第4章:再起の第一歩
僕は森を抜け、小さな町にたどり着いた。王都からは遠く離れた、のどかな田舎町だ。まずは身を隠し、力を蓄えなければ。
町には、冒険者ギルドがあった。僕はそこで冒険者として登録することにした。登録用紙に必要事項を記入していると、豪快な笑い声が響き渡った。
「おう、坊主! 新入りか! 儂はギルドマスターのバルドだ!」
バルドは、がっしりとした体格の男で、顔には無数の傷跡があった。元冒険者なのだろう。彼は僕の登録用紙を見て、興味深そうに眉をひそめた。
「佐久間蓮司、か。ふむ、『鑑定改変』の能力持ちとは珍しいな。しかし、レベルは1だと? そんな能力、使えるのか?」
僕は正直に、まだ使いこなせていないことを告げた。するとバルドは、僕の目をじっと見つめた。
「ほう……なるほどな。お主からは、並々ならぬ力を感じるぞ。使いこなせていないというのは、もったいないな」
彼はそう言って、僕に簡単な依頼を提示した。薬草採取だ。
「まずは、この依頼をこなしてこい。町の外れの森に生えている『癒やしの草』を10株だ。ただし、質の良いものをな」
僕は森へと向かった。そこで、早速「鑑定改変」の能力を試す。目の前に生えている薬草を「鑑定」すると、「癒やしの草。品質:低」と表示された。
僕は迷わず、その薬草の「品質」を「高品質」に改変した。体から魔力が抜けていくような感覚があったが、以前のように気絶するほどではない。薬草は、僕の手の中でまばゆい光を放ち、見た目も鮮やかになった。
僕は同じようにして、次々と高品質の薬草を作り上げていった。そして、ギルドに戻り、バルドに薬草を差し出す。
「おお、これは見事な品質だ! 通常の10倍の価値はあるぞ!」
バルドは目を見開いて驚き、すぐに僕の薬草はギルド内で話題になった。僕の能力は、この町では「品質を向上させる不思議な力」として認知されることになった。
バルドは僕を事務所に呼び出した。
「お主の能力は、やはり只者ではないな。鑑定改変、か……。能力は、使い手の心次第で化ける。お主のその力、ただの鑑定に終わらせるには惜しい。魔力制御の訓練をしてみないか?」
バルドは、僕が改変の力を使いこなせていないことを見抜いていた。彼は僕に、魔力制御のための呼吸法や、集中力を高める瞑想のやり方を教えてくれた。
僕は言われた通り、毎日訓練を続けた。魔力制御の訓練をしながら、僕は自分の魔力に意識を向けた。そして、思いついたのだ。自分の「魔力回復速度」を改変することはできないだろうか、と。
佐久間蓮司。魔力回復速度:低。
僕は、自身の「魔力回復速度」を「超高速」に改変した。
その瞬間、体中に電流が走った。まるで、魔力の泉が僕の体の中に湧き出したような感覚だ。みるみるうちに、減っていた魔力が回復していく。
「すごい……これなら、もっと頻繁に能力を使える!」
魔力切れの心配が大幅に緩和されたことで、僕は自信を得た。能力の可能性が、さらに広がったのだ。バルドの助言と、僕自身の努力によって、僕は再起の第一歩を踏み出した。