もう一人の『自分』が居る ―SNSドッペルゲンガーの謎
私の名前は、椎菜かおり。
普通の高校生。
そんな私が、不穏に思ったことがあって―――
▪▪▪
「おはよー、かおりちゃん」
ある日の朝、友達の栞が話しかけた。
「おはよう、栞ちゃん」
「……そういや、かおりちゃんってネスキー始めたんだね!」
栞がそう言ってくる。
「えっ?」
私はその発言に違和感を持った。
ネスキーは、最近流行っているSNSだ。
……だが、SNSはやるなと親に言われているから、スマホを持っていてもしていないはずだ。
その旨を栞に言うと、頭を傾げる。
「うそー。これ、確かにかおりちゃんだよぉ?」
そう言って立ち止まり、スマホを見せた。
―――ネスキーに、私の名前と顔写真が載っている。
「……これ、絶対嘘よ嘘。ほら、私アプリなんてやってないしー」
慌てて、アプリを落としていない事を示す。
「ほんとだ。じゃあ、誰かが……かおりちゃんに成り済ましているってこと?」
「だから、運営に報告した方がいいんじゃないのかな」
栞は頷いて、その場で『なりすまし』の報告をした。
▪▪▪
あれから数日後。
私がスマホのメールを整理していた時だ。
「……!?」
見つけたのは、『ネスキーへ登録しました』と言うものだ。
それも栞が話していた時期と重なるのだ。
(なんで、どうして?)
誰かに個人情報が盗まれたのか、そう思った。
ただ、ネットはほとんどやらないし、使うのは電話とメール位だ。
それにセキュリティパックも入っているから、流れる危険性は低いと思ったのに。
一旦冷静になって、パソコンで色々と調べる事にした。
すると、興味深い記事を見つけた。
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『最近急増の「SNSドッペルゲンガー」について』
近年脅かされているのは、『SNSドッペルゲンガー』について。
自分ではやっていないはずのSNSに、『全く自分と同じ人物』のアカウントが存在している事だ。
「なりすまし」とは違い、自身のメールアドレスが使用されたり、本人しか知り得ない情報を掲載していたりと、謎が深まるばかりである―――
▫▫▫
(確か本来のドッペルゲンガーって、会ったりすると死ぬとか……)
そう考えて、頭を振った。
こんなことを考えては駄目だと……
ふと、あの日『なりすまし』の報告をした事を思い出す。
不安になり、記事の先を見てみた。
『万が一、見つけた場合は放置が一番良いとされている。謎が深まる事案だが、もし「なりすまし」の報告をすると、実際の人物が死に至ると報告が各国で話題になっているからだ―――』
この日を境に、椎菜かおりの姿が見えなくなったそうだ。