表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

5.よくってよ!


「うーん、これでもない。これも違う…」


 スーちゃんが先程から俺の肩で何かを作っては壊し、作っては壊しを繰り返している。

 最初はコップを作っていたようだが、今見たもの全然違った。

 なんか器に翼やら植物のレリーフ、動物が動く等と、通常ではありえない物になっていた。

 俺にその摩訶不思議な器でミルクを飲めと?

 絶対、味がわからなくなる。


 暫く歩いていると、足下の草が金色ばかりになってきた。

 本物の金みたいに光輝いている。

 売れば儲かりそうと思っていると、クーちゃんが目的の人物を見付けたらしく走り寄っていく。


「ゴートン~。ミルク分けて~」


 うん、可愛い。

 クーちゃんが近付いていくのは、黄金の体毛を生やし、獅子のように立派な鬣を持ち、頭部に蒼白い光を放つ二本の角を持った山羊?だった。

 ゴートン……ゴート?

 名前、安直すぎないか?

 というか、人じゃなかった!人が居ない!

 ここに来るまで一度も会ってないぞ!

 もしかして、人は居ないのか?


「あら、クラインどうしたの?私のミルクは三百年前に卒業したわよね?恋しくなっちゃったの?」

「僕じゃなくて、ロノスにあげて!あと、クーちゃんって呼んで!」

「ロノス……?だれ?」


 ゴートンは俺の方を見ると固まった。

 俺も固まってみる。

 数分ほど経つと、ゴートンは俺に近付いてきた。


「貴方、言葉はわかる?」

「あぁ、わかるぞ?」

「本当に?この子達が言っている事も?」

「問題なく」


 それだけ話すと、ゴートンは俺を観察するようにぐるぐると周りを歩き始めた。

 何かした方が良いだろうか?ポーズとか。

 いや、恥ずかしいからポーズは無しだな。


 あれこれ考えている間にぐるぐるするのを止めたゴートン。

 ゴートンって鬣あるけどメスなのだろうか?


「器は持ってる?」

「器は……」

「はい、これなら満足の仕上がり」


 スーちゃんから渡されたのは、器とは言えない物だった。

 仏具の高月みたいな物で、上の皿状の部分は何枚もの翼で出来ている。

 翼は当然のように動いていて、とてもミルクを受け止めれないだろう。

 そう思っていたが、翼が勝手に動いて杯の形になっていく。

 杯の淵は翼をリアルに作ってあるためか、羽があり不規則だった。

 そこに蛇が現れ、淵に沿うように移動した。

 最後に自身の尻尾を噛み、停止する。

 淵は蛇の胴体により、丸みを帯び均等になった。


 ……これで飲めと?

 味がわからなくなるなぁ。


「あら、良い趣味じゃない。前は実用的なのしか作らなかったのに」

「うん、ロノスを見て変えてみた。見た目重視の実用性がある物。作るの難しくて楽しい」

「ただのボウルを出してきたら、割ってやろうかと思ってたけど、これならいいわ」


 え、本当にこれで飲まなきゃ駄目?

 というか、ミルクはゴートン産?


 ゴートンは前足を地面より少し高い位置にある石に移動させる。

 背筋を伸ばし……人的には姿勢を正す感じだと思う行為をし、一鳴きする。


「よくってよ!」

「ロノス~、搾っていいって!美味しいよ」

「う、うん。…わかった」


 人生初の乳搾りは山羊になりそうです。

 ゴートンに近付き、乳首?乳房?を搾る。

 器に白く輝くミルクが注がれていく。

 輝くミルクってなんだ?

 人体に悪影響を及ぼさないよな?


 搾り終わったので後はミルクを飲むだけなのだが。

 ……ええい、ままよ!


 ミルクを飲む。

 感想としては普通に旨い。

 こう、感動的な旨さとか情緒溢れんばかりの感想は無い。

 ただただ、旨いとしか言いようがない。


 舌がバカになってるのだろうか?

 ここまで酷い食レポは無いだろう。

 …なにやら、周りは俺の感想を待っている風。

 嫌だなぁ、語彙力無いって思われそう。


「うん、旨いよ。普通に旨い」

「だよねぇ~。美味しいよね!」

「僕は飲んだこと無いけど、初めて飲む奴は涙とか流してたと思うんだけど。ロノスにとっては、そこまでじゃなかった感じなのかな?」

「嘘……。私のミルクで感想それだけ!?何でなの……、最近は肉ばかり食べていたから味が落ちたの?……」


 ゴートンはぶつぶつと独り言を言い始めた。

 やっぱり、この感想では駄目だったようだ。

 ミルクは普通に旨いので全部飲むことにする。


 ゴートンがこっちに戻ってくるまでクーちゃん、スーちゃんと遊んでいた。

 ゴートンは俺の目の前まで来て、宣言してきた。


「いいわ!貴方に真のミルクを飲ませるためにしばらく側に居てあげる。毎日、私のミルクを飲んでも、よくってよ!」


 最後に決めポーズして終わった。

 ゴートンにとって、よくってよポーズは欠かせないものなのだろう。


「あ、はい。よろしく?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ