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ストーカー・ロボット  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
一 ツ目の怪物“つとむ”
11/59

第十話 ヒンメル

 今回で第一幕終了です!


 誤字、脱字等あったら教えていただけると幸いです。ps.二人目の評価くれたお方ありがとうございます。励みになります。心臓が破裂しそうなぐらい嬉しいです。

朝顔は“裏世界”でヒンメルに保護された後、目隠し用のアイマスクをつけられ手錠も付けられた。なんでも機密保持のためらしい。


 色々手遅れだろう、と思いつつもホーク・キッドの勧めもあって朝顔は渋々承諾していた。そして今、朝顔はある場所に連れてこられていた。ここがどこかわからない、だけど“裏世界”ではないだろうということだけは理解できていた。



「もう外していいぞ」



 朝顔はどこか聞きなれた声に眉をひそめる。


 少し厳格な、どこか和やかな女性の声を聴いて朝顔の手錠とアイマスクが外された。眩しい光に目を慣らしながら朝顔はゆっくりと瞼を開く。


「久しぶりだな、朝顔」


「あなたは…菫さん!?」


 目の前に立っている、紫髪の女性を朝顔は知っていた。彼女は嫁菜の姉であり、朝顔にとっても姉のような存在だった女性、高嶺菫だ。真っ白な部屋で白衣のような制服を着て彼女はそこに存在していた。


「嫁菜の姉であるあなたが、なぜここに?」


「ここが職場だからだよ。私の話はいい、手っ取り早く段取りを進めよう。朝顔、お前ヒンメルのパイロットになる気はないか?」


 朝顔は唐突な質問に少し驚くが、確固たる意志で答える。


「断ります。あんな世界、関わるべきじゃない」


当然だ、あんな経験をして裏世界に関わりたいと思うはずがない。どこかで一歩間違えていれば朝顔の命はすでに終わっている。


「そうか。それなら私たちはお前が“裏世界”で経験した記憶を消さなければならない。それでもいいか?」


 記憶消去。当然と言えば当然だろう。こんなマスコミが好きそうな摩訶不思議な世界を隠しているのだ、それぐらいの術をもっていてもおかしくない。


「構いません」


「話が早くて助かる。では、すぐ実行に―――」


 菫が話を終わらせようとすると、突然、紳士風な男の声が室内に響いた。


〔菫殿。残念ながら記憶の消去は難しいかと〕


 どうやら通信のようだ。朝顔は校内放送の音響を思い出していた。


「ホーク・キッド、理由を述べろ」


〔御主…東雲朝顔殿が解明者であるからです〕


 先ほどまで淡々としていた菫の表情が歪んだ。


「なんだと? まさか、お前が冗談を言うとはな」


〔いえ。ほぼ確実かと。彼は表世界にいながら裏世界にいる私の声を聴き、尚且つ初めての搭乗で共鳴率が六十%を越えました。初めての搭乗でこの値を叩きだせるのは二パターンのみです、一つ目のパターンはあり得ませんから、間違いなく…このまま放置すれば、またいつ裏世界に巻き込まれるかわかりません〕


 菫の表情が徐々に汚いものに変わっていく。


 菫は暫し考えたあと、屈託のない笑顔で朝顔に語りかける。


「朝顔。お前、ヒンメルに入れ」


「はい? 入らないってさっき…」


「報酬は十分な物を約束しよう」


「いやいや…なんと言おうと僕はもう関わりませんよ」


「そうか? なら、お前が日々嫁菜のストーキングをしていることを本人にバラすぞ」


 朝顔の顔が真っ青に染まる。


「な、なに言ってるんですか? 僕が行っているのは警護です」


「では試しにお前が電柱の陰から嫁菜を凝視している画像をばら撒いてみようか」


 そう言って菫は机の引き出しから電柱に身を潜める朝顔の間抜けな写真を大量に取り出した。朝顔が「いつ撮ったんですか…?」と恐る恐る聞くと菫はニコッと笑顔で返した。美しい容姿を持ちながらいまだに彼氏ができないのはこういう部分のせいだろう…と朝顔は分析する。


「万が一、僕の行いがストーキングだとしましょう。しかし、そこに愛情があれば、それは本当にストーキングなのでしょうか?」


「まぁ、ストーキングだろうな」


 菫はため息を交じりに自身のデスクに腰を掛ける。


「ではこうしよう。まだ入るかどうかはいい、とりあえず、私からの電話には必ず出ろ」


「いや――――」


「それが出来ないなら、私は妹のために全力をもってお前を訴訟する。以上、今日は帰って良し」


「相変わらずめちゃくちゃですね。菫さん…」


「お前、自分はめちゃくちゃじゃないと思ってるのか? 相変わらず面白い感性だな」


 お互い様だ。


「わかりましたよ。電話に出るだけでいいんでしょう」


 朝顔は渋々承諾する。


 朝顔は溜息をつき、強張った肩を解きほぐすと途端にフラッ、と足元が揺らいだ。


「あ…れ?」


 立ち眩みというやつか。朝顔はドライアイでもないのに乾ききった自分の瞳をこすってかなり体力を消耗していたことを理解する。


「当然だな。生身で“裏世界”に放り出され平気なはずがない。車を遣わそう、今日はゆっくり休め」


 菫がパチンと指を鳴らすと扉から部下と思しき二人組が朝顔に肩を貸した。


「--------」


 菫がなにか部下に言っているが朝顔の耳には入らなかった。


…代わりに、眼帯をつけた男の子の姿を朝顔は見た。


 薄れゆく意識の中、朝顔はしっかりと彼の言葉を聞き、返答する。


「ああ、心配するな。大丈夫だよ」


 朝顔が呟くと、少年はニコッと笑い。はるか上空に消えていった。

 



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