第12章:新たな旅立ち
魔王が倒されて数週間後、僕は王都を離れることにした。英雄として祭り上げられることよりも、僕は自分の目でこの世界を見たいと思ったのだ。
旅立ちの日、僕はリリアとバルドに別れを告げた。
「佐久間さん、本当に一人で行くの?」
リリアが心配そうに僕を見つめる。
「ああ。まだこの世界のことを、何も知らないから。もっと、色々な場所を見てみたいんだ」
僕はそう告げると、バルドに深々と頭を下げた。
「バルドさん、本当にありがとうございました。あなたがいなければ、僕はここまで来れませんでした」
「ふん、お主は儂の自慢の弟子だからな! どこへ行っても、その力を存分に発揮するがいい!」
バルドは豪快に笑って、僕の背中を叩いた。
僕が王都の門をくぐろうとしたその時、リリアが駆け寄ってきた。
「待って、佐久間さん!」
僕は振り返った。リリアは、僕の目を見つめて、真剣な表情で言った。
「私、佐久間さんと一緒に旅をしたいわ! この世界には、まだあなたの力が必要な場所がたくさんあるはずよ!」
僕の心臓が、少しだけ高鳴った。彼女は、僕が孤独を感じていた時に、唯一僕を信じようとしてくれた存在だ。そして、共に魔王と戦い、僕の最も辛い内面と向き合ってくれた。彼女と一緒なら、きっと楽しい旅になるだろう。
「わかった。じゃあ、一緒に行こうか、リリア」
僕は優しく微笑んだ。
僕たちは、まず荒廃した村を訪れた。魔王軍の襲撃で、村は壊滅状態だった。僕は「鑑定改変」の能力を使い、壊れた建物を修復し、枯れた土地を肥沃な大地へと改変していった。
村人たちの笑顔を見た時、僕は初めて心からの満足を感じた。誰かに認められるためではない。自分の力が、誰かの役に立っている。それが、僕にとって何よりも嬉しいことだった。
そして今、僕たちは新たな大陸へと向かう船に乗っている。広大な海原が、僕たちの目の前に広がっていた。
「佐久間さん、これからどんな冒険が待っているんだろうね!」
リリアが、期待に満ちた瞳で僕を見上げた。
僕は、遠くの水平線を見つめながら、静かに呟いた。
「この世界で、僕の居場所を、見つけるんだ」
僕の物語は、まだ始まったばかりだ。僕はもう、かつての佐久間蓮司ではない。僕は、佐久間蓮司だ。そして、僕は、この世界で、僕自身の物語を紡いでいく。