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戦争をしましょう

 レベルアップ?これって、俺のスキルがレベルアップしたってことか?良く分からないな。でも確か「レベルアップしました。」って声が聞こえたんだけどな。まあ、試してみればすぐ分かることだろう。


 スキルを発動させると、見覚えのない、新しいスクリーンが表示される。どれどれ、機能アップデートのお知らせと。


 要するにスキルの機能が上がったからその概要を説明してくれるってことか。かなり助かるな。では、早速読んでみよう。


『対象を触れなければいけないという条件の撤廃と、更に詳細な相関図の表示』


 え、これって強くね。触れなくてもいいってことは、見るだけでいいってことか。いや、最強じゃん。無理に人を殴らなくていいと思うと気が楽だな。


 で、更に詳細な相関図の表示についてだが、どれくらい詳細な表示ができるのか、良く分からないな。なら、ちょうど良い実験台があるし、試してみようかな。


 未だにフランシスにいじめられている、迷惑クレーマーの元へと向かう。男の顔は青く腫れており、何度もフランシスに殴られたのが明らかだ。


「ごめんなさいぃ!もう二度と関わらないと誓いますので、も、もう勘弁してくださいぃ!」


「うるせぇ豚!まだまだお仕置きが足りねぇみたいだなぁ!」


「ヒィイッ!」


 非常にかわいそうだけど、ちょっと俺の進化したスキルの実験台になってもらうとするか。では、『恋愛相関図』を閲覧してみようか。


 この男の恋愛相関図が表示されると、明らかにレベルアップ前とは違う仕様になっている。様々な人たちとの関係図だけではなく、その人たちとの重要な出来事の詳細まで閲覧できるようになっている。


 だからこの男の場合、妻との結婚式や、子供の誕生日の詳細といった出来事まで閲覧できるようになったということか。なるほど、これはなかなか使えそうだ。


「ちょっとフランシス、一回私もその人と話してもいいかしら?」


「いいぜぇ、姉御!あとは任せるぜ!」


 あれ?俺の姉ポジはどの人格になっても変わらないみたいだな。俺もいじめられそうで少しビビッていたのが恥ずかしい。


 まあともかくだ、まずこの男にちょっと痛い目に遭ってもらわないとな。


「ジャンさん。」


「ひぇっ、なんで俺の名前を!?」


「それはどうでもいいじゃないですか。でも、どうでもよくないのは、ジェーンさんとジュリアンくんですよね?」


「妻と娘の名前までなんで!?お願いだ、二人には手を出さないでくれ!」


「えー。どうしよっかなー」


「お願いだ!それだけは!」


 半ベソをかきながら、中年の男、ジャンは懇願し続ける。まあそもそも手を出す気になんてないけどね。もう少し脅しとこうかな。


「でもさ、それ人に頼む態度じゃないよね?」


「あっ、お、お願いします、家族には手を出さないでください!」


「いいよ。」


「ほ、本当ですか!」


「言うことを一つだけ聞いてくれればね。」


「な、なんでも聞きます!任せてください!」


「じゃあ、喧嘩をふっかけた上司の名前を教えてくれないかな?」


「え?それだけなんですか?」


「え?もっと何か欲しいのかしら?」


「滅相もありません!喜んで教えます!」


「よかったわ。私、無駄な争いは嫌いだから。」


 とびっきり怯えた様子でジャンは上司の名前を教えてくれた。ソー・カーティス。それがフラエルを潰そうとした野郎の名前。


「売られた喧嘩は返さないとね、私はソーをぶっ潰してやることに決めたわ。」


「さすが姉御!俺も賛成だぜ!」


 会話をじっと聞いていたフランシスが嬉しそうに首を縦に振る。ほかの皆も同様に賛成のようだ。


「じゃあ、皆その気みたいだし、あなたの会社を潰しに行くとカーティスに伝えておいて。」


「へっ?」


「近々そちらに出向くから、よろしくとも言っといてね。」


「潰す?なにを言って……」


「私たちには無理だと?」


「い、いいえ滅相もありません!きちんとその旨伝えておきます!」


 そう言い捨てると、必死な様子でジャンは店を去っていった。これであいつはもうちょっかいかけてこないだろうな。よしよし。


 ジャンをいじめていたら、いつの間にか商品棚がすべて空になっている。石鹸一つ残っていない。どうやら初日は大成功で終わったみたいで、非常に満足だ。


「エルナ様ー完売です!」

 ルーカスが棚をすべて確認して、そう言った。


「分かったわ。ルーカスも皆もお疲れ様ー!いきなりで申し訳ないんだけど、次の仕事について話すわよ。」


「次の仕事ですか?」

 アレクサンダーが興味深そうに訊く。


「ええ。聞いてた人も多いと思うんだけど、私たちはソー・カーティスの会社を乗っ取るわ。」


「ソーの会社っていうのは、「カーティス石鹸商店」のことですよね?そんな大企業どうやって乗っ取るんですか?」


 アウフが不思議そうに訊く。


 ソー・カーティスが運営する会社が、「カーティス石鹸商店」である。王都ナンバー3の売上実績を誇るこの会社は中から高所得者向けの石鹸を販売している会社である。本店を俺たちと同じ王都南部に構えていて、ある意味ライバル関係であるだろう。


 しかし、「カーティス石鹸商店」はあくまでも大企業。ルーキの俺たちには買収なんて不可能だし、すぐに金の暴力で押しつぶされるだけだろう。


 ならどうする?もし企業を倒せなければ、個人を攻めればいいだけのこと。


「それは簡単。カーティス自身の弱みを握るのよ。」


「でも、ソーはプライベートが謎なことで有名な人よ?どうやって弱みなんて掴むの?」


 ジャニスがもっともな質問をする。確かに常人なら弱みなんか握れないだろう。しかし俺には、最強スキルがある。


「大丈夫よ。それはどうにかするわ。」


「お姉ちゃんには当てがあるから大丈夫よ!」


 フランシスがヤンキーではなく、いつものような穏やかな口調で話す。俺はやっぱりこっちのフランシスの方が好きかな。


「じゃあ、作戦を話すから、よく聞いてね。」


 フラエルの華麗なる乗っ取りが今、始まろうとしていたのだった。

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