお茶を飲みながら話し始めた。
まずは俺から話を振れと父王から言われていたので、とりあえず
「我がクロス王国の街道を通って来られて、我が国の様子をご覧になったのですよね。如何でしたか?」
と適当な話題で話し始めた。
するとハリエットは
「はい、我が国よりもやや南に位置しているためか、気候が温暖だと感じました。そのためなのか、街道沿いのお店に並ぶ果物や野菜も我が国とは少々異なっているようでした」
と、いかにも王女らしいしっかりとした受け答えをしてきた。
それに対して俺は
「そうですか。ハリエット王女のお気に召したなら良いのですが…」
と返したのだが、それに対する彼女の答えは
「そうですね、いずれ嫁ぐことになると思いますので、この国の良い所をもっと見つけることができれば良いなと思います」
…だった。
完ぺきな王女だ。
これはゲームのキャラのままで、転生してきたという感じはしないな…と、ちょっと俺はがっかりした。
もしかしたらハリエットがユウヤじゃないのかなんて、ちょっとだけ期待してたからだ。
俺の勉学の話や剣術の稽古の話、ハリエットの習い事の話などをして、小一時間でお茶会(お見合い)は終わった。
ハリエットは終始口元に優雅な笑みを浮かべていて、本当に完璧な王女…淑女だった。
俺は俺で、完璧な王子に見えるようにふるまっていたので、前世の俺らしい言動は全く見せなかった。
つまりは上っ面の会話だったわけだ。
俺はもし、主人公である少女と出会ったとしても、そちらに気持ちを揺らすことはない。
そんなことをしたらこのハリエットが悪役令嬢になってしまうのだから。
とはいえ、ハリエットを婚約者としてずっと大切にしていったら、いずれ結婚ということになる。
もしもこの世界でユウヤを見つけられなかったら、俺はこのまま流されていくんだろうか?
いや、まだわからない。
来年から通うことになる学園で、ユウヤに出会えるかもしれないんだから。
色々と思いを巡らせながら、俺はハリエットの馬車を見送った。
白い本体に金の飾りのついた豪奢な四頭立ての馬車に乗って、ハリエットは帰国していった。
あちらの王都からこちらの王都まで、馬車で一週間ぐらいかかるらしい。
飛行機ならあっという間なのにな…と思うぐらいには、俺はまだまだ前世感覚だ。
来年にはハリエットはまたこの国に来て、学園の貴族用の寮に入り、そこから学園に通うとのことだ。
まだ先の話のようでいて、もうすぐそこだろう。
神様どうか、学園でユウヤに会えますように…!
…と祈るしかない俺だった。
ルイス(ハヤト)、お前気づかないのか…とツッコみを入れつつ書きましたw




