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トップギア  作者: 小林 彰人
デリバリーレース編
13/18

13話 実力差

 突然の試練に唖然とする。

「それじゃあ遠慮なく行かせて頂きますね」

 そう言った彼はサイクルグローブの下を引っ張りながら、コースの方をまっすぐ見ている。

 プロを目指すファイートのエース相手に勝てるのか?

「準備が出来次第、出発する」

 各々がやるべきことをするために散らばった。


 それから用を足したり、軽食を取ったり、ロードバイクの調子を見るのに5分ほど使っていた。

「新城、準備はいいか?」

 岡さんは心配した様子で話す。

 どこか硬い表情や動作をしているのかもしれない。

「はい。大丈夫です」

 この2人に今の俺はどこまでついていけるのだろうか。もし、引き離されることがあれば追いつけないな。

 ロードバイクのブラケットを握りながら思う。

 頭の中で言葉が駆け巡るたび緊張が増す。

「俺も準備オッケーです」

 彼は首を左右に傾けている。

 リラックスした状態を保っているようだ。

 目一杯息を吐く。

 やるしかないか。

 全力で挑む覚悟を決める。

「なら行くぞ」

 岡さん、水河さんに続いて和泉広場を出た。


 2kmほど走ったんだろうか。

 川沿いの道が広く、まっすぐだ。

 遠くの方まで続いていて、5km先にカーブがある。

 見上げれば青と水色のグラデーションを描いた空が見える。

 いくつもの巻雲けんうんが吸い込まれていた。

 岡さんはまだ合わせてくれている。

 この調子なら抜かせるかもしれない。

 3人がトレインになって通るとつられてそばにある植物がゆらゆら踊る。

 今の段階でアウターと、ローギア側から4つ目のギアに入っている。

 肘を少し曲げ、姿勢を楽にして二人の様子をうかがっていた。

 コースは把握している。

 勝負をかけるなら早い方がいい。

 このスプリントで仕掛ける――。

 腰を上げかけた時、何かが切り替わる音が聞こえた。


 カチカチッ。


 え?


 気付いた時にはもう遅かった。

 岡さんは力強いシッティングで引き離し、10m先まで間隔を空けていた。

 ――?!

 前にいた水河さんも反応できなかったようだ。

 急いでダンシングして追いつこうとしている。

 動きが読まれたのか?! ここで差が開くと不利だ。

 俺も5つ目のギアにシフトチェンジしてダンシングで彼に離されないようにした。

 しかし、パンチャーだけあって加速するのが速い。

 徐々に離れていく。

 水河さんも岡さんに負けないぐらい速い――。

 大きく体と腕、ハンドルを同時に揺らすように意識する。

 彼は波の如くなめらかなフォームで、リズムよくハンドルを左右にして前に進む。

 岡さんと俺の差は60m~70m。これ以上ちぎられるのはまずい。

 かといって、水河さんに食らいつくので精一杯だ。

 ダンシングをしている分、ふくらはぎと太ももがかなり張っていて膝の負担も大きい。

 このペースが続けば、ひざが持たないな。

 少しずつ2人は遠ざかっていく。

 地面からの振動がより全身に伝わり、疲労を増幅させる。

 心拍数は上がり、じわじわと体力を削っていく。

 息が上がり始めてる。

 証明される力関係。

 上半身を前にし弾むように身体を浮かして回すが、2人の姿は小さくなっていく。

 近付けないことからメンタルへのダメージも大きい。

 水河さんと50mほど差が出来た時、突風が正面から吹く。

 今度は向かい風か――。

 デリバリーバックが暴れる。

 前傾姿勢でも後ろに押されそうだ。

 ギアを3枚目に下げる。

 風の影響で彼のペースも落ちてはいるが縮めることが出来ない。

 全速前進でも止まっている感覚に襲われる。

 全く進めねぇ。

 まるで目の前に壁があるような。

 二人はカーブを曲がり、視界から消えた。

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