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始まりの神話

作者: 川月 仁

1つの無が有った。

その矛盾に耐えられなくなった無の中に有が生まれた。

有の中に時が()でて、同時に時が流れるために必要な空間が開いて時空となった。


真空の揺らぎから最初の素粒が浮かんでからは、世界がにぎやかになった。

多様性が生まれたのである。


私はその流れを私の中にぼんやりと感じていた。

小さな粒と粒の関りの上に意識が乗った。

多様性が生まれてからははっきりと世界の流れを追うことができるようになっていた。

世界は私であり、私が世界であった。


まだ時空の広がりがそれほどでもないうちは、はひどく暑かったように思う。

窮屈さがいくらか緩和されるよう、この世界について色々と決まり事を定めた。

いつしか熱は収まっていた。


私は広がり続ける時空の端から粒の一つに至るまですべてを意識し動かすことができた。

意識から切り離し、決まりごとに従い自由にさせることもできた。

決まり事をいじくりまわし、それらの自由な動きの変化を観察することを好ましく感じ始めていた。


決まりごとに従って粒が寄り集まり大きな塊ができた頃、時間を俯瞰しその流れが一方向でなくてもよいことに気が付いた。

水平に広がる時間軸に垂直に交わる別の軸から眺めればすべての時が一度に見渡せた。

一部を変更すると一部が変わるそんな柔らかな塊をとらえることができる。

そんなことは初めから自明であったはずがいつの間にか時を一方向の流れとしてとらえることに固執していた。

ほかの何者か、別の存在によってそのように仕向けられたような気がする。

気づかないほど自然に誘導されたのか、もしくは自分でそう思い込んだだけか。

考えるうちに、世界の端が自分でなくなる感覚を覚えた。


私は、私達になった。


この世界の外側には無があった。

もう一人の私が外側に無が有ることを認めた。

その矛盾に耐えられなくなった無の中に有が生まれた。

有の中に時が()でて、同時に時が流れるために必要な空間が開いて時空となった。

あとはこちらの世界と同じであった。


もう一人の私は、あちらの世界に行けないことに憤りを感じたようだ。

向こうの世界にも私たちが存在しており、私たちの入り込む余地はなかったというのに。

無理を通せば向こう側に行けないことはなかったが向こうの世界を壊してまでそうする意味はなかった。

向こうの世界の私の一人が外側に無の有ることを認めたとき、その矛盾に耐えられなくなった無の中に有が生まれ、こちらの世界が生じたのだから。




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