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第2章:勇者パーティーでの屈辱

 勇者パーティーでの僕の扱いは、日を追うごとに悪化していった。

 初めての魔物討伐任務。森の奥で、凶暴なゴブリンの群れと遭遇した。僕はすかさず「鑑定」でゴブリンのステータスを確認する。

 ゴブリン。弱点:火属性。

「カイル、このゴブリン、火属性が弱点だよ!」

 僕が叫ぶと、カイルは冷めた目で僕を見た。

「そんなの、誰でもわかることだ。お前はただの鑑定士か? そんなもの、僕には必要ない」

 彼の言葉に、僕は愕然とした。鑑定改変の能力は、まだ改変の部分が使えない。だから今は、鑑定しかできない。僕の能力は、彼らにとっては当たり前の知識でしかなかったのだ。

 ミリアは僕に何かと冷たく当たった。彼女の放つ魔法は強力で、常に僕の一歩も二歩も先を行く。僕が何か意見を言おうとすると、「あなたごときに、私たちの戦い方が分かるわけないでしょう」と一蹴された。

 リリアも、最初は僕に多少の気遣いを見せてくれていたが、カイルやミリアの僕に対する態度に引きずられるように、次第に僕から距離を置くようになった。彼女の視線は、いつも僕を憐れむように、あるいは呆れるように感じられた。パーティーの中で、僕は完全に孤立していた。

 夜、野営地で焚き火を囲む中、僕は一人離れて座っていた。誰も僕に話しかけてこない。寂しさと、無力感が、僕の心を支配していく。

「このままじゃダメだ……」

 僕は誰も見ていないところで、再び能力を試してみた。鑑定改変。改変。

 目の前に落ちていた小石をターゲットにしてみる。

 小石。攻撃力:0。

 この数値を、変えることができるのか? 僕は小石の攻撃力を「1」に改変しようと試みた。すると、頭の中に激しい痛みが走り、全身から魔力が吸い取られるような感覚に襲われた。

「ぐっ……!」

 僕は地面に倒れ込んだ。しかし、目の前の小石は、たしかに微かに輝いたように見えた。そして、その小石のステータスが「攻撃力:1」に変化している。

「できた……! でも、こんなに魔力を使うなんて……」

 僕はそのまま意識を失ってしまった。

 翌朝、カイルが僕に冷たい視線を向けた。

「おい、佐久間。昨夜、何かやらかしたのか? 魔力を無駄遣いするなと言ったはずだ。やはりお前は足手まといだ」

 僕が昨夜何をしたのか、彼は知る由もない。ただ、魔力切れで倒れていた僕を見て、さらに「無能」の烙印を押しただけだ。

「蓮司は、私たちの足を引っ張るだけ。このままでは、魔王を倒すどころではないわ」

 ミリアがそう言い放ち、リリアもまた、静かに頷いた。パーティー全員が、僕を排除すべきだと考えている。転生前の悪夢がフラッシュバックするようだった。僕はまた、誰にも必要とされない存在に戻ってしまうのか。

 パーティー内に、僕を追放する空気が濃厚に漂い始めるのを感じながら、僕はただ、唇を噛み締めることしかできなかった。

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