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この会社、乗っ取らせて頂きます

「私の名前は常和藍。日本出身で、前世は政治家をやってた。」


「常和カ。私の名前は李鷹山、中国出身ダ。前世は武闘家をやってタ。」


 李鷹山。中国出身の同郷者。今後を生きていくために転生者同士の情報共有は必要だから、友達、もしくは仲間に引き込みたいな。


 まあどんな交渉もまずは会話からだ。


「で、李さんも転生者なんだよな?どういう経緯で転生したんだ?」


「李でいいゾ、常和ヨ。私は妻に殺されて転生したんだガ、そっちはどうなのダ?」


「俺は通り魔に殺されて、ふざけた神様に半ば無理矢理転生させられたよ。」


「ふざけた神とハ?至極真面目な方だった気がするんだガ?」


「え?死神と変なおじいちゃんじゃなかったっけ?」


「ハ?私の神様は釈迦様だったガ?」


 あれ?神様って一人だけじゃないのかな?ご当地神様みたいなシステムなのかな。まあそれはどうでもいいとして。話したいのはスキルについてだ。


「李さんスキルを持ってるよね?」


「ッー?!何で常和はそんなことを知ってるんダ!」


「あー、俺のスキルの力でねー。」


「どんなスキルを持ってるんダ!」


「人のことが少し分かるスキルを持っててね。」


「じゃあ私の『ファイター』も知っている訳カ……」


「うん。で、スキルってどうやって貰った?」


「私は釈迦様の慈悲と言われてスキルを貰ったが、お前は違うのカ?」


「ああ。俺は神様からお詫びという形でスキルを貰った。」


「神様からお詫びっテ……」


「まあそれはともかく、スキルのレベルアップって体験したことあるかな?」


「スキルのレベルアップ?初耳だナ。」


「そうなのか?」


「うム。『ファイター』を結構使ってきたが、レベルアップっていうのは聞いたことなイ。」


 いいことを聞けた。スキルは全部レベルアップするものかと思いきや、レベルアップするスキルとしないものがあるみたいだな。


「なるほどねぇー。」


「おい常和、一つ聞きたいんだガ。」


「うん何でも聞いてよ。」


「お前、女なのカ?男なのカ?どっちなんダ!」


「え?」


「一人称といい、話し方が男そのものなのだヨ!」


「ああね。俺は前世では男だったんだよな。今は女だけど。」


「せ、性転換ッー!」


「あ、うん。そうだよ。」


「もうお前は出鱈目ダ!」


「そうかなー?」


「そうなんだヨ!」


 李は呆れたように頭を抱え、ブツブツと小言を呟いている。アタオカやらクソバカなど散々言われている気がするが、きっと気のせいだろう。


「で、李ってカーティスがいなくなったらどこ行くの?」


「そういえば行き先を決めてなかったナ。」


「カーティスへの思い入れってあんまりないんだな。」


「まあ、カーティスは嫌いだからナ。給料がいいから従ってただけサ。」


「へぇ、じゃあウチ入る?」


「ハ?」


「いや、居場所ないならどうかなーって。」

「なんと無茶ナ……でも、嫌いじゃないかモ。給料はいいだろうナ?」


「もちろん。」


「じゃあ乗っタ!ここにこだわる理由は特にないシ。」


「なら決まりだな。フランシスを外から呼んでくるよ。」


 応接室のドアを開けると、泡を吹き、白目を剥いているカーティスが部屋に引き摺り込まれる。一方でアレクサンダーとフランシスは両方とも涼しげな顔をしている。


「成敗完了よ!」


 フランシスが誇らしそうに言い放つ。アレクサンダーもドヤ顔をしてご満悦の様子だ。


「カーティスって一応意識ある?」


「あると思うわよ?」


「じゃあ少し話させてもらおうかしら。」


 虫の息のカーティスの元へ満面の笑みで歩み寄る。


「ねぇ、カーティス。私の聞く質問にはいかいいえのみで答えなさい。」


「……」


「返事は?」


「は、はぃ……」


「あらあら、いい子ねー!」


「怖すぎるナ……」


 李が怯えた様子で呟く。


「じゃあまず質問ね。今回の件誰が悪いでしょうか?」


「お姉ちゃん、それはい、いいえで答えられないでしょ!」


 あ、やらかした。格好つけたのに非常に恥ずかしいことになってしまった。


「いいのよいいのよ。」


「まあエルナお姉ちゃんが言うならいっか。じゃあカーティスさっさと答えてよね。」


「ぼ、僕です……」


「えー?聞こえないなー?」


「ぼ、僕です!」


「あらーいい子ねー!じゃあ起訴の件は?」


「も、もちろんしませんよッ!」


「あらあら、良い子!じゃあこの会社くれるかしら?」


「え?カーティス石鹸商店を?」


「うん!」


「そ、それはちょっと……」


「アレクサンダー、剣抜いて。」


「ちょちょっ!分かりました!差し上げます!」


「だよねー!」


「ちなみに……僕はまだ社長で居られますよね?」


 ん?なんか勘違いしてないか、この男。俺たちのこと散々愚弄しておいてまだ自分の地位を守ろうとするなんて、どんなクズだよおい。


「いや、お前はもうクビよ。お前みたいなしょうもない奴は要らないわ。」


「えっ、嘘ぉ!」


「アレクサンダー、目障りだからこいつ外に連れてって。」


「はい!」


 アレクサンダーはカーティスの髪を鷲掴みし、強引に外へと引き摺り出す。痛い痛いと悲鳴を上げている気がしたが、きっと気のせいだろう。


「そういえばエルナお姉ちゃん、このお面の人は大丈夫なの?」


「ああ、李のことね。李は今日から仲間よ。皆んな仲良くしてあげてね。」


「うん!よろしくね、李さん!」


「お、おう。よろしくナ。」


「まあ一件落着したし、この会社をどうするか一回皆んなで考えよっか。」


「そうね。本当にもう、こんな大きな会社よく乗っ取ったわね。こりゃあ一度この会社をどうするか考えないと、面倒よね。」


 カーティス石鹸会社の将来を決定する、大切な会議がボロ応接室で行われようとして居たのだった。

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