表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストーカー・ロボット  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
失われた解明者“ひるよし”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/59

第二十三話 難敵!

格納庫には四人のパイロットと、四機のチェイスが揃っていた。そこに朝顔とホーク・キッドの姿はない。ホーク・キッドは此度の任務から外されたため隣にある第二格納庫へ移動させられている。


 それぞれのパイロットは迫りくる脅威に対して様々な反応を見せる。


 金髪の少年アザレアはパオトルのコックピットの中でため息をついていた。


「敵は元ヒンメルのパイロットか~。パオトル、お前は会ったことあるんだろ?」


〔――まぁな。集中しろよ相棒。西綿昼吉って男は一筋縄じゃいかねぇ、 “色付き”になっても全く油断できねぇぜ〕


 この部隊のエースである黒髪の男子高校生、岸花はマヤのコックピットの中で西綿昼吉のデータをコックピット内の大画面に表示していた。


「一つ前の解明者か」


〔あの子は良い子だったねぇ。強く、優しく、賢かった。アタイも幾度と助けられたよ。だからこそ、速く楽にしてやるのがアタイ達の役目さ〕


 そして岸花の妹である桜はここに来る途中、すれ違った少年のことを思い出していた。少年は自分に出番がないことを知ると静かに第一格納庫から姿を消していった。


「…それでいい。無闇やたらと関わるべきじゃない…」


〔桜。大丈夫ですか?〕


「うん。イラマ、ホーク・キッドがいないからって気を落とさないでね!」


〔は!? 別に、ホークさんがいないからって気を落としてなんかいません! …桜のバカ〕


 白髪の麗人、パンジーは気乗りしない顔で不満をたれていた。


「タイミング! 悪い! こっちの事情も考えて欲しいね“ワンダー・スター”‼」


〔おや? ご機嫌ななめですか姫? 仕方がありません、歌でも歌いましょうか!〕


「ちょっと本気で黙ってマクイル」


 ループ・ホールの調整が終わり、機体の準備も万端となると、格納庫に大きな歪みが出現した。


 眼鏡の男性のオペレーターがメーターを見ながら、


『“ループ・ホール”安定! 命綱投入完了!』


 歳をいったおばちゃんが笑顔で、


「出力OK、いつでも行けるわ菫ちゃん」


管制室の中央の机で菫が突入までのカウントを取る。


『突入まで、3―――』


 2、1。 




―――裏世界、突入‼




 PM1:25


 第一格納庫に比べ、はるかに小さい第二格納庫でホーク・キッドは一人のグラマー女性技術者と一緒にいた。


 ホーク・キッドは寂しそうに膝をつき、下を向いている。


「せっかくやる気を出して来てみれば、どうしたんだよ。行かないのか? ホーク・キッド」


〔…。〕


 ホーク・キッドの元に高校の制服を着た少年が腰に手をついて現れた。


〔朝顔殿。残念ながら今回は我々に出番はありません〕


 詳しい事情を説明しようとしないホーク・キッドに対して朝顔は少しだけ寂しそうな表情をする。


「ごめんね朝顔君。そういう訳だから今日の所は帰っていいのよ――朝顔君?」


 女性技術者の話を聞かず、朝顔はホーク・キッドの正面に行き、腰を床につけた。


「お前がそうしたいならそれでいいさ」


〔朝顔殿…〕


「アイツらが戻るまで僕も一緒に待つ。どうせ予定は無いしな。なんか知らんが、学校側は僕が早退しても何も言ってこなかったし」


「ヒンメルの力を持ってすれば、あなた達が年中学校に行かなくても進学させてあげられるわ」


「なるほど、命がけの報酬は確約された将来ってわけか」


 朝顔はそのまま背中を地面につけ、両手で後ろ頭を押さえてその場に寝そべった。


 不器用ながらも自分を案じてくれる朝顔を見て気が変わったのか、ホーク・キッドはゆっくりと語りだす。


〔朝顔殿、話があります〕


「話?」


〔はい。…私の罪についてです〕


 朝顔はその件については知っているが、あえてホーク・キッドに十年前の出来事を話させた。


 REVERSE 00:00


 少し視線を右に逸らすと海が見える街で、ビルに囲まれその巨体は立っていた。


「ちょっと待て…コイツは…!?」


 アザレアは目の前の巨体を見て驚きを隠せなかった。


 色は黒、しかし、その姿は彼らが知るあの霊媒機体にそっくりだった。


〔黒い…ホーク・キッド!〕


 パオトルが全員が感じた印象を代弁した。


 黒い巨躯。武器は持たず、簡素なデザインながらもどこか紳士らしさを感じるその姿は正しくホーク・キッドそのものだった。


「だからどうと言うわけではない。“色付き”は“色付き”だ――戦闘を開始する。マヤ」


〔あいよダーリン〕


 四機の霊媒機体はそれぞれの間合いを作った。


 パオトルは一番後方で支援の準備、マクイルとイラマは電撃と鉄球が届く中距離を維持してマヤは直進で“ひるよし”を斬りに行った。


――共鳴率七十五%。


成仏(きえ)ろ…」


 人の動体視力で追えるギリギリのスピード。姿は点々としか見えず、黒い影のみが視認できる。


 その猛スピードに反応できる“色付き”などいない、誰もがそう思った。しかし、


「え…」


 アザレアは声を漏らした。


 そのスピードを捉える槍閃が“ひるよし”の手元から繰り出されたのだ。


[γ‐10.軽量スピア“アルマロス”]


「なんだと…?」


 凄まじい轟音と共に、文字通り突き飛ばされたマヤ。


 金と銀が螺旋状に絡まった長槍“アルマロス”。槍の威力はマヤの勢いも相まってとてつもない威力を放っていた。もし、共鳴率の上昇による肉体強化が他よりも高いマヤでなかったら確実にコックピットを串刺しされていたほどだ。


 白黒の海まで飛ばされたマヤを見て、残りの三機は戦慄した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ