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雪星の獣  作者: 廻符
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過去と神獣、雪の地平線 三部 〜基地奪還戦〜

 サイト八七。雪星の研究施設で一番厳重な星家最重要四施設のうちの一つだ。

『カチコミ事件』の話は聞いていた。月的惑星『ルーシャ』が1865週目を迎える日だったと思う。

ルーシャは約三六時間で一周する。今は一九〇二週目の途中なので、一ヶ月と22日前くらいになる。

 占拠は今だ解かれていない。

「冷静に考えればわかることだった…」

過去に戻るなんて最新鋭の技術であることは明らかだ。

最新技術は当たり前のように最重要施設で試験するに決まっている。

「それじゃ!奪還よろしくぅ!」

 サイト八七。過去への移転実験施設であり占拠中の星家最重要四施設のうちの一つ。

今から私が奪還する基地だ。

入り口前の護衛はなかなかの手練れと聞いた。

「ま、君には叶わないと思うけどねぇ」

「五月蝿い」

そう言いながら刀を抜く。

 彼女が死に際に私に渡した、唯一の物。銘は『細雨霧(ささめきり)

乱刄の美しい刀で、薄水色の刀身が夜空の中で輝く。

 私たちはただ武器で戦うわけではない。空中に漂う粒子を収束させ別物質に変換する、

地方によって呼びかたは変わるが私たちの地域では「自然術」などと呼ぶ。

 どうやら護衛に気づかれたようだ。

まぁこれだけ力をだだ漏れにしていれば気付かれるのも無理は無い。

 壁を蹴り一瞬で距離をつめる。奴が気づく前に相手を蹴り飛ばす。

再度距離を詰めようとすると、氷の壁を張られた。奴も「自然術」を使うらしい。

 分厚いが粗い壁だ。刀を振り壁を叩き切る。柔な氷の壁は一瞬にして崩れた。

 相手はすでに焦りの表情を浮かべている。

 瞬間目の前に炎が出てくる。技の発動速度は一流だ。

そばにあったビルに飛び乗り避け、ビルに乗り移り続け距離を詰める。

相手は私が炎の中にいると思っているのだろう。注意が前に向いてる間に横から襲いかかる。

「まずっ…」

言い切る前に吹っ飛ばす。刀は当たったが、手応えは軽かったところを見ると、

自分で後ろに飛んだのだろう。

                 ※

 クソ。全くなんなんだ。

ボスに言われて門の護衛をしていたら、急にとんでもない奴に襲われた。

俺の最大出力の氷と炎を軽くいなされた。

 なんなんだあの化け物は。

吹っ飛ばされてビルにぶつかって気を失いかけた。

 悶えていると顔面をぶん殴られた。

視界が揺れる。ビルを貫いたようだ。

 体がまだ思うように動かない。首根っこをつかまれて引っ張られる。

そのまま投げられ…

 「ゔっ!」

地面に強く叩きつけられ吐血する。

 「ほら、お前の大好きな炎だぞ」

 といい炎を俺の腕に巻き付ける。

身動きが取れない。まずい。

                ※

さっきから、かなり強く叩きつけたり、殴ったりしているのだが、一向に気絶する気配がない。

仕方がない、時間もないしやむおえないだろう。


出力最大 “氷塊”


この残骸は惑星外探査機で観測できるサイズになった。

 息だけはできるように小さな穴をたくさん開けておく。

このまま放っておけば、全身が凍傷で傷つき低体温症で死に至るだろう。

血も出ず綺麗なまま死体を残せる、遺された側からすればマシな死に方だ。

『終わったぞ』

『はっや』

こいつの声、通信越しに聞くと餓鬼みたいでムカつくな。

 ヴィンセントの声は二五の男にしては異常に高い。

『予定よりも早く済みそうでよかったァ。実は予定があんまり余裕なかったんだよね。』

『…お前時間の余裕は?』

『ゼロ。あと23分で雪星の獣は復活する。』

『それを先に言えッ!さっさと合流地点に来い!』

「もう着いてるよ」

 不意に後ろから声がする。その距離なら通信で話す必要もないだろう。

だが突っ込んでいる時間はない。残り22分38秒。

「素早くいくぞ」

あの獣を穿つのだ。


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