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ストーカー・ロボット  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
悲哀のウエディングケーキ“ひでお”
18/59

第十七話 vsスーツの怪人②

 登場人物能力値(パイロット勢)


 東雲朝顔 


 射撃:S 近接:B 共鳴率:E(不安定)頭脳:A 魂:A

 備考…解明者本来の力を使えれば共鳴率・頭脳・魂、全てにブーストがかかる。


 鈴木岸花 


 射撃:不明(まず銃火器を扱わない) 近接:S 共鳴率:B 頭脳:C 魂:S

 備考…近接戦闘のレベルはトップレベルだが性格上搦め手に弱い。


 鈴木桜 


 射撃:E 近接:C 共鳴率:D 頭脳:B 魂:C

 備考…あまり戦闘向きな性格ではなく、その優しい性格が欠点となり実力を抑えてしまっている。


 アザレア・ストック 


 射撃:F 近接:F 共鳴率:A 頭脳:A~C(隠れがちだが地頭が良くピンチに対する対処が上手い)魂:D


 備考…周りに頼ることがいい意味で上手く、サポート機であるパオトルと相性がいい。しかし、反面単体での力は霊媒機体・パイロット共に低いため一対一ではほとんど勝てない。


 パンジー・ガーベラ 


 射撃:B 近接:B 共鳴率:B 頭脳:C 魂:C

 備考…バランスよく全てをこなせる。周りの被害に気を配らなければ彼女の真価は発揮される。  


 ホーク・キッドの横に青色の霊媒機体が舞い降りた。


「アザレア…助かった」


「いいってことよ! 東雲、お前すごいな…こんな奴相手によく一人で拮抗できた! 俺も負けてられねぇぜ‼」


〔ホーク! 俺らじゃ火力が足りねぇ! 出来るのはマヤ達が来るまで相手の足を止めることだ。何とかしてバインド・ロックで足を止めたいから手伝え!〕


〔わかりました。――朝顔殿!〕


 朝顔はホークの声に応えて武器を選択する。


「アザレア、一瞬だ…逃すなよ!」


「任せとけ‼」


「ホーク・キッド! β‐32、β‐43、γ‐2‼」


〔承知!〕


 ホーク・キッドは両手に手の平に収まる武器を隠し持ち、γ‐2、大盾で身を隠す。


「突っ込むぞ‼」


 全推進力を費やしてホーク・キッドは“色付き”が生み出した生クリームの壁に突っ込む。


 朝顔はずっと見ていた。相手の技、そのメカニズムを。


 スーツ姿の“色付き”の生クリームの動きは二つに分けられる。ズバリ、質の違いだ。密度の薄いものと密度の濃いもの。スーツ姿の“色付き”は密度の薄い生クリームを大量に消費し物量で攻める時と密度の濃い生クリームを少量作り相手を弾くパターンがある。


 そして、密度の濃いロウのような生クリームは消費することなく、必ず自分の身の周りに戻し防御に転用する。


 朝顔が狙っているのは密度の濃い方の生クリーム。近づいて行けば必ず使用する、それを大盾に当たる生クリームの流れの強さで見極めていた。


 そして、ついにホーク・キッドが弾かれるほどの生クリームの波に遭う。朝顔はここぞと叫んだ。


「ホーク・キッド!」


〔うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ‼〕


 ホーク・キッドは密度の濃い生クリームの中にβ‐32を腕ごと突っ込み、そのまま生クリームに弾き返された。


[悪いな…君の命を喰らってでも、私は…]


 朝顔は生クリームが“色付き”の方へ戻っていくのを見てニヤリと微笑んだ。


「謝る必要はない…」


〔今です! パオトル!〕


 ホーク・キッドが手元のスイッチをカチッと押すと、スーツ姿の“色付き”の周辺にある生クリームが大きな爆発音と共に起爆した。


[なに!?]


 ホークは加えてβ‐43を空中に投げる。β‐43は発光する手榴弾。スタングレネードだ。


 ピカッ‼ と白黒の正解を侵食する黄金の光。密度の薄い生クリームは光熱によって溶け、“色付き”は一時の間、密度の濃い方・薄い方、共に使用不可の状況に追い込まれた。


 そこに音の腕が迫りくる。


「拘束しろ!」


〔バインド・ロック‼ YEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHッ‼〕


[―――ぐっ…!?]


 色とりどりの音で出来た腕が無防備の“色付き”を掴んだ。


 バインド・ロックでの拘束もそう長くはもたない。持って十秒、だが五秒後には次の攻撃が“色付き”を襲った。


 まるで黒い流星だ、身体能力を高めたマヤがロケットのようにパオトルとホークの間を横切った。


「ここまでだ…‼」


――共鳴率七十四%。


 一撃、二撃、三撃。


 右上方向から頭を、左側面から首筋、右側面から心臓を斬る。一瞬だ、目にも止まらぬスピードでマヤは“色つき”の弱点を切り裂いた。


[うがっ――ぐああああああああああ‼]


 そして――一つ目の“色付き”と同じように、スーツ姿の“色付き”から白い欠片が溢れ出る。それは朝顔にしか見えない光―――


「またか…‼ くそっ―――」


 欠片はオーロラのような輝きを放ち、朝顔に生前の記憶見せる。


 ☆


 それはある日の富士での出来事。


 大きな体をした中年の男性、英雄は富士山を登っていた。体は生気に溢れ、度々疲れたらガラケーを開き、待ち受けにしてる娘の顔を見て元気を取り戻す。


「お! すげぇすげぇ! 辺り一面森だぜ日奈子!」


「もう、はしゃぎすぎだよ大地君」


 彼がしばらく山を登ると、一組のカップルが整理されていない山道で、崖の上からカメラで記念写真を撮っていた。


 彼はカップルを発見するとすぐに血相を変え、立ち入り禁止区域の中に入っていく。


 すると、彼の到着を待たずに、カップルの女性の方がカメラを持ちながら石ころにつまづきバランスを崩した。


「――きゃ…!」


「馬鹿お前‼」


 女性は彼氏の方へ倒れこみ、二人は崖から落ちる。その瞬間、


「手を伸ばせ‼」


 大男が二人の腕をつかんだ。


 大きな手で二人の細い腕を包み込み、崖の上で踏ん張った。カップルは涙目で大男にすがりつく。


「――おっさん! ごめん、俺達…‼」


「いいから力を入れろ! 君たちには、まだいっぱいの希望が待っているんだ! 人間に生まれて、熟年夫婦を体験しないなんて勿体ない!」


「でも、私もう力が…」


「踏ん張れ! おっさんが頑張ってるんだぞ! 若い君たちなら私の百倍は頑張れるはず―――」


 彼がカップルに引っ張られながらも何とか引き上げようと足に力を込めた時、ガタッと地面が唸りを上げて欠けた。


 大男は崩れた地面を壊しながらも足場にして力を振り絞り、


「あああああああああああああああああああああ‼」


 カップルを一メートル後方へ投げ飛ばした。しかし、


「おっさん‼」


 彼は…“東 英雄”は足場と共に空中へ投げ出された。 


 カップルの男性は手を伸ばす、英雄も手を伸ばす。しかし、手と手が交わることはなかった。


(…死ぬ、のか? 私は?)


 ちょっと、ちょっと待ってくれ。と手を天に差し伸ばす大男。


「あと、あと一週間でいいんだ。神様…娘の、結婚式があるんだ。あと、少しでいいから…私の今までの人生から好きな一週間を切り取っていい、だから…‼」


 空気圧の檻に入れられ、彼は泣き崩れる。そして、祈るように、ただ祈るように彼は笑った。


――安心しなさい恵。大丈夫だ、例え足が折れても、例え遭難しても、私は必ずお前の結婚式には出席する。例え…


[――命を、落としても。]


 木々の隙間から差し込む光が、血だまりを明るく照らしていた。彼が最後に思い浮かべたのは大きなウェンディングケーキの前で微笑む娘の姿とその夫。そして…二人を涙ながらに見守る、大きな体に似合わない真っ黒なスーツを着た自分の姿だった。


 ☆


[行くんだ…結婚式…行くんだ…約束なんだ…]


 “色付き”はまだ絶命していなかった。


 もう虫の息ほどしかない。岸花とマヤは“色付き”にとどめを刺そうと短刀を振りかぶる、


「…成仏(きえ)ろ」


 右手に持った短刀を振り下ろす、その時、


「何の真似だ?」


 白き機影が騎士剣を握って黒き刃を受け止めた。



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