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本気

どうも皆様、なんだか大変な目に遭っている(たくみ)です。

会話の流れで喧嘩を売ってしまい、相手が乗ってしまったのが運の尽き。

ただ、1対1(タイマン)の勝負になっているから、そこは運が良かったのかな。

が、しかし…。

騎士の連れが遠回しに観戦している模様で…

いざとなれば相手は数人がかりで数の暴力にも訴えてくる可能性がある。

その点、気は許せない状況である。

なお俺は一人。孤立無援、四面楚歌、背水の陣である。


頼りにできるのは、俺が今持っている能力(アビリティ)

俺の考えが正しければ、チート並みの性能であることは間違いないだろう。

だが、まだ仮説の段階である

その仮説というのはだな、創造クラフトという能力(アビリティ)は、どうやら自分が欲するモノを、MPを消費して生みだすものだと俺はみている。

根拠は、先程能力アビリティで作り出した雷鎧(ライカイ)だ。

んで、本当に仮説通りだとすれば。

確実に、本来ならMPをごっそり持って行かれる代物に違いない。

何せ、『何でも』願いが叶ってしまうのだ。

そして『何でも』叶ってしまうのなら…

少し言い方がおかしいが、こんなもんだろう。

モノを生み出すんだから、勿論代償は必要だ。

そのモノの代わりの代償…

俺が読んでいた某マンガでは、兄弟が死んだ母を甦らせるため、禁忌を犯してまで錬金術をやったのだが…。

その際に兄は片腕と片脚。弟は体を代償として失った。

まぁ、その兄弟がやったのはあくまで禁忌だったからな。

俺が出した雷鎧(ライカイ)は普通にMPを消費して終わったみたいだ。

ただMPが底無しなせいで、いくら消費したのかが分からないのが今後の問題点だ。

贅沢な悩みだな。余りに()り過ぎる魔力を持てるなんて、な。

あとこの雷鎧ライカイ、出してる間MPは消費され続けているのだろうか…

うーむ、分からん…。


「どうされましたか、姫様?」


…っあ、やば。少し考え込んでしまった。

そうだよな、今は戦闘中だもんな。

だけどなぁ…戦いたくないんだよなぁ。

多分だけど、力加減間違えたら、相手死んじゃうし。

でも取り敢えず返事だけは返しておこう。


「いや、なんでもない。ただ」

「ただ?」

「試したいことがあってな」


仮説を裏付けるため、それと戦うための武器。

どうせなら威厳があって、使いやすそうな武器が。

あと、ゲーム内だし、そういうファンタジーっぽいのがいいね。

何がいいかなぁー。そうだなぁー。

…よし!

死神の鎌っぽいのがカッコよくて良さそう。

前から使ってみたいと思ってんだよね。

時間もないし、そうしよう。

使いやすさの面は無視して、ロマンに走る俺。

男ならそうあるべきだと俺は思う。

(ゆえ)に、いざ能力アビリティを発動っ!

雷鎧ライカイを出した時同様に、目を閉じて脳内で妄想イメージする。


《スキル:死神の鎌(デスサイズ)を習得しました》


システムボイスが聞こえたので、目を開けると。


「ふむ、イメージ通りだな」

「なんですか、姫様…その武器は…?」


目の前にソ●ルイーター風の鎌が地面に水平に浮いていた。

手で持つための(つか)の長さは2mぐらいか?

刃渡りは1mほどで、内側で斬れる感じ。

どういう原理で作り出されてんだか。しかも浮いてるとか…

重力仕事しろよなー。

でもこれで俺の仮説はほぼあっていると言えるな。

困惑してる騎士をみるに、この世界にこの武器は無いらしい。

それもそうか。

ネットの掲示板でみたことあるが、相当使い勝手が悪いと聞くし。

俺は当分この死神の鎌(デスサイズ)を使っていこう。

武器に魔法攻撃乗せて攻撃でもすればいいし。

浮いている俺の相棒(当分の間)を無造作に手にして開戦を告げる。


「待たせたね。始めようか」


とは言ったものの、どうしようか。

あ、武器制作のついでに…

闇属性の炎みたいなのを纏ってみるイメージをだな。


《スキル:闇の支配者を習得しました》


脳内でまたもや聞こえた。

でも今回は目を瞑っていないぞ?

…ふむ。

実は目を瞑ったり、イメージしたりする工程…いらなかったんじゃないのか?

…うっわ、恥ずかしい…

闇の支配者も、ネーミングが中二病過ぎて辛い。勿論精神的にな。

やや精神(メンタル)にダメージを負った俺だが、無事相棒に属性を付与できたみたいだ。

鎌をかざしたり、鋭く振ってみると、黒い線が尾を引く。

見た目は完璧だな。

あとは性能が良ければいいのだがな。


鎌を持ち直して、草原を駆ける。

何故だか不思議と体は軽く、何をすればいいのか分かっている気がする。

接近し、鎌を横薙ぎする。しかし鎌は虚しく何も斬れないまま紫色の尾を引いた。


「…ふむ」


勘で即座に頭上へ鎌を向ける。

攻撃ではなく、防御をしなければならないという勘が働いた。

こういうのはゲームで鍛えられたからな。

最初の頃なんて武器の振り方も知らなかったのに。

やっぱ経験は大事なんだよね。

俺の青春は無駄じゃなかったんだ…。

あれ…目から汗が…。


心の中で阿呆な会話を繰り広げていたら。

案の定、構えた直後に凄まじい衝撃が、持っていた柄を伝って直に感じる。

どうやら騎士は横一線の攻撃を跳躍して(かわ)したらしい。

そして落下する威力を加えた一撃を、俺に放った、と。

当たっていたらやばかったかもしれないな。


「姫様、貴女(あなた)は本当に姫様なんですか…?」


剣と鎌を交えつつ、聞いてくる騎士。

力はだいたい同じなのか、引きもしないし押しもしない。

これが拮抗してるってヤツか。

そしてその剣の後ろには騎士がこちらを睨んでいる

相手の眼は本気そのもの。

もう演技だとか言ってられないな。

質問の内容を見るに、どうやら俺の推測は当たっていたみたいだ。

つまり、何かしらのバグで異世界へ来てしまったらしい。

正直、信じたくはないがな。

可愛い妹様に会えないなんて辛すぎるし。

でも、この現実味(リアリティ)のあり過ぎる現状では、もはやゲーム内という実感は湧かない。

視覚、聴覚から肌が感じる空気。

それらがすべて現実世界の物と大差ない。

某オンラインゲームでも、そこそこ現実味(リアリティ)はあったが、さすがに限度があった。

空を見た時から違和感はあった。

そもそもゲームの開始地点とか意味不明だったし。


「俺が何者なんて…関係ないだろう」

「私には大いに関係ありますッ!!」


俺が曖昧に答えると、相手は何故かキレ気味である。

相手は初対面で、何かやらかした記憶はございません。

しかも姫様じゃないし、明らかに無関係の無実。

身の潔白をここで申し立てまする。


…あ、いや待てよ?


そういえば…。

俺の外見が女の子ぽかったのがいけなかったか?


「あー。多分見た目が似てただけじゃないかな?」

「…何がですか?」


質問を質問で返すなよなぁ。

しかもなんだよ。何がですかって。

こちらこそ何がですかと問いたい。


「俺の容姿がその姫様に似ていただけ、それだけの事じゃないかな?」

「そんなはず…」


お、困惑してるぞ。

若干(じゃっかん)だけど、剣を押す力が弱くなった。

こいつ姫様に惚れてるんじゃねえの。

多分そうだな。

そうに違いない。

なんて名推理だろうか、これならあの『体は子供、頭脳は』の探偵も俺を認めてくれる。

嬉しくないけど。

そもそも次元が一個下の住人だしな。

会えるわけないね。

それに、あのアニメ、それほど好きって訳じゃないんだよね。


いやぁ、それにしてもだな…思い人がいたら護衛なんてやりづらいだろうに。

人質に取られたりするから、そういうのはなるべくいない方がいいのは勿論だよね。

なのに、恋するお相手は姫様。

護衛する騎士とお姫様。

叶わぬ恋の物語…辛い、辛すぎる。

騎士が何故その姫様に惚れちゃったかは知らないけどさ、今の俺には関係ないよね。

そもそも、そんな物語はさ、少女マンガでやってくれよ。

ってことで。


「もう決着を付けようよ。」

「そんなはずッ…私は貴女を見間違えるはずがない!!!」

「ウザいなー…人違いだって言ってるじゃないか」


押しが弱くなっていた剣に力が入ったのか、やや押され気味になっている。

この人力強いんだな。

いや、これは恋の力に…やめよう…虚しくなるだけだ。


剣が近付いてくると、必然的に騎士の顔も近くなる。

その顔には悲しさと、現実を認めたくないという顔をしている。

どんな顔だよ!、っと言われましてもそういう顔をしています。


「貴女の声、お姿は姫様そのもの…」


マジかよ…

俺の作ったアバターが姫様そっくりとか、どんな偶然なんだよ…。

そもそも…こいつが惚れてたの、姫様だよな。

俺(厳密には俺のアバター)が姫様と瓜二つ…。

騎士は姫様に惚れている。


つまり、つまり…と、いうことは?

一国の護衛騎士を惚れさせる程の可愛さ、って事か。

俺のセンスも捨てたもんじゃないな。

自分の評価を改めつつ、気は抜かずに相手を見つめ返す。

おや、ちゃんとみれば整った顔つきをしているじゃないか。

かなりのイケメンだ。

短髪で黒髪、目は二重だし、鷹のような目をしている。

苦手な人は苦手かもしれないが、大半の女子は落ちるだろう。

しかし、姫様という誤解を解かねばならない。


「いやいや、本当に違うんだって。」

「ならば、姫様はどこに行かれたのだ!」


交わっていた鎌が思いっきり弾かれる。

ついでとばかりに少し後方へ下がりつつ、これまでの会話を吟味(ぎんみ)する。


…んー。


『また抜け出しておられたのですか!』

『世話が焼けるな…妹様は静かで勤勉家であらせられるというのに…』

『ならば早く城へ帰りましょう!皇女様と王様が心配なされておいでですぞ!!』

『姫様、何を言っているのが知りませんが、我儘もそこまでにしていただきたい!!』

『なるほど。外出もきっとそういうことでしたか』


これまでの会話から察するに、逃走した姫様を探していると。

姫様は姉で、妹がいる。

姉である姫様は妹に比べ勤勉家ではなく。

しかもその姫様は我儘(わがまま)で、サボリ癖がある。

さらに無断で城から抜け出すことが多く…


…イカんな。この姫様能力値(スペック)が弱そうだ…。

だから騎士たちが揃って落胆したような態度を取って、


『フェル、お前姫様がどれほど弱いか分かって』


なんて言ってたんだな。

しかも妹は優秀ときたら…

抜け出したくなる気持ちも分かる。

日頃から比べられて生活してきたんだろう。

心情をお察しします。

でも、だからと言って、疑いを晴らさねばここを立ち去れない。


「どこへ行ったかなんて知らないよ」

戯言(たわごと)はお辞めください…私は本当に…」

「…え?」

「本当に心配したんですよ…」


どうやらまだ姫様だと思ってるようだな。

眼に涙を貯めてるイケメンなんてナカナカ見られたもんじゃないぞ。

てかズルいよなー。

顔偏差値高いだけで何でも似合うなんて…。

泣いてるお姿もイケメンだ。


「貴様は勘違いをしている。何故気づかない」

「勘違いなどしておりません。私との思い出をお忘れになられたのですか?」


いや、知らん。全くの、全然だ。

政治家の『記憶にございません』レベル。

あー、でもここで使っちゃうと何かしたけど覚えてません、ってなるのか。

もしくは覚えてるけど、知らねえよとトボけているか。

両方ともOUTだけど。


「分からん。しかし、お前の慕っている姫様は、こんなに強かったか?」

「…確かに姫様は、それほどのお力をお持ちではありませんでした。」

「ならば分か」

「姫様に…取りついた悪霊、ですね。」

「…!?」

「私が…姫様をお救い致します。」


こいつ…どこの宗教に入ってんだ…

昔、どこぞの国のどこかの宗教の偉い人が、ある人に『悪霊が取りついてる』なんて言ったそうじゃないか。

それで疑わしいと思われる多くの人を拷問とかグロい事して、殺したり…。

副産物で拷問用の器具ができて、沢山増えたらしい。

そういうのをどっかで見たことあるな。

でも大抵は無実だったり。

考えれば分かることなのにねー。

今となっては拷問なんてお目にかかれんし、したいとも思わないね。

それに俺は人を殺す事を(いと)わない宗教の教えとか好きじゃないんだ。

生物には等しく命があるんだし。

神がどうのこうのと言って殺戮を繰り返すのは、クダらない。

あくまで自論だけど。

てか、何故俺が悪霊っていう認識になっているんだ?

理解できんぞ。


「その禍々(まがまが)しい武器といい、不気味な色といい…」


どうやら武器と属性がいけなかったらしい。

確かに不吉な色だとは思うよ、属性の紫色なんて。

でもさ、(ロマン)武器にまで文句付けるのやめろよ。


「勘違いの多い男だな。女に嫌われるぞ?」

「悪霊に嫌われても問題ないさ。私は姫様が好きなんだ」

「決して叶わぬ恋を…貴様、分かっているんだよな?」

「…あぁ…」


コイツ殺してやりたい。

スラッと告白しやがった。

罪を告白するじゃなくて、好きを伝える告白。

これだからイケメンは嫌いなんだ。


「せめて、目を覚ませ。馬鹿騎士が」

「悪霊が…姫様の口で汚い言葉を…」

「貴様では俺を止められんよ」

「…だとしても…私は諦めない!!!」


そろそろ戦闘自体に飽きてきてしまったので、会話している隙にスキルをいくつか量産しておく。


《スキル:詠唱短縮を取得しました》

《スキル:瞬間移動(テレポート)を取得しました》

《スキル:学習を取得しました》

《スキル:自己再生を取得しました》

《スキル:痛覚操作を取得しました》

《スキル:制限解除(リミッターカイジョ)を取得しました》

《スキル:思考加速を取得しました》

《スキル:改変を取得しました》


思いつくままに、取り敢えず作ろう。

無いよりかはあった方がいい。

あ、そうだ。

さっきの闇属性の炎をだな…


《改変を使用し「闇の支配者」を「精霊を使役する者」へ移行します》


ほお、やっぱ適用できるんだな。

適当に念じても、いまのところ全部スキル化できている。

やっぱり俺のスキルはチートだったらしい。


スキルの「精霊を使役する者」って…

属性=精霊なのか。

初めて知ったぜ。

これから学ぶこと多そうだな。


《スキル:精霊を使役する者を習得しました》


スキルの改変が終わったのか、鎌に纏わりついていた闇属性の火である紫色が、全属性である七色に変化する。

炎が蛇のように鎌の刃の上で踊っている。

動きは不規則で、時には混ざり、また分裂して動き回る。

少し幻想的な光景だな。

色は七色あるが、蛇が無数にいて、数はランダムっぽい。

炎のエフェクトだけを見ると、凄そうな武器に見える。


しかし、何故だろうか…不思議と熱くない。

中学生の時、理科の実験でガスバーナーを使用したことがあるんだが、それがもう少し明るいぐらいの炎の色なんだが…。

もしかしたらただの炎ではないのかもしれない。

そこんとこはわからないけど。


七色ということは、属性は七つあるんだな。

分かりやすくていいや。

色は赤、青、緑、黄、紫、白…と黒?

黒色ってなんだ?全部混ざった色が黒とか…かな。

まぁ今はどうでもいいことだな。


「どうやら、本性を現したようですね。悪霊め」


早く勘違い騎士を黙らせるために、ここからはチートを使わせてもらいますか。








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