1 sideハヤト
俺はハヤト。
ごく普通の高校の二年生だった。
クラス内ではそれなりのポジション、見た目は中の上(自分的に)で成績は上の下。
それなりにたくさんの友達がいて、それなりに楽しい日々を送っていた。
特に仲のいいのは男一人と女二人で、まあいわゆるカースト上位に当たるメンバーだった。
このクラスで面白いのは、カースト上位にオタク系が入っていたところだろう。
カースト上位グループの女二人はいずれも腐女子だが、勉強もスポーツもそれなりにできて容姿も良く、性格的にも明るくてつきあいやすいため、カースト上位に入っていた。
俺含む男二人はややオタク系で、腐女子たちとは乙女ゲームなどでも話ができたが、他の女子たちとも普通に流行の音楽などでも話が盛り上がった。
そんな俺たちカースト上位グループの中に、俺の好きなやつがいた。
それはユウヤ(男)だ。
ユウヤはかなりのイケメンで成績も俺より上。
しかも本当に優しくて穏やかで、その上しっかりした芯のあるやつだった。
ユウヤはイケメンだが俺から見るととてもかわいい。
もちろん男なので女っぽいかわいさではない。
特に色白なわけでもないし華奢なわけでもない。
笑うと大き目な目がくしゃっと細くなるのがなんとも言えないほどかわいくて、ユウヤが笑うたびに俺は抱きしめたくなってしまった。
そして思わず告白してしまいそうなぐらいなのだが、それをこらえて日々を暮らしていた。
告白したくてもできない日々に悶々としつつ暮らしていたが、もう少しで学年が変わるという時期の修学旅行に思い切って告白しようと考えていた。
バスで夜中に移動してスキー学習という形での修学旅行だったので、バスの中で俺たちグループは女子たちおすすめの乙女ゲームで盛り上がっていた。
「ハヤトならどの攻略対象にする?」
と腐女子の一人・マユが聞いてきたので、俺は答えた。
「そうだな~…俺ならこのちょっとかわいい系かな?」
かわいくて甘え上手なタイプのキャラを指すと、ユウヤが
「俺が女の子だったら、がっちりしてて強そうなこいつかなぁ」
と言った。
そうか、ユウヤは男ならこういうタイプが好きなのか…とちょっと残念だった。
俺はがっちりもしてないし強そうでもない、やや優男っぽいタイプだったからだ。
こりゃユウヤに告白してもダメかもしれないな…と思いつつ、それでも修学旅行最終日に告白すると決めていた。
「おーい、そろそろみんな寝ろよ」
と担任が言うので、はいはいと二つ返事をして寝ることにした。
「おやすみ、ハヤト」
と隣の席のユウヤが言ってくれたので、俺も
「うん、おやすみ、ユウヤ」
と言葉を返して毛布をかぶって目を閉じた。
が、俺たちがスキー学習をするゲレンデに着くことはなかった。
夜間走行中のバスが事故を起こしてしまったからだ。
全身が痛むけれど、俺は必死で隣のユウヤに手を伸ばした。
「ユウヤ、ユウヤ…大丈夫か…」
けれどユウヤから返事はなかった。
俺も、だんだん意識が薄れていって、そのまま力尽きたようだ…
こんな記憶を持ったまま、俺は赤ん坊になって生まれ変わった。
そう、バスの中で女子たちと盛り上がっていた乙女ゲームの世界に。
BLだかなんだかよくわからない変な話ですが、読んでいただけるとうれしいです。