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侵入者

「私、実は魔族と人間のハーフなの」


 なんか一代決心したような感じの面持ちでルナが言う。

 こちらを見据える視線と、膝の上に固く握られた拳からかなり勇気のいる言動だったと察せられる。

 でもなあ…ルナには悪いけど…


 どういう意味なのかが分からない。

 

 意図が掴めないし、魔族と人間との間に生まれた子が異質みたいな言い方をするルナには賛同できない。

 この世界にいる人間と魔族っていうのは、俺の言葉に置き換えれば、日本人と外国人みたいなもんだ。

 んで、日本じゃ異国の人なんて近所に住んでいて、目の鼻の先にある。

 昔は戦争をしていたらしいが、もうそんなもの歴史でしかない。

 所詮過去の遺物だ。


『それで?』


 過去の物に俺は意味を見出せない。

 しがらみはあっただろうが、過去は過去。

 未来は前を見ないと先へと進めないのだ。


 俺が声を掛けると、途端にルナは顔を伏せた。

 何を言いたいのか分かっているだろう、という感じだな。

 しかし…察してやれない。


『…この事はまた別の機会にしよう』


 話していてもらちが明かないと思い、話を切り上げる。

 分かったのが、魔族との間には因縁に似た、深い溝があるということだ。


 俺の言葉は聞こえているんだろうが、まだ顔を俯かせて動かない。

 何か考えているんだろうか。

 創造でスキルを生成して無理矢理見ることもできなくはないが…

 さすがにそれは信用を失ってしまう。

 そうなると、せっかくできた足がかりが消えてまた時間が掛かる。

 これは無駄なことであって、出来る限り無くさねばならない。


『それじゃあ、おやすみ』


 一声掛けてから、また部屋のドアをすり抜けて外へでる。

 この年頃はやたらと悩みが多い時期。

 だが、俺はそんな悩み事を解決させてやれるほど万能じゃない。

 創造というスキルを持っているだけの、ただの幻獣。

 元々人間だったかもしれないが、今いるこの世界じゃ関係無い。


 窓から月明かりが差す中を、ふらふらと浮遊して行く。

 前回は阿呆みたいに道に迷ってしまったが、今は絶対記憶がある。

 だから今のうちに城の内部を把握しないといけない。

 いざという時に役に立つし。

 それに…あのルナの母親…

 もう一度会わなければならない。

 恐らく何か鍵を握っているのだろう。

 幻獣のことも、人間と魔族のことも。


「侵入者だ、全力で探し出せ!」


 丁度廊下の角を曲がった時に男の声が聞こえた。

 何事かと顔だけ覗かせると、完全武装した騎士たちが並んでいた。

 数は…12人ぐらいかな。


 隊長と思しき騎士が指示を飛ばしている。

 そして騒々しい足音を響かせて騎士たちは散って行った。


『侵入者…ねぇ』


 この城はこの国の王の所有物じゃなかったっけ。

 そうだとすれば…

 他の国の者かな?

 どういう用事かは知らないが、暇つぶし程度に見てくるかな。


 と、言っても敵を感知するスキルを持ち合わせていない。

 だからここは…


『創造でスキルを生成する!』


 本当クソゲーだな、これ。


《感知を習得しました》


 さて、感知を発動。

 すると目の前にマップみたいなものが現れる。

 例えるならGoxgleマップかな。

 人差し指と親指で拡大、縮小ができるところもなんだか…

 うーん、この…

 チートを使ったゲームって便利なんだけど、やっぱ面白くないよな。

 まさに今の俺状態。


『さてさて…と?』


 地図はこの世界全体を移していたらしく、世界地図になっていた。

 これだと探しようがないので適当に縮小をしてみる。

 悪戦苦闘しながら拡大と縮小を繰り返していると、右上に人の形をしたアイコンを見つけた。


『これはあれか?人を探すための?』


 人の形をしたアイコンの下にはゴブリンっぽいアイコンもある。


『てことは、その下の矢印マーク…』


 地下鉄の案内版とかによくかかれているあのマークである。

 これは恐らく。


『ポチっとな』


 躊躇いなく押す。

 ピコン、とゲームで定番の音がなり、世界地図の一か所に表示される。

 現在位置はここなのだろう。

 そこを拡大して、この城全体を見渡せるぐらいにまで広げる。

 あまりに便利すぎて、自分のスペックを疑ってしまう。

 案外万能だな。

 スキル面で言えば、だけど。


『ここで、人のアイコンを押すとだな』


 これまたピコン、と音が鳴って地図状に赤い点が現れ、それぞれ動き回っている。

 いくつかその場に止まって動かないのは、この城の使用人か王か。

 取り敢えずご就寝の方々に違いない。

 人間の区分が付かないから、この点は使いずらいな。

 まあ、ゲームはこれぐらいの機能でないと面白みがない。


『全部潰していくか』


 点の一個ずつを見て回ってみる。

 今の俺は壁をすり抜けることができるから、直線上に移動して時間短縮が可能。

 普通ならいちいち角を右折左折のいらいら作業が待っているからな。

 恵まれてるぜ、この身体。


 そう思っていた時期が私にもありました。


『今やっと20個消化…なのにまだまだあるぞ…』


 マップの点一個見て回るごとにオートで数字が振られるのは良い。

 そこは褒めよう。

 だけどな…やっぱりアイコンの数が多すぎる。

 さっき散って行った騎士12人だったけど、まだまだいるみたいだった。

 それもそうか…城を守らないといけないし。

 …怠いけど、続けるか。

 はぁ、とため息を吐きながらマップの点を追って進んでいく。

 暇つぶしだし、別にいいか。 

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