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穢れた血

「私、実は魔族と人間のハーフなの」



 ――魔物と人間は交わってはいけない――


 敵だから?

 異種族だから?

 神が赦していないから?


 諸説は様々あるが、一番有力なのは、魔族と人間は長らく敵対してきたことだろう。

 幾度と戦を繰り返し、血を流し、いがみ合い、生きてきた。

 結果、遺伝子レベルまでに互いを嫌い、また排除しようと働く。

 それは水と油の様な関係で。

 だから決して相容れない。


 相容れないからこそ、魔族と人とのハーフは忌み嫌われる。


 それも、両者から板挟みで。


 戦いに敗れ、慰み者になった雌からたまに生まれてくる赤子がいる。


 それが人間と魔族の混合種。


 「穢れた血」と呼ばれ、寿命など無いに等しい。


 誰も敵の血が入っている者など助けようなど思わないから。


 だから必然的にそうして生まれた子どもは悲惨な運命を辿ることとなる。


 運良く生き残ろうが、見つかれば凄惨な地獄を味わうことだろう。


 であるから混合種など存在はしない、と言われている。


 幸いにもルナは、魔族の中でも人型に近く、魔族特有の奇抜な部分が無いサキュバス種の血が入っているため、見た目は人となんら変わりはない。

 さらに父はこの人間の国の王。

 サキュバス種と人間の血により、さらに人間に近い姿となった。


 だけどそんな程度の子供騙しなど意味を成さない。

 互いに嫌悪し合っているのだ、雰囲気や態度で分かってしまう。

 魔族だと分からなくても、結果論で言えば仲良くなれるはずなどない。

 少ない年月で得た経験則も、その結果論を裏付けている。


 騙され、(おびや)かされ、嫌悪された。


 何も悪いことなどしていないのに。


 幾度も幾度も幾度も幾度も。


 数えるのも、とうの昔に止めた。


 それから誰も信用しないように過ごしてきた。


 現在進行形で自分は一人ぼっちだ。

 味方など誰もいない。

 みんな上っ面だけの関係。

 業務的な態度、表情、会話。

 まるで世界が自分を異物だとでも言っている様だった。


 それもこれもどれもかれも。

 この呪われた血のせいだ。


 過去の「楽しかった」という思いで全ては、この辛い現実から逃避するための妄言だった。

 正直を言えば、楽しかったことなどない。


 怯えて過ごす日々に。


 心を正常に保つために。


 この現世(うつしよ)を生き抜いていくために。


 自分で自分を騙して。


 悲鳴をあげる心を押さえつけて、過ごす日々の中で思う。

 何を考えて、何を想って父は母と交わったのだろう?と。

 母は訳あってこの国へと幽閉されている。

 その話は後に話すとするが…

 だけれど、やはり分からない。

 父は母と交わってもいいことなど無いのに。


 魔族と交わった人間は迫害され、社会的に生きていけなくなるから…


 それは王族だろうが貴族だろうが関係ない。

 しかし、たまに物好きな金持ちは魔族の奴隷を買い、遊び、犯し、殺す。

 隅々まで利用して、壊す。

 慈悲などある訳もない。

 権力を振りかざし、物を言わせない。

 誰しも暗黙の了解の認識になっている。


 だから私の出生や母の存在は偽造されている。

 おかげで私はこうして生きている。

 呪縛に縛られ、死に怯え、無い力を恨み。


 無力感に苛まれ、自分のちっぽけさに悲しみを覚える。


 だから禁忌に手を伸ばしたのだ。


 ――幻獣。


 従えることで大国の一つは易々と潰せる。

 幻獣の種類によって力量は変わるが、基本的に敵う相手など限られる。

 「目には目を」の原理だ。

 どれほど優秀な魔道師でも、どれほど強固な騎士団だろうと幻獣は一蹴する。


 剣も鋼も意味を成さなく、圧倒的な力で捻じ伏せる、それが幻獣。

 メリットを言えば良い事尽くしのようにも思えるが、「従える」と言っても幻獣の気分次第だ。

 彼らから怒りを買えば、矛先は己へと向けられる。

 その時には、命が幾千万と刈り取られる事態になる。


 過去に幾度とやらかしてしまった歴史があるので、人々は怯え、こうした厳しい規則が設けられた。


 それに、幻獣は人から手を出さない限り、何もしてはこない。

 触らぬ神にたたりなし。


 恐れ、崇め、(たてまつ)る。


 それは魔族も一緒で、例外は無い。

 普通は恐れる代物。

 関わること自体(はばか)れる…

 ここ最近は儀式を行う者さえいなかった程。


 だけどもう私は踏み出してしまった。

 過去へは戻れないし、戻りたくない。

 進むための、前進するための布石。


 そして、私はこの世界を………

 

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