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三話完結短編“KY日記”前編

 こんにちは。私の名前は“武藤むとうあざみ”と申します。


 現在は中学二年生。自分で言うのもなんですが大人しい女の子です。好きな物はありませんが、欲しいものはあります。それは、


 …友達です。


 私は勉強もできて運動もできて、容姿もそこそこ自信があります。だけど、一つの短所が原因で友達ができません。これは、そんな私が一人の友人を作るまでのお話です。




 その一“空気の読めない私”






「――武藤さんさ。ちょっと空気読んでくんない?」


 私は空気を読めません。

 大体空気を読むって何ですか? 空気に文字でも書いてあるのでしょうか? もし書いてあるのなら辞書を引けば私にも読めるでしょうか…


 わからない。


 今だって、私はただ教室で男女二人残っていた同じクラスの人に「もうカギ閉めるので出て行ってください」と言っただけなのに、なぜ私が怒られるのでしょう? そういえば二人はなぜか唇を近づけ合っていましたがあれが原因でしょうか?


「わからない…」


 私は下校しながら本を読んで呟きます。

 文字で頭を埋め尽くして現実から目を逸らします。本は便利です、無駄な情報で私の悩みを消してくれますから。…いいえ、わかってます。これはごまかしにすぎないということは。


 そんな悩みを抱きながら私は出会いました。


「…はぁ。嫁菜かわいいなぁ…」


 紫髪の高校生に。


 私は本から目を逸らし、目の前の光景を見ます。

 なるほどなるほど。同性から見てもすごく可愛らしい女の子が前を歩いていて、その後ろを男の人が涎を垂らしながら追っています。電柱を鞍替えしながら。


 通報案件ですね。

 

 私は早速親に持たされていた自分の携帯電話を開き、いちまるいちを押そうとしますが。


「おい。空気読め」


 その手をストーカーに抑えられてしまいました。


「やめてください。襲わないでください」


 私はとりあえずこの状況で言うべきことを言っておきます。我ながら感情がこもってない声ですね。


「おいおい…僕がお前を襲うような男に見えるか?」


「……。」


 そりゃ、まぁ。明らかにストーカーですし。


「どうやら何か勘違いしてるな。僕はよくストーカーに間違えられるがストーカーじゃない。例えるならナイトだ。姫を守る、騎士様」


「……。」


 刺激すると危険だろうか…突っ込みどころが満載である。

 なんて言えばいいのだろう。とりあえず、


「通報していいですか?」


「…ちょっと公園のベンチで話そうか」


 なんでこんなことになったのでしょう。私は大きな悩みを抱えたままだと言うのに、新たに問題を抱えてしまいました。


「…だから嫁菜は人間を超越してるんだ。天使…否、神に近いな。将来はヴィーナスになっているだろう」


 さっきからこの人はわけのわからないことを言ってます。


「あの…もう帰ってですか?」


「通報しないか?」


「通報はします」


「じゃあ駄目だな」


 困りました。


 なにかいいアイディアはないでしょうか…この最悪な状況を一転、最高の状況にするようなグットアイディア…


「そうか」


 そうだ。利用すればいい。


「通報しないので、空気の読み方を教えてください」


「空気?」


「はい。私はKYというやつなので」


 ストーカー高校生は一瞬硬直しますが、すぐに頷いてくれました。


「いいよ。空気を読むなんて簡単だ」


 ここから私とストーカーによる“KY講座”が始まったのでした。



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