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日常

白い龍攻略したのが絶頂期だったのか、その日以降は全く勝てなくなった。

まるで呪いでも掛かったかのように。


「なんでだ…?装備も良いのを付けているのに…」


ペットボトルを片手に考える。

装備が良ければ後はプレイヤースキルである。

つまりはテクニック。これが無ければ本当にキツいのだ。

立ち回りやスキルの使い方…それによっては弱い装備でも戦っていける。

まぁ、さすがに限度はあるがな。


「考えても分からないときはしょーがないよなぁ」


窓に掛かっていたカーテンを一気に開ける。

気分転換は大切だよな、と心の中で思ってみたり。

暗さに目が慣れ過ぎていたせいか、太陽の光が眩しい。

何時ごろだろう…。

ベットの脇に置いてある時計を見てみる。

ちなみに、今日は日曜日で学校はない。

休みがあるのは最高だと心底思える。

何せ授業はつまらないからだ。

一コマ50分間ひたすら机と見つめあっても何も生まれないし、楽しかったためしがない…。

真面目に受けてないのも理由の一つだろうが、科目その物に対して興味が無いのも理由だな。

時計の時刻は丁度昼頃を示していたため、昼食の献立を考える。

財布のことを考えるなら、自炊。しかし、作るのは面倒である。

確かに食材は冷蔵庫にある程度は揃っている。

記憶が正しければの話だがな。


「炒飯を作ろうか…炒めるだけだし…」


手に持っていたペットボトルにフタをして冷蔵庫に戻す。

そのついでに中の食材を見回す。


「キャベツに卵、玉ねぎにネギとニンジン…ピーマンもあるな」


ご飯も昨日夕食で食べきれなかったのがあるしな。

在庫はなるべく使っていかなければ…

節制は大事と、どこかの奥様も言っていたような気がする。


『妹様が参られました。』


あれこれ思案していると、無機質な声でッハと我に返る俺。

どうやら来客がいらっしゃったようだ。

これは数年前にできたシステムで、特定の人を登録、設定することで勝手に出入りできるのだ。

んで、来た際にはきちんとログに乗るし、音声で来たことを告げてくれる。

便利な世の中になることは勿論嬉しいことだし、どんどん増えていって欲しい。

ただ、言っておくが俺がこのような機能を設定した覚えは一切無い。

心辺りは大いにあるが、愚問であるな。

それと、部屋の片づけができてないのに、来られるのはちょっと…。

あと心の整理と対振動に耐える準備がまだ


「おにぃちゃんっ!」


元気な声と共にお腹に温かい体温、そして凄まじい衝撃が体を襲う。

毎度このアメフトの様なスペシャルな抱き付きには慣れないな…

若いからできることだけど、歳食ってたら絶対背骨逝ってる衝撃だし。

なんとか振動に耐え、無理矢理笑みを作り、愛しい妹様へ向ける。


「昨日ぶりだな、四夜よや

「だね~…えへへ」


服に顔を埋めながら喋るとは、息苦しくないのだろうかね…

まぁ、本人が笑顔でやってることだし、別にとがめる気は無い。

それにしても、久々の兄妹の再会みたいになってるな。

だけど実際は文面通り、昨日会っている。

しかもほぼ一日中一緒に過ごしたし…

普通休みの日といえば、友人と遊び、過ごすものではなかったのか?

それとも、ただ俺の知識が古いのだろうか…

少なくとも、俺が幼い頃は遊び呆けていたんだ。

しかし、実際の兄妹は土曜日日曜日は一緒に過ごさねばならないのだろうか…

もしかしてこのまま未来永劫みらいえいごう続いていくのか?

疑問がどんどん降り積もっていくが、考えてばかりではイケないな。


四夜よや

「なんですか?おにぃちゃん」

「その呼び方変えてくれないか?」


俺の妹である小崎 四夜よやは6歳下の小学校4年生である。

容姿は兄である俺が言うのもアレだが、可愛い部類だと思われる。

おにぃちゃんと呼んでいても特に問題は無いと思う(多分)が、呼ばれる側が恥ずかしいのだ。

あと、たまに物凄く険しい表情で睨んでくる方々がいるんだな、うむ。


「えー…やだよぉ」

「あー…そうか…」


たった一言、妹様からの答えで汗びっしょりな俺。

自分でもこの返し方はあまりにも情けないとは思う。

だがしかしッ、情けない返答だと思うべからず、だ。

何故だと?

良かろう、答えてやる。

答えは単純明快、泣かれたら困るからだ。

この「えー」という時点で妹様はすでに瞳に涙を貯めていたのだ。

女を泣かせるなんて紳士の風上かざかみにも置けない奴だと俺は思う。

であるから、この対処は間違っていない、ハズ…だよな。

…あー、情けねぇ、俺。

まぁそんなことは置いておくとして、来た理由を聞ければ何か解明できるやもしれん。

何が解明されるかは知らない。

知ってはいけないし、考えてはならない。

勿論、突っ込みはいらない。察するんだ。

KYとは呼ばれなくないだろう?なら今すぐその口を閉じるんだ、いいね?


「それで、今日はどうしたんだ?何か用でもあったか?」

「ぅうん、特にないけど…」


首を小さく左右に振る。

両手は胸の前で拳を作っている姿が、栗鼠リスに見えた俺は眼科に行った方がいいんだろうか…

だがまぁ、用も無いのに訪ねてくるとは、世の中の兄様たちは妹様たちに頭が下がりますな。

俺の住んでる場所と四夜よやの住んでる町遠い気がするんだが…ま、気のせいだ、うん。

それにしてもだな、返答に困っているのか、それともトイレに行きたいのだろうか、体をもじもじとさせている妹様よ…

できればそろそろ昼飯を作らせてほしい…。

このままでは飢えて死んでしまうよ…嘘だけど。

昨日、四夜よやが帰った後ひたすらゲームに精を出してから約10時間、睡眠から水分、食事を取っていないのだ…察してくれ。

っと、そんなこと言わないし、求めないけどね。


「まぁ、いいや。昼食べてく?」

「え、あ、はい!食べます!食べていきます!」

「炒飯だけどいいよね?」

「おにぃちゃんが作るならなんでもいいです!」

「そ、そう言ってくれると嬉しいよ」


表情豊かな妹様には尊敬の意を覚えるほどである。

さっきまでの悩んでる表情から一転、ぱぁっと向日葵ヒマワリも裸足で逃げ出すほどの眩い笑顔…

一体どうやって行っているのか、未だに兄である俺にも解明できていない。

いつの時代も女の子って不思議だよな。


―――


「「ごちそうさまでした」」


少し遅めの昼食になってしまったが(俺は朝飯とねているがな)。

ニコニコ顔の表情から見るに、お口には合っているようだ。良かった。

もし不味いなどと言われれば、俺の心は折れてしまっていただろうな、何せ豆腐メンタルだから。


四夜よや、この後何をしようか?」


皿を片づけなら、机を挟んで向かい側にいる妹様へ問うてみる。

俺の室内ではできることが限られる。基本何も置いていないからだ。

自称普通な男子高校生である俺だが、実際冷静に部屋を見回すと案外異常なのかもしれない。

室内に置いてあるのは漫画、ゲーム機、ベットと家電品全般。そして机である。

…ふむ、結論でいえば、室内は普通で、俺の思考が異常なだけであったようだ。


「ふぁ…四夜よやは少し眠たいのです…」

「そうか。ベットで少し休むといいぞ」

「ありがとうございます…それじゃあ…」


瞳を袖で擦りつつ立ち上がりベットへと向かう妹様。

特に警戒もしないで眠れるのは長年一緒に暮らしてきた兄妹だから可能な事である。

どうだ?羨ましいか?えぇ?

しかしながら、相当眠いのか足元が覚束おぼつかないのが心配である。

転んだりしてその綺麗な肌に傷でも付いたらと思うと…


四夜よや、ベットまで運んでやるよ、ほら」


お姫様ダッコで抱き上げ、そのまま運んでいく。

別に俺はシスコンとかそんな属性付いてませんからね…

妹様の体重は軽いから運ぶの簡単で楽だわぁ。

そしてすでに腕の中で眠っている妹様。

まだベットにまで着いてませんよ…

抱き上げてベットまで運ぶほどの心配をしたのは、前科があるからである。

犯罪ではないよ?事件ではあるがな。

2年前の春、気温が適度に良く、絶好の昼寝日和であった日の事である。

妹様が室内で転び、頭部を強打した事があったのだ。

結果、両親は大慌てで救急車を呼び、近所で噂される事件となってしまった。

高校1年生でそんな事態になられては俺が非常に困る。

何せ一人暮らしのハズの場所から、幼い少女が担架に乗せられて運び出されるのだ。

警察沙汰だよ。社会的に死んでしまってはもう自殺しか選択肢は残らないだろうね。

いや、勿論の事、怪我の心配もありますとも。何せ兄妹だし。

という事で取り敢えず俺が寝ていたベットに妹様をそっと寝かせる。

上から布団を掛けて、任務完了である。

すやすやと眠っている表情は天使のようだ…

何時間でも眺めていても飽きないね。


「さて、どうしようか」


傍らでひたすら見つめ続けていたら犯罪者と言われても仕方がないし。

妹様にはどうもしませんが、休日だしやっぱりあのオンゲでもやるかな。

一人生活の学生の財布からしたら大金だったしな、アカウント買うだけでどんだけ持っていくんだか…


「困ったときはパソコンだよな」


2年前、誕生日祝いで両親に買ってもらったノートパソコンを引っ張り出す。

若干ながらほこりを被っていたが、電源を付けて操作しても特に異常はない。

動作とかには支障はないな。

こういう時って案外ハプニングやら起こるはずなんだけど、何もないと拍子抜けだな。

このパソコン、インターネットとかの利用は全然大丈夫なんだけど、ネットゲームとか大型オンラインゲームをやろうとすると処理落ちしてしまうのが難点なんだよな。

そろそろ買い換えなきゃならんか…。

某オンラインゲームについて検索していると、新しいハードが発表されていた。

ハードイコールゲーム機本体なのだが、形状が多くある。

指輪状から腕に通すタイプのリング状まで。

ちなみに俺はなんとなく輪状を使用している。

そして今回発表されたのはその輪状ハードに、さらに容量追加+限定アイテムとのこと。

こういう限定とか特典に弱いの知ってての策略だからなぁ…

欲しいけど、値段を見て、ゆっくりパソコンの電源を落とした。

落とす前にチラっと[【即死回避】の不具合について]という文字が見えた様な気がする

だけど火の車である財布の事で頭がいっぱいで、そんな不具合なんてモノに思考を割く容量はもう残っていないのだ…

…残念だが…今月は厳しいな。


パソコンの電源を落とした後、床に毛布を敷いて壁に寄り掛かる。

今から某オンラインゲームにログインをするのだ。

ログインする際に、注意しなければならないことがある。

それはプレイする環境だ。

このゲーム、遊んでいる間は意識が体を離れてしまう。

であるから、安全な場所でしかやらない方が良いとされる。

ま、当然と言えばそうだろうな。

何せ遊んでいる間に誘拐されても気づかないのだし。

下手をすれば殺されるかもしれない。

滅多にないだろうけれどね。

でも最近は対策として、物が近付くとハードが反応して、強制的に意識を呼び戻したりする機能が備わりつつある。備わりつつある、というのはたまに誤作動で落ちてしまうから買わない人がいる。

んで、その人向けに対策機能無し版が売られている。

個人的についてた方がいいとは思うんだがな。なんでだろうね。

一人でいろいろと思考しつつ、ゲームをする準備ができた。

さて、いざ参ろうか。俺の楽園ヘヴンへ!


「ゲーム開始、アカウントパスたくみ

『認証しました。お気をつけて』


視界が一瞬ブラックアウトして、ゲーム内へと意識が移る。

最初は戸惑いもしたが、最早もはや慣れだな、こりゃあ…


―――


どれぐらい時間が過ぎたんだろうか…


何故か重い目蓋まぶたを開けると、綺麗な蒼い空が見えた。

あとなんか大きな木の枝と葉っぱもついでに。

やたらグラフィックが凝ってるステージだな…

現実の風景と大差ないぞこりゃあ。

どうやら仰向けの状態で始まってしまったらしい。

いつもなら大きなギルド内とかでのゲーム開始になるんだがな…

何か新しいイベントでもやっているのか?

ランダム開始、とか?

意味が分からん…

運営側の方に

『いつも同じ開始地点じゃ面白くないですよ!!』

とか言ったプレイヤーがいたりしてな。

だとしたら、ナイス文句だぜ!

って、ま、いいか。そんなのどうでもいいよな。取り敢えず起きよう…


「ぁ…痛い…なんだ…?」


体を起こそうとすると、後頭部にズキンッと痛みが走る。

どこかに頭でもぶつけたのかもしれない。


「っていうかいつぶつけたんだよ…」


まだログインして間もないんだぞ、一体どこでぶつけるって言うんだよ。

痛みをこらえて、なんとか体を起こす。

周囲を見ると高い木々に囲まれていて、どこかの森林の中にいるみたいだ。

なんかよくわからんが、まず人がいるところを目指さないといけないな。

一面草、草、草、草…緑まみれだよ…

何もねえじゃん…

どこだ、ここ??









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