表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストーカー・ロボット  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
失われた解明者“ひるよし”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/59

第二十六話 vs歴戦の勇者②

 ヒンメル千葉支部局長である菫は画面越しに戦場を見ていた。

 

 ヒンメル司令室は例年稀に見る劣勢に騒乱状態だった。送り出した補給キットは全て途中で破壊され、援軍に遣わした兵器も悉く撃ち滅ぼされた。無人ゆえに人的被害はなかったがすでに策は出尽くしている。


 手を尽くした菫は小さな希望に、すべてを託した。


「残り四十五分。頼むぞ朝顔、ホーク・キッド…昼吉さんを、解放してやってくれ」



 REVERSE 00:00



 ホーク・キッドが持つはα‐2.高精度スナイパーライフル“イェクン”。長い銃身と青い塗装が特徴的の武器だ。役目を終えた“イェクン”は残り三発分の弾薬を残して虚空へ消えていく。


 上空に現れた白い霊媒機体シャーマンを見て、パイロット達は安心よりも驚嘆が先行した。


 パンジー・ガーベラは汗を拭いながら微笑む。


「陰キャ君…やっば、うっかり惚れそうになるぐらいグットタイミング…!」


 決死の場面から助けられた鈴木桜は彼の存在に理解が追い付いていなかった。


「し、東雲——!?」


 アザレアも桜やパンジー同様驚きを隠せない。


「東雲…!? お前、なんで…」


 朝顔は焼け果てた街と森を見て、相手の強さを察知する。


「これは…別格だな…」


 朝顔とホーク・キッドの到着を見て真っ先に岸花とマヤが動き出す。


 マヤは地面に横たわるイラマを抱え、ループ・ホールの方へと発進した。


「解明者。少しの間奴の気を引け」


「命令するな。心配しなくてもアイツはホーク・キッドにご執心だ」


 ホーク・キッドは地面に足をつき、正面の“ひるよし”を見る。“ひるよし”の方も他の霊媒機体には目もくれず、まっすぐホーク・キッドを睨んでいた。


「アザレア、パンジー。お前らは動けるのか?」


「正直あと1、2発技を出せるかどうかだな…」


「標的にされたら逃げきれない、足手まといにならないって保証はないよ」


「大丈夫だ。多分、僕ら以外狙われないだろう。隙を見てサポートしてくれ」


『わかった!』


 朝顔が指示を出し終わると“ひるよし”は思い切り地面を蹴った。


 百メートルあった距離がみるみる縮められている。


「思ったより速いな…」


〔身体能力は私以上です…!〕


 ホーク・キッドは地面を蹴って上空へジャンプする。同時にホーク・キッドは次元装を起動させた。


〔“次元装”起動! 朝顔殿、望みの品は?〕


「γ‐2.β‐32‼」


〔承知!〕


 次元装より取り出したのはγ‐2大盾“キシャル”とβ‐32スイッチ式のリモコン爆弾“ハウメア”。


 “ひるよし”はさきほどまでホーク・キッドがいた地面を蹴って真上にいるホーク・キッドと距離を詰め、巨大なハンマーを生成し右手に持った。


〔γ‐22.衝破大槌“アラトロン”〕


 “アラトロン”。それはどんな防御でも打ち崩すハンマー。取っ手が長く、槌の部分も重厚でホーク・キッドの半身ほどの大きさがある。槌の先には爆薬が積んであり、攻撃が当たると巨大な爆風を作り出す。


 朝顔はγ‐2の大盾“キシャル”を真下に向けると、陰に一つの物体を潜ませそのまま下に落下させた。


 上空より目前に垂らされた大盾を“ひるよし”は“アラトロン”で薙ぎ払う。


[…!]


 すると、“キシャル”の影から手の平サイズの爆弾が目前三センチの所まで迫って来ていた。


 朝顔はホーク・キッドを操作し、それを起爆させる。


――共鳴率47%。


 ドゴォンッ‼ 轟音と共に巻き起こる爆発。ダメージこそ少ないものの、“ひるよし”を空中から地面へ押し返すには十分だった。


「森の方へ後退しつつ“ケルビム”を展開してくれ!」


〔承知!〕


 地面に叩きつけられた“ひるよし”は市街地から離れた森の上空にいるホーク・キッドを捕捉し、足に力を溜めつつ新たに武器を生成しようとするが、


「させるかよ…!」


 朝顔によるアサルトライフル“ケルビム”の掃射によって足を止めさせられた。しかし共鳴率の低さゆえに威力は少ない。“ひるよし”は弾丸の雨をものともせず、再び凄い勢いで上空にいるホーク・キッドめがけて飛び上がった。


[……!?]


 だがその進行を透明な機雷によって止められた。それはホーク・キッドの提案により次元装より取り出した武装。先ほどの“ハウメア”の爆発で“ひるよし”の視界を塞いだ際に仕掛けた罠…


「β‐67.透明機雷“ぺヌエル”」


 無数の爆発音が“裏世界”に鳴り響く。


 だが、それだけの手数をうっても“ひるよし”はピンピンしていた。


 “ひるよし”はなんてことない様子で新たに大きな歪から大鎌を取り出した。ホーク・キッドは懐かしき武装に思い出を蘇らせつつもすぐに戦場へ意識を戻す。


〔空裂サイス“シェムハザ”…〕


 朝顔は“シェムハザ”の圧力に息を呑んだ。


「さっきの大砲みたいに弱点はあるのか?」


〔所詮は空気の刃。対空圧武装であるγ‐68.で対抗するのが得策かと〕


「なるほど、承知だ」


 γ‐68.“マルキダエル”は布のような質感を持った羽根型の防具だ。


 ホーク・キッドは早速“マルキダエル”をダウンロードし、背中に装着。そのまま羽を正面で交差させ、その時を待つ。


「来るぞ!」


 放たれるショックウェーブ。空間を切り裂く鋭利な空気の刃、その勢いは“マルキダエル”の羽に衝突した瞬間、傘の上を流れる雨粒のように四散した。


〔マルキダエル解除!!〕


[γ‐66.紅蓮刀“アキベエル”]


〔γ‐69.耐火手盾“ハナエル”!〕


[γ‐77.雷長刀“アルメン”]


〔γ‐67.耐電装甲“アスモデル”をダウンロード!〕


 ホーク・キッドは耐火の盾を右手に持ち、耐雷の鎧を身にまとう。


 それに対し“ひるよし”は右手に間合い自在の炎の刀を、左手に雷をまとう身長ほどある長刀を手に取った。


「是が非でも接近戦を仕掛けたいらしいな…。――嫌なこった。ホーク・キッド!」


〔――承知! α‐9.榴弾ライフル“サンダルフォン”をダウンロード!〕


 ホーク・キッドは歪みから己の身の丈半分ほどの黄色に塗装されたライフルを取り出し、左手に装備する。


 武器を揃えた両者、そこから激しい空中戦が行われた。


 中距離から放たれる炎刀の攻撃を盾で防ぎつつ、ライフルから弾丸を発射する。一センチの距離をせめぎ合う攻防…


 朝顔は徐々に詰められる距離を見て、先手を打とうする。


「(あと三手で詰められるな…)α—9解除リリース! β‐3!!」


 銃をしまい、爆薬でけん制しようとする朝顔だが…


〔承知! β‐3.“ガレ――”〕


 “ひるよし”はまるで予測していたかのように、武器の入れ替えをはかるホーク・キッドの隙を的確に突いた。炎の刃が耐電装甲“アスモデル”を食い破る。


「(読まれてたのか!?)ホーク・キッド! α‐1だ!!」


〔承知!〕


 “次元装”から取り出すは拳銃“アテム”。これはこれといった特徴のない武装だが、唯一の利点として次元装から取り出す際のタイムラグがほとんどゼロというものがある。つまり、武器の入れ替えの隙がないため“ひるよし”に隙を突かれることもない。


 猛スピードで接近する“ひるよし”を“アテム”で撃ちぬこうとする朝顔、しかし、たかが拳銃では足止めすらできなかった。


「くそっ…! なんて回避技術だ!」


 地道に被弾していくホーク・キッド…


〔ぐっ…!?〕


「しまった‼」


 雷の長刀によって耐火の盾が破られる。無防備になったホーク・キッドに炎の刃が迫りくる。だが、ここで黄色い閃光が朝顔とホーク・キッドの視界を塞いだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ